表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/303

ロリビッチ

おもらしロリビッチヒロインってありですよね


 喫茶「漂着者」を出たオレたちは、マスターに渡された地図どおりに歩みを進めていた。

 だが?


「タロー! みろ! ほら、みろ!」


 興奮有頂天のチィルール。

 

「うん」としか答えようがない。


 オレたちは宿屋を目指している。

 マスターに貰った地図どおりにである。

 けれど、このルートは……

 

「ふふふ」

「ハァーィん」

「チュ!」


 ホストくさい軟弱な男達がチィルールに、やたら色目を使ってくる。


「モテモテだ! 凄いぞコレは!」

「うん」


 なんというか、女性が男のルーズな貞操感に不満をもつ気持ちが分かるというか。

 黙って座ってれば人形のような愛らしいチィルールなのだが今こうして、デレデレ・ニヤニヤ・ゲヘゲヘしてる下品な表情といったら――無様で幻滅。


「なんだ? 不満か?」

「ああっ!? あ、うん、まぁね」

「ヤキモチか? 貴様、カワユイよのぉ」


(はあああああああ!?) オレは想像の中で十回くらいチィルールを拷問した。


「お、おぅ・・・」


 でもなにも答えれない。

 でも、ここ、あれだろ?


『歓楽街』

 

 まだ夕方前なのに、やたら色っぽい兄さん姉さんがそこら中にタムロしている。


(ここはチィルールの教育上よろしくない)


 だが他にあてはない。

 そのまま進むと、目当ての宿に着きはしたが……


「ほほぅ、チンケな城じゃな」


 うん、チィルールのいうとおりだわ。

 だが、これはヤバイ。


「ダメだ。いくぞ」

「は? あの中見てみたいぞ?」

「チィルールには、まだ早い」

「なにを言っておるのだ?」


 チィルールの手を引っ張って、その場を離れる。


(マスターのやろう、さんざん脅しといてコレかよ)


 その後オレ達は歓楽街を離れ、道行く親切な人に教えを請い、何とか宿屋へ到着した。

 

「お二方さまですね」

「はい」


 フロントで手続き。


「ご家族でいらっしゃいますか?」

「そうです。兄妹です。異母兄弟です」

 

 二階だての、いかにも宿屋って感じのトコなのに結構うるさそう。

 だからオレは、しれっと嘘ついた。


「ではこちらにお名前をご記入ください」

「はい」


 意外。すんなり、とおった。形式てきに体裁をとっただけなのかもしれない。


「ダブルとツインはどちらでご用意いたしますか?」

「え? (なんだっけソレ)」

「……」

「ダブルで」

「かしこまりました」


 二人だからダブルだよね。でもツインも二つって意味じゃ?

 なんだかよくわからない。

 が、それよりひとつ気になるのが、成り行きを見守っていたチィルールの瞳がキラーンって妖しい光を放ったことだ。まるで獲物を狩る肉食動物みたいな目をしてた。

 なんか『ほほぅ』とか言ってたみたいだし。なんだコイツ?


「うおっ、いいじゃん」


 案内された部屋は結構広かった。

 寝室とリビング、あとリビングには簡素な水場もある。

 予想外にも浴室もありシャワーが備え付けられていた。

 

「文明はやっぱ偉大なり。ははは」


 久々にサバイバル野宿からの脱出である。

 ただ一つ気になったのはベットがひとつしかない。


(ダブルって言ったんだが、まぁ外国じゃこんなもんだわな)


 でも、チィルールとはずっと寝食をともにしてきた仲だし、あの娘も気にはしないだろうと思った。


 その後、腹が減ったのでルームサービスで夕食をとった。

 鳥の丸焼きが二つ届いた。

 コッチの料理はだいたい素材をそのまま、焼くか煮るか炒めるか茹でるかしか、しない。

 でもそれはそれで素材の味が直接伝わってきて美味だった。

 ジビエって養殖ものより味も香りも濃いから調味料塩しかいらないわ。

 ただ当たりハズレが極端だけど。

 でも、ここのは満足。全体くまなく食えるトコ全部、骨以外食った。


 そして、メシの後は風呂だ。

 シャワーの使い方をチィルールに教えてもらう。


「一緒に入ってやろうか?」とかニヤケながら言うので

「お前と違って、オレの裸は十八歳未満禁止なの!」って答えたら困惑してた。 

 

 それで、風呂の後は寝る。

 ベット一つだけど、まぁ今までも一緒に隣あわせで寝てたしな。


「おやすみぃ」オレは先にベットに入る。


 でもチィルールのヤツ、ベットの傍に立ったまま入ってこない。


(ん? 気になるなら、オレ、リビングのソファーでもいいけど)


 と思っていたのだが、ゆっくりとオレが寝てる方からベットに入ってきた。


(バカ、反対から入れよ。お前はアッチ側だ)


 掛けたシーツを直すのがわずらわしい。

 

「タロー」

「んぁ?」


 なんかチィルール、オレに覆いかぶさってる。


「貴様の想い、私には分かっておる。なにも言う必要はない」

「んん? (いや、いろいろツッコミまくりたいなコレ)」

「心配はない。私に任せろ。痛いのは最初だけだ」

「へー (痛いのはテメーのほうだろが!)」


 なんなんだコレ・・・

 オレ犯される寸前なのか?

