ネーたんの家庭事情
「あのさ、ネーたん――」
「黙って付いてこいや」
メイド喫茶の業務終了後、ネーたんに連れ出されたルルーチィ。
星空瞬く暗闇の中をテクテクと歩かされ続ける。
「仲間がいるのかもだけど、私、結構強いよ?」
特殊な環境で育ったルルーチィ。幼い頃から戦闘訓練を受けていた。
「あ? なに言ってやがる」
「生意気な後輩をシメるパターンでしょ?」
「ちげーよ。あたしがそんなガキみたいなことすっか。バーカ」
という台詞だが、小学生みたいなロリキャラのネーたんに言われてもな、のであった。
「じゃあ?」
「こっちだ」
「え? ここ」
「とっとと入れ」
町外れの道。その真ん中にある下水道へのマンホール。
その中にネーたんは手馴れた様子で侵入していった。
「……(このマンホール、けっこう使い込まれている、ということは?)」
「おい、ちゃんと、閉めとけよ」
「う、うん(ネーたんがネズミっ娘だからって、まさか本当に?)」
下水道を進む二人。
本来なら真っ暗のはずだが、なぜか非常灯が点いていて歩けなくはない。
「ここだ」
「ココって下水管理室? 緊急避難所?」
水圧に耐えられそうな頑丈な鋼鉄の扉とハンドル式のロック。下水が溢れてもしばらくは退避できそうな場所。なんの為にあるかは詳しく解らない。でも中に空間があるのは間違いない。
ネーたんがハンドルロックを回して扉を解錠した。扉を開け中に入る。
「おう! 帰ったぞ! チビ助どもっ」
「わー!! おかえりー!」
「おかえりー!」
「おみやげはー?」
「おみやげー」
中からチビッコ達の盛大なお出迎え。十人まではいなさそうだが、それでもの数である。
みんな大喜びでネーたんにしがみ付いたり、身体をよじ登ったりしてる。
「おみやげなんてそうそうあるかっ! ほら、オメーも入れや」
「え、はい、失礼します」
虚を付かれた。しおらしく従うルルーチィ。
「知らない人だー!」
「フシンシャだー!」
「ヘンチツシャだー!」
「ガーカンマだー!」
「コーゲキじゅんびー!」
一斉に沸き立つ子供達。
「あははは。こいつは客だ。大丈夫だ」
ネーたんのフォロー。
「オカク様――」
「おかくサまだ」
「おももてしだ」
「わー! おもてしもーだ!」
さらに賑やかになる。
でもみんな右往左往してるばかりでナニもことが進んでいない。
あわてて走り回っているだけだった。
「何にもないとこで、何にもできねーが。ま、ちっとばかし話しを、しようぜ?」
生々しい現実を見せられ、ネーたんの台詞には黙って肯くしかなかった。




