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主人公の現実

シリアス回。閲覧注意


 救いを求めて来た、おニーさんは『ギスト』っていう。


 「こちらです」


 ギストさんに案内される。

 ちなみにオレだけしかいない。

 だってチィルールは、喫茶『漂着者』でマンガ読んでる。


 (あのチビ!)


 でも最初は、チィルールもオレと一緒に行くって言ってたのに・・・

 マスターが・・・


 「お譲ちゃんは、残ってき?」

 「はあ? だってタローが・・・」

 「マンガあるよ?」

 「!」

 「ほら、そこの本棚・・・」

 「おおおぅ・・・」


 なんか、オレ、マンガに負けた。

 で、一人でギストさん家に向かってる。

 が? 不安になってきた。

 郊外? この小さな街のさらに外?

 案内されたお家。

 

 (小屋・・・)


 オレは日本人だ。

 外国人からウサギ小屋に住んでいると言われる日本人だ。

 けど、この家は、そのオレからしても小屋としか言い様のないバラックだ。


 「どうぞ・・・家内を・・・」


 とギストさんに促され中に入った。


 中央に雑巾が積み重なっている。


 (?)


 奥さんドコ? って聞きそうになった、寸前、気付いた。

 それ自身が奥さんだ・・・


 (ありえねえよ? だって・・・)

 

 『妊婦』さんだ。


 (赤ちゃん、産みそうな人がなんでこんなとこ? 病院にいなくちゃダメなんじゃ? それにこんな汚い布で囲まれて・・・おかしい・・・コレ、おかしい・・・)


 「どうか! 診てやってくださいまし!」


 ギストさん・・・オオマジでオレに土下座だわw

 アホか? 聞いてねーよw

 しゃれになってねぇーwwwww


 「はい、まぁ、とりあえず・・・」

 とか、言ってるけど、オレ、しらねーよ?

 で、カッコつけながら奥さんの腹、撫でるの・・・そしたら、もぅ・・・


 (なんだコレ?)


 朝市で経験つんで、だいたいのコツ、分かってたけど・・・

 コレ『もぅダメじゃん』w

 魔力の竜脈、・・・途切れて・・・ってか・・・もぅバラバラじゃんw

 直しようがねーw

 試しにマジックエールの力送ったら奥さんの魔力もろとも弾けて消えたわ、そして奥さん、悶絶うぅw

 オレ、カチカチに凍りついて何もできねーのw

 

 でも「ありがとう・・・」と奥さん。

 「ひぇ?」とオレw


 なにが?ーw

 もう、いっそ誰か殺してw・・・てか、旦那のギストさん、オレを殺してくださいw

 おねがいしまうーw


 「お腹の子だけでもいいんです・・・」

 「へは?・・・」

 「どうにか、お救いくださいませ・・・」


 奥さんの台詞に唯一救われた。

 自分の身よりも、赤ちゃん・・・

 

 (あぁ・・・それで、この・・・)


 オレは奥さんの異常な状態が成り立っている状況を理解した。


 「状況は把握しましたが・・・」とオレ


 「妻を・・・」とギストさん

 

 「赤ちゃんを・・・」と奥さん


 オレは思案。

 言葉を選ぶ。

 でも、ガキのオレに気遣いの台詞の憶えなんてなかった。


 「奇跡はムリです。起こりません・・・」

 「・・・!?」


 二人の絶望が、オレに降りかかる。

 だが言わなくてはならない。

 だって、ソレをしって知らないフリはできない。

 分からないけど、たぶん、みんなのために・・・

 オレ、なに言ってる? 結局オレのためにだ! 責任逃れしたいだけのゲス野郎だ。


 「奥さん・・・」

 「・・・はい」

 「残念ですが・・・あなたはすでに死んでいます」

 「え」

 「だって、あなたの命を司る魔力の竜脈は、すでにボロボロです」


 「なに、言ってる!」ギストさんが怒鳴るのも理解できる。

 

 だが事実だ。

 そして、そのかわりに煌いている子宮には・・・

 

 「そのあなたを、助けているのは、お腹の赤ちゃんです」

 「な・・・」

 「それが、『愛』なのか『生存本能』なのかはわかりません。けど、あなたの魔力供給が途絶えたかわりに、お腹の赤ちゃんが魔力であなたを救おうとしています」

 「・・・」


 反論はなかった。薄々は感じていたことなんだろう。


 「元気な子を産みます。ありがとうございました・・・ふふっ」


 静かな口調で奥さん言った。

 皮肉な感じはまったくなかった。

 ホッとしてるみたいな穏やかな表情。

 最初から分かってたことなんだろなぁ・・・

 オレって・・・さあ・・・なんでココにいるの?・・・

 

 (なんにも出来なかったじゃん! くそ!)


 ------


 『一週間後・・・』

 

 その妻は子を産んだ

 元気な女の子

 その母はその子を抱きしめた後、静かに死んだ・・・


 それをタローは知らない



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