リリィーンも入院 あーあーあーあーあー
今度はこっち
見舞いに来たトロイは、セイヤにケガもなく元気なのを確認すると、今度はリリィーンの様子を見に部屋を出て行ったのだった。
それからしばらくして点滴が終わると、セイヤもチィルールと一緒に見舞いに行くことにした。退屈だったし。
「リリィーン、元気かー? 入るぞ」
案内された病室に入るセイヤ。ドアがなかったので一応声掛け。
「セイヤ? 歩いても大丈夫なのかい?」と付き添っているトロイの声。
「ああ、全然ヘーキ。で? リリィーンは――」
ベットを覗き込むセイヤ……
「うおおおおお!?」
と思わず絶叫。
見開かれたリリィーンの瞳がキラキラと輝いていた。まるで銀河宇宙がそこに閉じ込められているかのような深く神秘的な輝き。
「どうしたー? なんでお前、少女マンガになってんだー」
「ずっと開きっぱなしだったから看護婦さんに目薬さしてもらったんだ」
「うへえ。相変わらず愉快痛快。お前と一緒だと退屈しそうにないぜ」
「ピュンピュンピュー」
「なんだ。まだイジけてんのか。子供じゃないんだろ? いいかげんにしろよ」
「ピュンピュンピュー」
「……。これは治療が必要だな」
「セイヤ?」
リリィーンの荷物の中からマフィアの首領アリスからの預かり物である業物の刀『銀河虎鉄』を取り出すと、それを彼女の目前に突き出して見せた。
「金色蛍のアリスさんとの約束を忘れたのか? 必ず任務を果たし無事に戻ってくるという約束を。その誓いの為に彼女の宝物であるこの刀を預かったんじゃなかったか?」
「ピュンぴゅ……」
「こんなトコで立ち止まってどうする? 進むんだ前へ」
反応はあった。
セイヤはその刀をゆっくりと抜いた。
銀河虎鉄の刀身は半分くらいの長さしかなかった。リリィーンがうっかりへし折ったのだ。マフィアの首領の宝物をである。たとえ本人が無事に帰ったとしても、こうなので、結局どうなるかはわからない。
「もう後戻りは出来ないんだ。リリィーン……」
「ぴゅひゅううううううう!!」
「そうだろ? な?」
「……。ああ」
明らかに今までと反応の変わったリリィーン。
「リリィーン。正気に戻ったかい。よかった」
「無事でなによりだな」
「オレに掛かればリリィーンなんてこんなもんよ」
安堵する仲間。
「ああ……」
「リリィーン?」
「あああ……」
「どうした?」
様子がおかしい。
「あーあーあーあーあー!! ジャン!」
「へ?」
「あーあーあーあーあー!! ジャン!」
「リリィーン?」
「あーあーあーあーあー!! ジャン!」
「ん? いつもとちょっと違うかな?」
なんか歌を歌う前にやる発声練習みたいなのが勝手に始まった。ピアノのパート部分も「ジャン!」って自分で言ってるし。
「あーあーあーあーあー!! ジャン!」
「リリィーン!? しっかりするんだ」
「セイヤ? 悪化したではないか!」
「あれぇ。おっかしーな。いつもならコレで直るんだけどな」
「どうするんだ君、コレ?」
「セイヤ――」
慌てる二人に対して、冷静なセイヤ。
「んー。まあ、なんとか……奇跡を起こすしかないかな」
「マジックエールを使うのかい? この状況をどうにかできると」
「いえ。起こすのはオレじゃないし」
「じゃあ誰が?」
「ギグくん、ですよ。どうにか愛の奇跡を起こしてもらいましょう」
シリアスなマジ顔のセイヤ。
呆れ顔のチィルールとトロイの二人。
意外に長くなったので分割です
続きは明日




