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そういうふーにできている

新たな旅へと出発だー


 出発の日。

 セイヤとチィルール、リリィーンにトロイの一行は海路にてオクエン国に向かう。

 マンエン国からの刺客を警戒し、センエン大陸南側を北上する遠回りの海路を選んだ。大陸を迂回する大回りのルートは敵の勢力圏外のうえに裏をかくにはもってこいのはずだ。

 それに遠回りといってもセンエン大陸は三日月の下側がえぐれたような形をしている為、北側と南側のロスは半日程度の話で済むとのことだった。

 この街は北西先端に位置し、海を隔てた北にあるマンエン国に近い。その為マンエンとの交易に使われていた。そしてセイヤ達が向かう北東の街ワクナはマンエンの東に位置するオクエンに近いというわけだ。

 もっとも今回は敵の待ち伏せを警戒し、そこから直接オクエンへは向かわずオクエンの更に東に位置するチョウエンを目指すことになっていた。

 二重の用心である。

 これで追っ手の不安は大分なくて済む。いつ襲われるかもしれないストレスを抱えながら見知らぬ場所を旅するなんて普通は耐えられないからだ。夜逃げの逃避行と旅行の旅とでは全然意味が違うということだ。


 早朝に乗り込んだ中型フェリー。

 これでいったん大陸南西の先端にある街ギギギガまで向かう。このフェリーの足なら夕方までには到着するという。

 そこでおち合う予定の人物がいる。

 セイヤ達に直接面識はないがチィルールの知り合いの知り合いらしい。


「じゃーなー! また来いよーぉ!」


 出港するフェリー。その客室層の甲板から姿を現しているセイヤ達にロッカが声をあげた。

 見送りにはレデーットとナナハさんもいた。二人とも静かに手を振ってくれている。

 チィルールに懐いていたチビッ子達にこの時間は少々無理があったようで、まだ布団で夢の中である。

 

「トロイもなー!」


「なんでボクがついでみたいな感じなんだ」


 船の中、ぼやくトロイ。二人とレデーットは幼馴染。ケンカするほど仲がいい関係。


「トロイのーぅんぁぁっふっひぇー」


 船が岸から離れて聞こえづらい感じ。

 でもトロイのコメカミがヒクついている。

 

「あいつ大声でっ」


 その様子からドサクサに悪口を言ったんだろうなとセイヤは予想できた。


「みなさん、仲いいですよね」

「そうだろうか? ボクは散々な目に合わされてる気がしてならないが。まあ、存外こういうのが気の置けない仲間とかいうやつかもしれないな。はは」


 ニヒルな笑みを口元に浮かべる。ゴーグル越しなので表情ははっきり読めないが『トロイってけっこう単純だよね』とセイヤにも見透かされてるのであった。


「お前ら、そんなことよりもな? これはなんだ?」


 チィルールが割って入る。

 彼女は自分にタスキ掛けで括りつけられたロープに御不満の様子。


「なにってリードだけど?」

「りーど、とな?」

「そうだよ?」

「なにか?」

「だってお前、海に落ちるでしょ?」

「……」


 以前チィルールはクジラを釣るといってクレーンのフックにぶら下がりそのまま海に落下したことがあった。

 あげくクジラではなくて海龍という怪物に襲われて絶体絶命のピンチに――

 そこで命懸けのセイヤ(タロー)の活躍でどうにか命を救われたのであったが、代償としてセイヤは心に深い傷を残す事になったのだ。


「オレはな、今でもたまにあの時のコトを夢に見て『ぷるぷる・ぷるるるんるー』な状態になることがあるんだぞ?」

「あ、あの時は、なあ」


 言い訳を求めてリリィーンとトロイに視線を向けるが、二人ともあの時のセイヤの様子を思い出しては何も返す言葉が見つからなかった。


「落ちるよね!?」

「うぐぐ――わかった」

「本当に?」

「うむ。もうタロじゃなくてセイヤを『ぷるるるん』にはさせん」

「うん。よしだ」


 その言葉を確認したセイヤはチィルールのリードを外してやった。


「いいのか?」

「ああ。でも危ないことはしちゃだめだからな? 一人では甲板にでないこと、いいな?」

「分かった。一緒にだ」


 セイヤの手を握るチィルール。少し頬が赤い。

 ニッコリとセイヤ。手を握り返しながら反対の手でチィルールの頭をナデナデ。

 その手を「ぱしぃ」と払い落とすチィルール。だってナデナデ大嫌い。「フンッ」と鼻息一つ。

 二人の間に微妙な空気。

 

「じゃあ私も外して」


 チィルールと同じ状態のリリィーン。抗議の声をあげる。


「お前こそ落ちるだろ!」

「前に落ちたのはチィー様で私じゃないしー! 私身軽だしー」

「なぜそれがフラグだと気付かん?」

「なに言ってるかわかんなーい。ホラ、私って、こんなに身軽―― あ、あっー!!」


 身軽さを証明しようとしたリリィーン。

 甲板の手すりに飛び乗ろうとした、のはいいのだが、リードのヒモが足に絡まってジャンプ失敗。ズッコケて手すりの向こう側、海の世界へと滑り落ちていく。


「ひゃあああ!」

「あぶねー!!」


 リードのヒモを掴んだセイヤ。間一髪間に合った。

 宙ぶらりんになったリリィーンを引きずりあげる。

 

「あわあわわ」

「ほらな!? お前らは落ちるように出来てるんだから自覚持てや。なあ?」

「な、なああ。だってヒモが、ヒモがあ」

「トロイもコイツらのこと気をつけてやって?」


「うむ。大体は分かっているつもりだが、たまにボクの予想を越えるときがな。まあ用心はしておくつもりだ」


 トロイの発言に不服そうなチィルールとリリィーン。


「ちょっとソコ! お客さん達! 危ないことしないでくれる!?」


 船員さんに怒られましたとさ。

 

 

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