イボな二人
あれからまた数日が経った。
センエン国中央政府の災害復興部隊もすでに到着しており、運び込まれた物資などによって人々は安寧を取り戻しつつあった。もっとも日常を取り戻すということは厳しい現実を受け入れなければならない段階でもあり、至る所で始まるお葬式は街全体を喪に服させた。
だがいつまでもうつむいている訳にもいかない。
一方では再出発の準備もたんたんと行われていく。
とこゆめで預かっていた孤児達は各地から訪れた親戚達に引き取られ、その数を三人にまで減らしていた。
残った子供はとこゆめに引き取られ、これからもここで暮らしていくことになる。
「子供達、さびしそうだったな。別れるほうも残るほうもどっちも」
「そうだな」
「仕方ないですよ」
寝床で眠っている子供達の様子をセイヤ、チィルール、リリィーンが廊下から覗き込んでいる。
「チィルールもさびしそうだな」
「そんなことは、まあそうではあるが」
「チィ様はずっと彼らと一緒でしたもんね」
「うーむ。みな達者であればいいが」
「大丈夫だろ、きっと」
「適当な気休めを」
「リリィーンうるさい。子供が起きる」
「お前達、本当に仲悪いよな」
呆れるチィルールが部屋の障子ドアを静かに閉めた。
「宴は華の間だったな」
夜も更けて子供達はオヤスミの時間。そして従業員達が各々の仕事を終えたこの時間。とこゆめスッタフによるレデーットの快気祝いの宴が準備されていたのだ。
「レデーットさん、回復してよかった」
「うむ。なによりだ」
「ご馳走。うへへへ」
子供達にも晩御飯にはご馳走が用意された。でもこれからはお酒もはいる大人の時間なのだ。
「さすがリリィーン。ヨダレみたいな女」
「はあ? タろ、セイヤはご馳走食べないんだね」
「なんで?」
「ハアァ、お前らは本当。いいから宴で粗相ないようにな」
「なんでチィルールが大人ぶってるんだ。お前こそ調子のって酒とか呑むなよ?」
「私は十六だぞ。酒を呑んでなにが悪い?」
「え? こっちって十六で呑んでいいのか?」
「当たり前だ」
異世界ギャップあるあるであった。
「でも呑まないほうがいいぞ。酒呑むと背とか伸びないし、オッパイもそのまんまだし」
「……」
「な?」
「私は、普通だ!」
憮然とした様子ですこしドスドスと足音がうるさくなった。背も小さくオッパイも同様のチィルール。
「私も十六歳だし」とリリィーン。
「嘘をつくなっ」
「えっ!? ……なんで(バレた?)」
「すべてはお前のオッパイが物語っている」
「はああ?」
「イボみたいなオッパイしてなにが十六歳だっっケッ!」
「お、おまああああ!」
現実世界で元恋人キラリの豊かなオッパイをあれやこれやしていたセイヤにとって、チィルールやリリィーンのソレはイボ以外の何ものでもなかった。
「タロー(セイヤ)はエッチだ」とチィルール。
「ヘンタイですよ」とリリィーン。
「オレはロリコンではない」とセイヤ。
廊下をズカズカ進む三人でした。




