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風雲急な感じ


 昼食後、再出発。

 セイヤ達を乗せたクルーザーは大海原を駆けていく。


「見ろセイヤ! 魚が飛んでいるぞ」


 興奮気味なチィルール。


「へー! イルカ、か」


 セイヤも並走しているイルカに歓心した。

 たまにジャンプする姿は美しくて見事なものだった。


「捕まえよう。網をもてい」

「捕まえません!」

「なぜか?」

「あのなあ」


 チィルールの発想はたまにワンパク坊主なところがある。


「殿下、捕まえても持って帰れませんよ」


 トロイのフォロー。

 しぶしぶながら諦めるチィルール。

 そして彼らの脇で死んだ魚の目をしたリリィーン。


「私はお魚――私はお魚――私はお魚――空を飛びますピュンピュンピューン――」


 なんかぶつぶつ呟いている。

 鈍感ボケナスのリリィーンとて、命綱リード一本で海上を猛スピードのクルーザーに引きずりまわされたらさすがにちょっとトラウマになった様子。


 でも空も海も青くて綺麗だった。

 人力で動く船でエンジンのギイさん。疲れたのか午前よりペースダウン。おかげで快適なクルージングを一行は楽しめていた。

 だが……


「私はお魚――私はお魚――空を飛びますピュンピュンピューン――ピュンピュンピューン……」


 その呪詛めいた言葉が不運を呼び込んだのかもしれない。

 進路上彼方に灰色の煙がたちこめていた。


「あ、嵐だ! 嵐、発見!」屋根の上にいたギコくんが叫んだ。 


「進路変更します。面舵いっぱーい――えっ、お父さん!?」


 舵を握っていたギグくんに異変。

 船は進路を維持して嵐に向かって真っ直ぐに突き進む。


「ギグくん、どうかした? 故障?」

「いえ、お父さんが舵のコントロールを奪ったんです。一人でも動かせるよう舵は前にもあるんです。それなのにお父さんは――アイハブコントロール!」


 だがギイさんは無視。


「お兄ちゃん、お父さんダメみたい」


 屋根から下りてきたギコくん。


「ダメってなにが?」とセイヤ。

「お父さん、たまに領域ゾーンに入るから」

「ゾ、ゾーン?」


 怪訝な顔でまわりを見回すセイヤ。異世界人の自分がしらない設定かと思ったが情報屋をやっているトロイですら困惑して首を横にふった。


「見えない世界が見えてくるんだって」

「それってヤバくない……」


「ヤバイなんてもんじゃありません。みなさんも覚悟しておいてください」

「え、どうなるのコレ」

「嵐につっこんで遭難するかもしれません」

「なんでだー!?」

「お父さん、前回嵐で遭難して以来、たまに次こそは勝つとか言ってました。なに言ってるんだろうと思ってましたが、いまその理由が分かりました」

「なぜかーっ!」


「セイヤが『なぜか』って言ったー!」

「チィルール!?」


 ケタケタと笑うチィルール。

 でもコレ、笑い事ではないのだ。

 その時すでに、船は暴風雨圏内に入っていたのだから。



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