出航準備 やっぱリードいるよね
ギグくんとギコくんが加わって仕切りなおしの出発となった。
ここに来た時に使ったマンモス車に乗り込み、行き着いた先は港。とは言っても港湾や漁港ではなくヨット、クルザーが集まるヨットハーバーである。
「このクルーザー『ヤイタニック二世』号で海路を行きます。これなら敵に待ち伏せされる心配もないわけです」
「スゲー(でもヤイタニックって……)」
「カッコいいではないか」
「スピードも出そうだね」
「すてきー。さすがギグくんのお家」
感心する一同。(一人妙なヨイショのリリィーンは除く)
政治家のギイさん。どうやらお金持ちのようだ。
「ヤイタニック一号は嵐で沈んちゃった」
「へえ」
ギコくんに相槌するセイヤ。
「それで無人島で一年くらい生きた」
「嵐で沈んだのって、乗ってたときぃ!?」
まだ子供で舌足らずなところもあるギコくんの説明は突拍子もないことがいきなり出てくる。
「サバイバルはなかなか大変でしたが、貴重な体験ができました。わーはははは」
高笑いしているギイさん。笑い事ではない。
「それでは乗り込みましょう。ギグが来てくれて助かった。出航準備を手伝ってくれ」
「はい。お父さん」
「お父さんではない。海の上ではキャプテンと呼べ」
「ハイハイ。キャプテン閣下」
「まったく。ついこの前までは敬礼までしてノリノリだったくせに」
「そんな昔のこと知りません!」
「わかりましたから、早く準備しましょうよ。オレも手伝います」
きりがなさそうなのでセイヤが二人を促した。
そしてクルーザーに乗り込んでみるが、初めて乗ったのである。手伝うと言ったセイヤも要領を得ずに、結局他のみんなと一緒にギイ親子の動きを見守る。
「あ、そうだ。今のうちにオレに出きることやっとくか」
そう言ってセイヤはロープを取り出した。
「ほらチィルール――」
促されたチィルール、セイヤの前で大人しくバンザイのポーズ。
素直にタスキがけでロープをくくり付けられる。
海に落ちた時用の命綱だ。
「リードいっちょあがり。じゃあ次、リリィーン? おーい!」
リリィーンは舵を握ってるギグくんに寄り添っている。
「ギグくん、カッコいいー。お船の操縦ができるなんてスゴーイ」
「おーい、リリィーン。お前もホラ、リード」
「ハア? 私達の邪魔しないでくれる!?」
「邪魔なんてしないから、ホラ、リード」
「そんなの付けないし!」
「あのなあ。ちょっと真面目な話をしないか?」
「なによ? フフーン」
ちゃんと正面のセイヤへと向かい合う。
「いいか? お前はリリィーンなんだぞ?」
「はあ?」
「いつになったら自分で自分がリリィーンだと気付くんだ」
「?……」
「たとえリリィーンに生まれたとしても、リリィーン用に生きていけばちゃんと寿命は全うできる! リリィーンだとしても大丈夫なんだぞ? だから頑張れ! あきらめるな!」
「……(パクパク)」
「だから、ホラ、リード!」
「……」
真面目な顔をしたセイヤにリリィーン扱いされたリリィーン。抗議の言葉も思いつかず、尖らせた口をパクパクさせるのみであった。




