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いー日旅立ち

ネーたん家に戻ってきた放蕩浮気亭主

その時、ネーたんは――

ボディブロー炸裂

途方に暮れるルルーチィ


「待ってくれ! カーちゃん、俺だって――ブブっ」

「うっせー!!」


 浮気した旦那に情け容赦なくビンタを叩き込むネーたん。


「だから、ハブ、俺も、ヘブっ」

「私はともかく、ガキどもがっ、どんだけ不安な日々を過ごしてきたと思ってやがんだ!」

「ごめ、ブッ、だから、へブっ」

「ど、どんだけ、どんだけ不安な日々、だったか、お前に……」

「か、カーちゃん――え? ネフリリス?」


 ビンタの勢いが収まる。

 ネーたんの頬を伝わる滝のような涙。

 パパの胸ぐらを掴みあげる。


「お、お前にィ、分かるかァ?」

「ゴメン! 俺が悪かった。お前、いや子供達を不安にさせた。俺のせいだ。ゴメン!!」

「クッ! ちくしょぉう!」


 パパを開放し、涙を拭うネーたん。


(なんだこの修羅場)


 先ほどから途方にくれているルルーチィ。


(私って完全に部外者だし、もう帰りたい――)


 泣きの入る昼ドラみたいなのをリアルに見せられても困る。


「ただ、俺だって」

「アアッ?」

「まってくれ、見てくれ、コレを」

「な、お前、それ」


 パパは金貨の詰まった小袋を差し出してみせた。

 数千万円くらいの額はありそうだ。


「俺はお前らを見捨てたわけじゃねえ。俺だってこの現状をどうにかしたいって思ってたんだ」

「あ、アンタ……」

「けどお前らには寂しい思いをさせちまったな。すまない」

「アンターっ!!」


 パパに抱きつくネーたん。

 

「パパーぁ」

「パパッ」

「パパー」

「わーい」


 チビッコ達もネーたんに習って次々とパパにしがみ付いた。


「っはは。みんな待たせちまったな」

「でもアンタ、こんな大金どうやって?」

「あー、バカなウサギ女がいやがってよー。騙くらかして全財産奪ってやったわーw」


 呑気な物言い。

 だが、空気を読んでフナムシがごとく一斉に部屋隅に引き下がるチビッコ達。

 フルフルと震えているネーたん。


(ダメだこの亭主。完全にダメ親父だな)


 ルルーチィも目線を避けるしかなかった。


「あ、アンタ……」

「ん?」

「アンタっていう人は、な、なんて――素敵なのー! イカスわ! 最高よーっ!!」

「だッはっ、だろう? あはっはははは」

「パーパぁー」

「パパカッコいいー」

「パパ大スキー」

「はーははははは」


 逃げていたチビッコ達、げんきんにも再びパパに群がった。


(いいんかよ?)呆れるルルーチィ。


「この金でバカンス行こうぜ?」

「きゃああ。素敵!」

「海がいいか山がいいか?」

「温泉がいい。温泉でご馳走!」

「おー! 流行のヤツだな。よっしゃ、なんでもコーイ」

「キャアアア! うれしーィ!」


 年甲斐もなく旦那にしがみ付き、はしゃいでいるネーたん。


(これで――いいん――だろうなあ……)


 弱者強食の最底辺世界で生きている彼らにとっては、それこそが真実の光なのかもしれない。

 ルルーチィにとっては自分の世界がまだまだ小さいことを思い知った出来事であった。

 

 

 

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