リリィーンを差し置いてセイヤの妄想
リリィーンの身の上を聞いたセイヤでしたが
「あれ? もしかしてリリィーンがオレ達に同行してるってのって、まさか――」
「ソレは、あり得るかもね。チィルール姫を護衛した実績でオクエン王に謁見。その際に謝罪と名誉の復権を陳情するとか、かな」
「な、生意気な。何の役にもたってないクセに」
「まあ現実はそんな簡単な話しではないさ。でもあの子を君らに同行させたマフィアはそんな姦計をめぐらせたかもしれないね。ちゃんと彼女の素性を知ってたみたいだし」
「言われてみれば確かに。だってリリィーンにそんな要領なんて分かるはずない」
実際にセイヤは、彼女が自分達に同行するためにマフィアを解雇された際「およよーんっ」て泣きまくっていた姿を知っている。
マフィアのいち構成員でいたがった本人には、そんな大それたことをする考えはないのだろう。
(つくづく不運ってか無能なヤツ)
目の前にぶら下がる一大チャンスを見抜けないリリィーンを哀れむセイヤ。
なぜなら、セイヤ自身が迷子のチィルールをお家(王宮)に無事に帰してあげた恩を理由に王様からソレ相応の報奨を期待しているからである。
(チィルールとはいえ、一国のお姫様だろ? それを追っ手から逃がし無事に王宮に連れ戻したんだ。オレって姫を守りぬいた勇者みたいな資格充分じゃね。それなりの報奨は出るに決まっている。そしてそれをどう運用するかだな)
この地においての生活設計だ。
戻れる確証のない今、いつまでも現世感覚ではいられない。
それに賢いセイヤは、異世界転移された自分の立場に酔って、正義の為にとか世界の平和の為にとかで、仕方なく『ハーレム』を作る気などさらさらなかった。
(どこか無人島を貰えないかなぁ。そこに質素なログハウスを建てて暮らすんだ。上下水道は完備でエアコンもなんとか。そしてキラリを連れ戻すんだ。いい人がいるとか言ってたけど、それってオレのこと忘れてたからだろ? だから、いいんだ。一緒に静かに暮らすんだ。この世界の事情なんて知ったことか。)
セイヤはこの異世界で、やれやれー、世話になったお前らのために一肌脱いでやるか。――あ、しまった、チョイやりすぎちまった。大陸が海になっちまった、メンゴメンゴ。なんてコトをする気は一切なかった。
そんな能力も持ってなかたし!
(あー、でも。なんかチィルールが着いてきそー)
幸せなビジョンを妄想するセイヤを邪魔する存在のチィルール。
(まーアイツは、うん。ダンボール箱用意しとけば中に入って大人しくしてるかな)
そんなモンだったチィルール!?……
この物語のヒロインは
チィルールといいます




