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宴2


 宴たけなわ。

 酔っ払いの姿もチラホラ出始めて賑やか。

 酒も料理もドンドンなくなり、入れ替わりで大忙しの女中さん達。

 

「オレも手伝います」


 見かねてセイヤの進言。さすがは平成生まれの紳士。


「セイヤは男ですから、ここにいてください。できれば皆さんのお相手などしていただければ、と」


 慌しくしているナナハからそう言われたら、接待的なことをしなければならないのかもしれないと思った。


(レデーットさんに酌でもしなといけないのかな?)


 と考え、彼女の輪に向かう。


「失礼します」


 酒瓶を持って輪に侵入するセイヤ。

 気後れする必要はなかった。だって、その場はみな見知った顔のメンバーだった。


「皆さんには色々お世話になりました。レデーットさんには特に。ご全快本当におめでとうございます」

「タロー、じゃなくてセイヤだっけ。堅苦しいなあ」とロッカ。

「酒の席やし無礼講なんな」とヤソウ。

 

 ヤソウはチィルール・セイヤ一行を逃がすときの馬車の運転手だった。役に立ってなかってけど。


「いえ、本当に感謝しています。どうぞ一献」


 要領が分からないものの、なんとか酌をする。


「ありがとう、でやす」


 セイヤの酒を飲み干すレデーット。

 それは感謝の気持ちをちゃんと受け取っているという証。


「おーい、コッチも」とロッカ。

「ハイ」と酒を注ぐ。

「あんちゃん、こっちもなんな」とヤソウ。

「ふへーぃ」とセイヤ。(コイツにはなんか世話になってたか?)


 盛大に事故って馬車がコッパ微塵になってた気がする。無論同乗していたこっちもケガしたし、という思い。

 温度差が微妙だけどなんとなく盛り上がる場。


「そういえば、レデーット覚えてる?」とロッカ。

「なにがですえ?」

「た、セイヤにマジックエールされたときの事」

「はあ?」


 レデーットが生死の境を彷徨っていた時の話なので自身にはない記憶であろう。


「ロッカさん! 待ってっ、それ待って!! ヤバイからっ、ダメーッ!!」


 大慌てのセイヤ。なぜならそれはかなりヤバイ話。


 強大な敵に敗北した後、仲間に回収されたレデーット。

 とこゆめに運び込まれたものの、意識もなく脈拍も薄く絶体絶命の状況。


「レデーット! レデーット!」


 ロッカの問いかけにも無反応。

 それどころか心拍計の反応も「ピコ、ン・ピ、コン」とトーンが低くなった。


「信じられん。あのレデーットが!? まさか、あり得ん!」


 トロイが憤る。


「レデーット様!」

「お館様ぁ」

「お嬢様、どうか」


 心配と不安で言葉もでない家臣達。

 だが現実は無情。


『ピーーーーー』


 心拍計の反応はゼロに。


「レデーット!!」

「ウソだっ!!」


 静まり返る絶望の場。

 

 だが完全に窮地であったその時、現れるはマジックエールの使い手、その名はセイヤ。


「お前……」

「タロー?」


 レデーットの前に訪れるセイヤ。

 彼自身も助けたいという気持ちは全開の本当だ。

 そしてレデーットに手を伸ばし、マジックエールの奇跡が注ぎ込まれる。


「マジックエール!」


 能力を注ぎ込まれ金色に光り輝くレデーットの身体。


「まさか?」

「マジックエールで本当に奇跡を起こす気なのか?」


「奇跡じゃない! 絶対に助ける! 確信で絶対助ける!! 奇跡なんかじゃねーっ!!」


 レデーットに変化、白銀色に発光した。


(オレ達なんかのために死なしゃしない!)


 セイヤの想い。それが力になる。


(そしてキラリの為にも、そうじゃない。もしレデーットさんが死んだら、オレはキラリのことが許せなくなる。それだけは…… だから絶対死なせやしない!!)


 みんなを、自分を含めて全員を救いたいと願うその強い想いが力となって実現する。

 そして奇跡は起こるのだ。

 エメラルド色した神秘的な光がレデーットを包んで収束した。

 その結果!


