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メイド喫茶「臥薪嘗胆」

流れ的にルルーチィ編にいきます。


「もえもえキュンキュン おいしくなーれ」


 呪文を唱えながらオムライスにケチャップで文字を書くメイド姿のルルーチィ。


『うんこ』


 メイドさんにそんな下ネタを書かせて友達とはしゃぎあうのが、このメイド喫茶「臥薪嘗胆」の客層。


(お前ら合法的に死ね。寿命今すぐにこい。クソが――)


 獣人との混血であるハーフビーゆえ、自前のネコ耳をもったルルーチィは接客笑顔をつくりながら内心では物騒なことを考えつつ仕事をこなしていた。

 

(こんな仕事早くやめたい)


 このメイド喫茶の仕事は彼女の本職ではなかった。旅の途中で路銀をなくしてしまい、短期で稼げる仕事として、このバイトをしぶしぶながら始めたのである。ゆえに路銀が貯まりしだいすぐやめて、本来の目的であるチィルール姫殿下との合流および護衛、その任務に戻らなくてはならない。初めは二、三週間くらい続ければいいと思っていたこのバイトも二ヶ月近くになろうとしていた。

 そんなに稼ぎが悪いのか、いや逆であった。最初の週でいきなり人気メイドのベストスリーに選ばれたルルーチィの歩合ボーナスを足したバイト代は、本職の一ヶ月分の給料を三日で稼ぎだしてしまった。

 本来ならその時点でやめてもよかったのだが、あまりの人気ゆえに店長や常連のお客さまから今しばらくの留意を懇願されたのであった。そして期を逃しズルズルと今の状況。


(私はいったい何の為にこの世に生を受けてきたんだろう? 我思う、オムライスにケチャップでウンコとかシッコとか毎日毎日書かされるこの仕打ちは何なのかと――)


 真面目なルルーチィはそれでも頑張って接客をしていた。

 だがしかし実は、大人しくて清純そうな彼女が恥辱に耐えつつ仕事をこなしている様が、常連のマニア層に絶大な支持を受けていることを本人は知らない。


「ではご主人様方、御用がございましたら、またルルーチィめに申しつけくださいまし」

「ああ。またね」

「ルーちゃん。萌えー」

「えへ(お前が燃えろ。消毒されろや?)」


「……」そんなやり取りを眺める不穏な視線。


 ケチャップを抱えて厨房に戻ろうとするルルーチィ。

 不穏な視線の主はその動きに合わせ、行く手に自らの足をさり気なく突き出し、彼女を転ばせようとした。それはたまたまの偶然ではない。なぜならその人物の口元がイビツにニヤけていたからだ。


「パシ」と交差する足。

「きゃああ」と悲鳴をあげ転倒する。

「大丈夫?」とワザとらしい口調で転倒させた彼女を心配する素振り。

「くっ」

「なにもないトコで転ぶなんてネーちゃんってホント、ドジっこさんなんだから、もう」

「てへ。やっちゃたー。ネーたんってばホント、ドジっこー。えへへ(チッ!)」


 転んだのはルルーチィではない。足を引っ掛けようとしたネズミっ娘のネーたんのほうだった。

 戦闘の過酷な訓練を受けているルルーチィには素人の動きなど全て御見通しである。引っ掛けられそうになった足で逆にうっちゃりで引っ掛け返すなど造作もないコトであった。


「ネーちゃん、起きれる? 手を貸そうか?(んンーっ?)」

「ヘーキだよ。アリガトね、ルーちゃん(コ、コイツ!)」

「そっか。偉いねー(こんな小細工が私に通用するかよバーカ)」

「そだよー。ネーたん、偉いモン(いつかブッ殺す!!)」


 そんな乙女達の本性を見抜けない客のバカな男ども。

 表面上はその微笑ましいやり取りに、ニヤニヤしながら「ルーちゃん」「ネーたん」と声援コールする。


「みんな、ありがとう(男ってドンだけ清純だんだ? アホか?)」

「心配かけてゴメンちゅう。ネーたん、ダイジョブちゅう(まあコレはコレでヨシとするか。でもルルくそは許さねー!)」


 

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