 悲鳴あげればいいのか?

 

「ふざけんなっ」


 オレはチィルールをはねのけた。

 やっぱ、力はコッチが上だ。


「なにをするか?」

「ソレこっちの台詞」

「なああぁぁ」

「ん?」


 なんかショックを受けてるチィルール。

 

「貴様の誘いを受け、勇気を出してきたのにぃ」

「はぁ?」


 なんのことか分からない。

 でもチィルールは戦法を変えた。

 オレの眼前でそのちっちゃなオッパイをピコピコ揺らし始めた。


「どうだ? 興奮するか? そうだろう男といううものは……ふふふ」

「……」

 

(そうだなぁ……思えばこのイボみたいなオッパイ、邪魔だったんだよなぁ)


 冒険(遭難)のさなか、オレはチィルールを抱えて逃げ惑うことが何度もあった。

 その度にこのイボみたいなのが、抱えるたんびに『グニョ・ブにゅ』とツブレテ痛々しかった。

 だからもうコレ『ツマんで、引きちぎったろうか?』『イボ○ロリ塗って、モいだろか?』と何度思ったことか。

 あると思えばなく、ないと思えばある、中途半端なオッパイ。

 オレにとってはイボ以外のなんでもない。


「ふむ。やはり、貴様はコッチか?」

「……」

 

 反応のないオレに新戦法。

 お尻を向けフリフリし始める。


(あー、うん。でも、なんでオレにはコッチなんだ?)


 確かにチィルールのお尻はコ尻で可愛らしい。

 赤ちゃんみたいな真ん丸ヒップというか、ネコの後頭部というか、ナデナデしたくなる感じのお尻だった。


(あ、そういえば、さっき――)


 思い出した、さっき風呂から出たら、ソファーでチィルール寝こけてた。

 声をかけながら、お尻、ポンポンしたけど、その時チィルールの口元がニヤリと歪んだような覚えがある。


(あれでか?)


「いいから、男は女のいうことをきけ!」

「ぬお?」


 業を煮やしたチィルールが再び力任せにオレを押し倒した。


「いいから、気をつけのポーズしてろ」

「アホか」

「暇なら天井のシミ数えてろ」

「どこでそんな下品な台詞覚えた?」

「ん? ルルーチィの漫画」


 ルルーチが誰だかは知らんが余計なことを……


 ベットの上で「クンずほずれずうんやかんやもみくちゃ」状態


 でも結局、力の強いほうが勝つ。

 オレはチィルールをシーツで簀巻きにしてやった。


「ふんっ、修行が足りんな」

「な、なぜだぁ? 私はお前のために勇気を振り絞って――」


 芋虫状態のチィルールがモゾモゾしながら抗議した。


「チィルール、あのなぁ、それは勇気じゃないよ?」

「へ?」

 

 オレは芋虫チィルールにやさしく語る。


「勇気ってエッチなことだっけ?」

「え……」

「無理やりイヤラシイことするのに勇気必要なの?」

「……」

「それはただの欲情で勇気じゃないよ? だよね?」

「だってタローが……」

「うん、誤解される言動があったかもしれない。でも、相手の気持ちは違ったよね」

「……」

「間違ったときに、ちゃんとお話できたら、こんなことにならなかったよ?」

「――じゃあ、タローは私のこと嫌いだったの?」

 

 困った。

 愛しているのは間違いない。

 だがそれは恋愛じゃない。

 じゃあ、それはなにかと聞かれれば、オレ自身分からなかった。

 嫌いなわけないが安易に好きだと言える状況ではない。


「嫌いなわけないよ」

「じゃあ――」

「チィルール、君はこれからもっと多くの恋愛をしなくちゃならない。そしたら、やがて気付くと思うよ。オレが今君に感じている感情を」

「そんなのズルい」

「ごめん。でも、これ以上説明できない。だってオレ自身、まだ子供だからね」


 ホントにズルイなぁと思う。

 いつからオレはこんな大人になったんだろう。

 でもチィルールのためだったらいくらでも汚れていい。

 よくわからないが、現時点その想いは事実だ。

 オレはチィルールの頭をナデナデした。

 

「おわ?」


 オレの手から光の泡があふれる。

 チィルールの頭上でプチプチちいさな音を弾かせて消える魔法。

 

(強制魔力過給加圧? なんで?)


 この状態でチィルールに魔力供給って自滅行為だ。

 だが、充てられたチィルール、ゆっくりとオヤスミナサイ状態。

 静かな寝息をたたてる。


「こんなこともできるんだ」


 オレはこの強制魔力過給加圧という能力にあらためて感動し、同時に恐怖した。


(この能力ってナニをドコまでできるんだ?)


 気付いた。

 この能力って、この世界最強の女戦士をも自由にできる可能性があることを。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