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セイヤ夢の中 懐かしい情景 チィーチャ

前回、セイヤが眠っていたときにみた夢の話になります


 セイヤは夢を見ていた。


 それは、この異世界に来る前の平凡な日常の世界。


(ああ、これは夢だな。でも懐かしい。それに忘れている記憶を思い出せるかも。目を覚まさないようこのままでいよう)


 僕はいつも通りに学校から帰宅する。


「ただいま」


 玄関ドアをくぐり抜けた僕に返事を返す者はいない。

 孤独だから?

 いや違う。

 この家が豪邸だから、大きいから誰にもその言葉が届かなかったのだ。

 だが、それでもである。


「にゃーん!」


 飼い猫のチィーチャだけは鋭く反応を示してくれた。

 僕の姿を発見したチィーチャ、嬉しそうな鳴き声。


「ダメだ! 危ない! 階段から降りておいで」

「ムゥーッ」


 だって、そこは二階の手すり。吹き抜けの玄関ホールの二階手すりから僕に向かってジャンプしそうになったのだ。けれどそんなの危ないに決まっている。注意したら素直にテラスから階段へと迂回してくれた。不満げな鳴き声はしてたけど。


「にゃーっあーん」

「おぅ。よしよし。いいこにしてたか? こんニャろが」

「グルグルグル……」


 くちゃくちゃに撫で回すけど満足そうなチィーチャ。

 捨て猫だったこの茶色いチビ助を拾ってきたのは僕だった。

 茶色くて、ちぃーさいからチィーチャである。


「ちょっと! その『汚いの』放し飼いにしないでって、言ってるでしょ! くそアニキ!」

「放し飼いじゃねー。ちゃんと家猫飼いだ」


 チィーチャを嫌悪している妹が、吹き抜けの二階テラス越しに姿を現し文句を言う。

 ちなみに妹は僕よりも先に学校から家に帰宅したわけではない。

 ずっと家にいる、ただの登校拒否の引篭もりだ。


「その『汚い』ヤツのせいで私は友達を家に呼べない。そんな『汚い』のじゃなくキレイな血統書付きなら友達もいっぱい出来たし、学校にだって行けたはずだ!」

「へー。そうですか。それは失礼しました」


 妹は僕や姉みたいな名門私立じゃなくて普通の公立中学校に通っている(元)。

 落ちたのだ。名門でなくともそこそこの有名な学校ですら、どこにも受からなかったのだ。

 だが家族の誰もそれを責めたりなんてしなかった。そもそも両親も普通校でいいと以前から兄弟みんなに言っていたのだし。

 なのに、妹は自分で自分を追い込んでしまった。

 まったく馬鹿な妹である。


「聖夜くーん、妹に対してそんな態度はどうなのかなー?」

「げっ!?」

「あっらー? その態度はお姉ちゃんに対してもどうかなー?」


 いつのまにか背後の玄関から侵入してきていた姉に後ろから抱き付かれていた。 

 小さな頃は本当にいいお姉ちゃんだったんだけどなー。いつからこんなになったんだろ?

 いつのころからか執拗に絡んでくるのである。

 それは肉体的接触にでもあった。

 お風呂にまで一緒に入ってこようとするのである。

 そんな感じだったから、当然恋人であるキラリとも仲が悪い。


「だって、あいつがチィーチャのことを悪く言うから」

「変態姉弟!」

「あっらー? その態度は、お姉ちゃんに対してどうなのかなー?」

「ヒッ!」


 妹の失言により、ターゲットは僕から妹へと変更。

 部屋に逃げ込んだ妹は、おそらくだがこれから姉と一緒に強制入浴される運命となろう。


「相変わらず賑やかでゴメンな、チィーチャ」

「にゃー」

「でも妹のコトも分かってやってくれな?」

「にゃあー?」

「アイツはお前と自分を重ねてるんだよ。自分は血統書付きじゃないってね」

「……」

「それこそが馬鹿の所以ゆえんなんだけどな。早く気付いてくれればいいけど」

「にゅあー!!」

「なに怒ってんだ? あ、馬鹿ってお前がとか、そういう意味じゃ。やれやれ、ゴメン。悪かった。許してチィーチャん」

「ウフーっ」

「いいこだねー、チィーチャん! かわいいねー、チィーチャん?」

「ムーっ――グルグルグル――」


 不満気だがなんとかカンベンしてくれるチィーチャ。


「ハハ、フア……?」

 

 そしてセイヤは夢から目覚める。

 夢だと分かっていても過去の幸せな一時の情景であった。

 それから自分の膝の上で眠るチィルールに気付くのだ。


「あ? お、起きろ! チィルール、起きろ! またシミを作る気かー!」

「はにゅ?」


 セイヤに起こされ、慌ててトイレに向かうチィルールでした。


 これは前回のお話……


 

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