メイド喫茶「臥薪嘗胆」勝負!
ルルーチィの合理化計画でリストラされる料理人キューアさんとの対決が始まります。
「キューアさん?」
ルルーチィが、旅支度をした自転車に跨っているキューアに声をかける。
「ちっ」
舌打ちしが返事。そしてシケモクを地面に、その火を足で踏み消す。
「逃げるんですか?」
「あアっ!?」
激昂しガシャンと自転車を倒し、ルルーチィに詰め寄る。
オオカミ系の獣人で背も高いキューア。
頭一つは小さいルルーチィの胸倉を掴んで引き寄せる。このまま持ち上げるのも造作なさそう。
そして顔半分が隠れるほどのフサフサの髪の隙間から鋭い眼光で睨みつけてくる。
「テメー、オレが潔く引いてやるってのに」
「なんで勝負しないんですか?」
「はは。随分とナメられたもんだ。お譲ちゃんを相手にする気はなかったが、二、三日ホールにでれないように――くふっ?」
ルルーチィの拳がキューアの水月を正確に打ち据えた。
そしてヨロけたタイミングに合わせ掴まれていた腕を外す。
だがキューアは少し砕けた膝をそのまま支え直して反撃のボディーブローを叩き込んできた。
(攻撃されて即反撃。しかも膝のタメが入ったいいブローだ。ケンカなれしてるなこの人)
などと感心しつつ、そのブローパンチの防御、反射的に構えた肘を意図的に外して、あえて攻撃を受けた。
「っの!」
「っく!」
腹にめり込んできた腕を掴む。
両手とも掴んで動きを封じた。
足で攻撃が来るやもしれないので、相手の重心は絶えず揺らす。そうすれば片足を上げることはできない。のだが、動きはそのまま止まった。
「テメーっは! なんのマネだ?」
「勝負ってのはケンカのことじゃないです」
「ああ?」
「取りあえず、私がビビッてるわけでもなければ、餞別代りに殴られにきたわけでもないことはわかりましたか?」
「なんなんだ。くそっ、ナニがしてーんだ?」
ルルーチィから離れ、腕を振り払う。
「勝負ですよ」
「だから、なんのだ」
「仕事で勝負に決まってるじゃないですか」
「仕事? 料理人の私にか?」
「ええ。それとも自信ないですか?」
「はっ、上等だ。受けてやる」
「今日はもう遅いので勝負は明日ということで」
「よし」
「逃げないでくださいよ」
「はんっ! 言いやがる。テメーこそだ。プロの腕前に素人のインチキ料理が通用するか」
「でも判定は『お客様』にしていただくんですよ? ではまた明日」
闇夜の中、一人残ったキューア。
(客だからなんだってんだ。あんなインチキオムライスに……けど、苦情はきていない。それよりか、待たされることがなくなったとか、好評だとかって話が……いや、大丈夫だ。絶対……)
倒れた自転車を引き起こす。
(じゃあアイツ、なんであんなに自信満々だったんだ……)
次回決着
意外な方向へと




