遊園地に到着
到着した遊園地。
現実のそれとは違って出入りは自由だった。
(遊園地というより、アウトドアのレジャー施設に併設されたアトラクションみたいな感じだな)
この異世界にやってきたセイヤの感想。
実際、大きなアトラクションは五つもない。
湖もあってボートで湖面に漕ぎ出してる人や、遠く向こう岸で釣りをしている人達の姿もちらほら見かける。湖まわりに整備された林道を自転車でサイクリングしている人もいるようだ。
後は露天や移動式屋台など小さな商店があちこち立ち並び、近くの広場などでストリートパフォーマーが芸を披露している。
平日のせいか客の入りはソコソコ。アトラクションへの順番待ちもない。
シャトル馬車数台で到着したホテルの客員数十名が合わさってようやくイベントらしい賑わいをみせる程度。
「いいぞ。これはいいぞ!」
「きゃぁスゴイ。なにするんですか。どうするんですか」
「なんでも出来るに決まっておろう!」
「きゃー!」
興奮気味のチィルールとリリィーン。
「ともかく行ってみるのだ!」
「あー、チィー様、待ってー」
馬鹿みたいにダッシュしてどっかに向かっていったチィルール、それを追いかけるリリィーン。
「あ、お前ら、迷子になる!」
「大丈夫だよ。職員が警備してるし迷子センターもあるし」
「でもなー、あいつら斜め下にスライディングタックルしてくるからなー」
残されたセイヤとトロイ。
「さて、僕らは僕らで楽しむとするかい?」
「え、トロイ?」
「二人きりでまわるのも悪くないかな?」
「それって――(デート?)」
腕を絡みつかせるように寄りかかってくるトロイ。
悪くない提案に思わず口元が緩んでしまうセイヤであった。
「コラー! 貴様らも早くこんかー!」
遠くから二人を呼ぶチィルール。ワガママお姫様。二人が仲良くしているのが気に入らない御様子。
「おやおや、子供達が呼んでいるね」
「うん。オレらも行こうか(なんか昨日からトロイがやたら絡んでくる。しかも帽子とゴーグルも外して素顔だし、別の人みたい)」
悪い気はしないセイヤではあるが。
(どこか既知感。なぜか、あんまり距離を詰めたくない感じ。こっちの世界は男が捕食される側だからかな)
無意識に現実の姉とトロイを重ね合わせ、危機感を感じるセイヤであった。
序章です




