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セイヤの清算 一つの恋の終わり

哀しくも、激しく燃えあった後のセイヤとキラリ


 焚き火の前に寄り添いながら座り込んでいるセイヤとキラリ。

 裸の上から一枚の旅用のシーツを二人で羽織っていた。

 すでに日は落ち、辺りは暗くなっている。

 二人とも焚き火の揺らめく炎を眺めている。


「知っていると思うけど……」

「うん、聞くよ。教えてほしい」


 キラリはコチラの世界にやってきてからのことをセイヤに告げる。


「なまじチートレベルの魔力を持っていたことが災いした。最初は暴力を受けて自分の身を守っただけだった。けど私の能力は相当のモノだったらしい。すぐ噂になった。これが物語ならチート能力を使って回りの連中をひれ伏させる快楽的な漫画になったかもしれない。でも現実は違う。五人のチンピラを倒したら、十人のマフィアを相手にしなけれならなかった。その次は数十人の憲兵。やがては数百、数千の兵隊が私を囲み殺意を向けてきた。この世界にとって私の存在はチートを持った無敵主人公じゃなくて、排除すべきエイリアンかプレデターだった。町から人々の姿が消え一人ぼっちになった私に、軍勢が平和の為だとか正義の旗を掲げて襲い掛かってくる。最初は素手で殴るとかしてた。でもそれじゃ間に合わない。私は兵達が落とした剣や槍を拾って戦った。女子高生が武器の使い方なんて分かるはずもない。でも、兵達が私に仕掛ける様を真似して戦って、数十人くらい倒したころから使い方が分かるようになった。数百人くらい倒したころには、なんのためらいもなく人を槍で貫けるように……」


「いいんだ!」とセイヤが話をさえぎった。


「キラリは、なんも悪くない。全然いいんだ。よく頑張った。おかげで再会することが出来たんだ。ありがとうな、キラリ。今まで無事でありがとう」


 セイヤは彼女を頬ずりする。


「セイヤはやさしいから、そう言ってくれると分かってて話した。ズルイよね」

「いいんだよ。オレは前からキラリが強い子だと知ってるから、だから惚れたんだ」

「セイヤ……」

「そして今もだ。その想いは伝わっただろう? キラリ――」


 先程までの男女のやり取りを思い出させるその台詞に赤らむ頬。


「……ばか。無理やりだったくせに」

「えー? なにかおっしゃいましたー?」

「うるさい」


 シーツから抜け出しセイヤから離れる。


「気温が下がってきた。服を着よう」

「あ、うん」

「セイヤ。私、服着るとこ見られるの恥ずかしいって昔言ったよね?」

「ご、ごめん」


 つい様子をうかがっていたセイヤが怒られた。

 二人、背中合わせで服を着なおした。


「あのさ、これからのことなんだけどさ」

「ああ、食事にしよう。私が獲物を探してくる」

「そうじゃなくて。オレ達の今後の生活についてとかだよ」

「ここでサバイバルを続けるつもりはない。でもセイヤが続けたいなら一人でやってくれ」

「じゃなくて。どうして、はぐらかすんだよ」


 困惑のセイヤ。

 仕方なさそうに答えるキラリ。


「私はこの前、再会したときに、セイヤのことをフったはずだが?」

「今のヤツなんて忘れろ。それにもう後戻りは出来ないだろ?」

「なぜ?」

「なぜって、言わせる気か?」

「ぜひに」


 その態度にちょっとイラついたセイヤ。息を吸い込み……


「オレはっ、さっきっ、キラリにっ、中出しをしーたあああああ!!」と絶叫。


「バカモノーっ! 大声でなにを言っておるか!」(顔真っ赤)

「キラリが言えっていったんじゃん」

「だからって」

「責任はちゃんと取る」と自信満々。


 その様子にクスリと笑みを浮かべ、キラリは答える。


「その心配は百パーセントない」

「百パーセントの確立なんてあるもんか」

「あるんだよ。だって私はもう妊娠してるからね」

「え、もう!?」

「クスクス――ナニを言ってんだよ。前に言ったじゃん。私にはこの世界でいい人がいるって」

「へ? ……あ、あんあー!?」

「言わせたのはセイヤだからね。まったく、君のせいで不貞を働いてしまったじゃないか。もう」


 現実なら高校生のセイヤにとって同級生が妊娠しているなんて想像できるはずもない。その衝撃は計り知れないものがある。まして元恋人とくれば尚更であった。


(やっぱりセイヤはあの頃のままのセイヤ。私と違って子供のままだ。やっぱりもう、違うんだ。そうさ、仕方ない……か。これ以上の甘えなんて……)


 理解しようにも理解が追いつかずに泡を食ってるセイヤを眺めながらキラリはそう感じたのであった。


「食料を調達してくるよ。待ってて――ん? なんだこの感触!? おい、気をつけろセイヤ」


 場を離れ、森へ分け入ろうとした矢先に異変を感じ取り、注意を促したのだが、振り返ってみるとセイヤの姿はどこにもなかったのである。


「セイヤ? どこだ?(気配もまったく感じない。突然消えた、だと? そういえば現れたのも唐突だったな。いったいなにが起こっているんだ)」


 しばし警戒していたものの、その後はなにもない様子。


「そうか……(これで清算か)」


 なにかを察したキラリ。


 そして大声で叫ぶのだ。


「セイヤ! さようならセイヤ! 私の大好きなセイヤ! さようなら、さようならー!」


 星空に向かって放たれたその想い。

 月明かりに照らされた頬を一滴ひとしずくの涙。 

 今、一つの恋が流れ星のように墜ちて、消えた。



次回はリリィーン編を予定しております

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