「ああーん! いけまへん! でも、ああん! んんっ、んー! あー! んんー! アハーン! そんなっんんっダメーン!」


 よがるレデーット。

 さっきまで死んでるみたいだったのにいきなり元気になった。さすがマジックエールの力。


「ああっ、イサム! ああーん。 イサムー! もっと! もっとぉおお!!」


 愛しき者の名を呼び、よがり悶えるレデーット。いやー元気元気。


「あ、ああっ! あーっ、ああああっ、ああああああ」


 痙攣の後、静かに佇むレデーット。どうやら満足したようだ。

 ハッフハッフした寝息?が元気?そうだ。


「……」


 完全に固まるその場の全員。

 やらかしたセイヤは冷や汗垂らして真っ青だ。

 そして心拍計だけが空気も読まずに『キンコンカンコンキンコンカンコンキンコンカン』とハイテンションなリズムで鳴っていた。

 

 ということが、あったのだった。


「なあああああああっ!!!!!!」


 顔真っ赤なレデーット。酒に酔っているせいもあるが、もっと真っ赤だ。

 もっとも本人は完全に酔いが醒めて真っ青になったが、でも真っ赤なのだ。へんだ。


「イサムって、誰のことだったんだ?」


 呼んでもないのにいつの間にかトロイが輪に。


「ヒト族の子、レデーットのいいヒトだよ」

「へー。そんなヤツがね。で、どこに?」

「とっくに死んだよ。ヒトだから」

「――」


「ロッカあああ!!」

「ぎやああああ!」


 化け物の本性出しかけのレデーットがロッカの頭を鷲掴み。

 獣指のツメが頭にくい込み、ロッカの額に血を滴らせた。


「なんてことをー!」

「イタイー! わ、私じゃないもん! セイヤだ! セイヤの仕業だー! イタイイタイー」

「そういうことやなくて!」

「だってみんな知ってるし、レデーットだけ知らないのは仲間はずれで可哀想だったしー! イタタイタイー」

「ぐぬぬぬぬぬ」


「す、すみませんでしたー!」とセイヤ。

「まあまあ、みんなそんなこと誰も気にしてないし、レデーットが無事で本当に喜んでいるから」とトロイ。

「くっ、確かにセイヤにも気兼ねさせてしましますわな」


 開放されるロッカ。

 

「クソウ。お前のせいだー」

「ロッカさん、待って、血、血が」


 ロッカに押し倒され馬乗りされるセイヤ。


「このおー」

「え、ちょ、やめてー」


 頭をワシワシグシグシされる。結構痛い。


「あーっ! タロー(セイヤ)貴様というやつはぁぁ。またスケベイなことおぉぉ」

「うげ? チィルール(またよけいなヤツが)」

「離れろーっ」


 チィルールがこの騒ぎに参戦。

 セイヤの下半身にしがみ付き引っ張る。

 そのせいでスライドして馬乗りロッカの股間に頭が滑り込むのだ。


「いやーん? セイヤのエッチぃ! ほらコノコノぉ」


 セイヤの顔面に股間をポンポン押し付けてくる。


(なんだコレ。めっちゃくちゃ恥ずかしいんだが? これがモテてるっていうモノなのかー?)


「ぬああ! た、タローのっ、スケベイハレンチがーっ!!」

「チィルール? ちょ! おま!」


 ものすごく嫌な予感がしたセイヤ。

 大慌てでこの状況を回避しようとした、が、間に合わなかった。


「タローのエッチぃいいい! がぶう!」

「ひっひゃーあああ!」


 チィルールに噛み付かれたセイヤ。しかもあろうことか、ソコはちん○。ポジション的に嫌な予感がしたが的中してしまった。


(どうやらオレは、リリィーンだけでなく、コイツともいつか決着をつけなくてはならないようだ)


 それは、ちん○に傷を負わされた者の宿命である。


 そんなセイヤの想いなどほっぽらかして、その様子を眺めていたギャラリーは大いに盛り上がるのだ。

 大成功である。

 やったね! 

 よくわからんが。

 


GWで次回更新は不定です。

仕事忙しいです。

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