浴衣の衿どっち
短いです
セイヤとトロイの話しがあらかた終わったころ、部屋のドアがノックされ、無断で入ってくるチィルールとリリィーン。
「遊びに来たぞ」
「私は別に」
二人とも浴衣姿。セイヤとトロイの水色のラインが入ったものと違って紅いラインの入ったデザイン。子供用なのかもしれない。
(二人ともイマイチ似合ってないな。西洋人っぽい外観だからか、いや着付けが逆だ)
そのことに気付いたセイヤ。
そばに寄ってきたチィルールの腰に手を延ばして帯を緩める。
逆になっている衿部分をスイッと入れ替え、帯を締めなおした。
「ほら、リリィーンも衿が逆だ。直してやるからコッチ来い」
「いやああ!」
「?」
「セイヤ、二人のこと、もうちょっとレディとして扱ってやってくれないかい」
困惑しているセイヤに耳打ちするトロイ。
よく見るとチィルールは顔真っ赤になってアワアワと泡食ってるし、リリィーンも変質者でも見るかのように怯え胸元を押さえ隠している。
(あ、ヤベー。手のかかる子供にしか思ってなかったからやっちまった)
幼く見えるがチィルールはセイヤと同い年だし、リリィーンも二三コ下くらいしか離れていないのだ。
「あーなんだ。えーと、浴衣姿、良く似合ってるぞ。カワイイなあーすごーい」
「……しょか。うむ。礼をいふぞ」
露骨なお世辞。
受け取ったチィルールも平静を装いきれずに声が裏返ってるし。
リリィーンは「コッチ見んな」とか言って反対向きで着直してるし。
トロイも気まずいのを嫌ったのか「お茶をいれくるよ」と離れていったし。
ソファに腰掛けた二人の間に言葉を出しかねる微妙な沈黙が続いたのであった。




