メイド喫茶「臥薪嘗胆」ネーたんとの確執
ちょっと前に戻ります
ルルーチィがメイド喫茶『臥薪嘗胆』にやってきてお世話になってしばらくの頃の話。
そこのメイドさんの一人、ネーたん。
彼女の個性、それは幼女系のロリキャラネズミっ娘である。
その十八番の指名技は――
「ネーたん、オイシイのだーいスキーぃ」
「いいよ、ボクのもあげるからコッチおいでー」
「はぁーい。うーん、おいしいー」
「ネーたん、こっちもおいでー」
「はーいっ」
それはお客様の食事をおすそ分けしてもらう能力であった。
お客に指名されるのがメイドランキングのポイントになるシステムのうえで、注文を取り終わったお客にも上乗せで指名されたり、他のメイドが注文を受け終わった客にでも再指名されるこのとのできるこの作戦は、かなりの名案であった。
可愛がられキャラである自分の魅力を最大限に発揮した技だ。
ただし、相応のリスクはあった。
「うげっおぅっおええー(まだだ。まだイケル。大丈夫だ)」
従業員用トイレ。
その中。
便器に顔を乗せ、胃のモノを吐き出すネーたんの後姿。
その小さな身体には与えられるがままのカロリーは全部取り込めない。
「お、おお、おぅええェェ(食うのがツライなんて贅沢言ってられっか! ダメ親父に代わってあたしの稼ぎでチビ達を食わせてやんなきゃいけねーし! よっしゃ! 今日も、もっかい吐くまでイクぜ)」
そんなつらそうなネーたんの姿を見てしまった人物。
それがルルーチィであった。
「ネーたん?」
「ん? なんだ新入り」
「無理はやめようよ?」
「ほっとけや。コッチはお前らみたいに趣味でやってんじゃねーんだぞ」
「しゅ、趣味じゃないよ!」
「知るか! 邪魔すんな! いいな?」
「ネーたん……」
ホールに戻っていくネーたんの後ろ姿をルルーチィは――
「うっわーぁ! プリンアラモードだあ、すっごーい! いいなー!」
さっそく甘えんぼモードでオネダリを開始するネーたん。
「いいなっ、いいーなぁ――」
「あ、うん」
「?」
「また今度ね?」
まさかのオネダリ失敗である。
そして次の標的に移動するのだが――
「今日はやめておこうね」
「ウーっ、ケチンボー、もー」
「はは、ゴメンね」
「知らないモーン(なんだ? どうしてだ? 今までこんなこと一度も!?)」
結局、その日は最後まで指名されることはなかった。
(なにだ? 原因はあるはずだ。でないと、こんな急に……)
終業時間。
更衣室で困惑しながら衣装を着替えるネーたん。
「ん? あ!!」
原因判明。
衣装の背中に張り紙がくっ付いていた。
書かれている内容。
『エサを与えないでください
吐くまで食べ続けます
大事に守ってあげてください』
「な! なんで、こんな? まさか、あの瞬間か!」
思い当たるのはトイレの時。
「あの新入りぃぃぃ! ルルなんとかのヤツの仕業か! ゆ、ゆるさねー!!」
ネーたんとルルーチィの確執の始まった瞬間であった。
次回はちょっと進みます




