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最後の戦い


「リリィーンを放せ!」


 チィルールが勇ましく言った。


「あー、もぅ」タローが狼狽。


 だって、チィルールの身代わりにリリィーンが死ぬ。それでこの場は決着したはずだってのに、突如チィルールが息を吹き返したのだ。


(なんで雑魚のリリィーンを助ける為に一国の姫が命を賭けなきゃならんの?)


 タローの感想も、もっともだが……


「私こそがチィルール・ロクドル・オクエン・ヨシモトだ。そのような痴れ者と一緒にするな!?」

「これは失礼」


 返答した鎧騎士、槍で吊り下げていたリリィーンを投げ捨てた!

 放り出されたリリィーン、地面に打ち付けられ「ポペッ」とか言って気を失った。


「わ、わ、わたしっしいしがあああ! 相手だアアア!!」

「……」

「な、なめてんじゃねーですがアアア! アアぁ!?」


 迫り来る赤い鎧騎士に向かって、カタカタと震えながらも虚勢を張るチィルール。

 だが、足元は雨も降ってないのに水溜りが出来ている。


「な、なん……だと?」と、そのことに驚愕したのはタローである。


(ありえん。どんな強敵を前にしても3分はもったチィルールの尿道が瞬間に決壊しただと!?)


 ながい遭難を共に旅し、死線を何度もクグリ抜けた間柄だからこそ知っている。


(だとしたら、コイツは今までに会ったどいつよりも強敵って――ことか!?)


もはや失禁のタイミングで相手の戦闘能力が分かるレベル。

 

(逃がさないと!)


 だが、動きは止まる。駆け出そうとしたタローの前に、空から降下し着地した人物がいる。

 それはトロイだ。

 手に構えた妖精のナイフをムチのようにヒュンヒュンとしならせている。硬質だが柔軟な材質でできた奇跡のナイフ。しならせれて伸ばせば伸ばすほど研ぎ澄まされる刃。トロイの最強武器である。


「大将軍ハナコ! その子には手をだすな。その子はこの世界の希望。導きの女神だ」


 トロイが鎧騎士に向かって吼えた。


(あの化け物に私が相手になるとしたら出会いがしらの不意打ちだけだった。でもまだ、妖精のナイフはこの化け物に通用するほど研ぎ澄まされていない。もう少し時間を――)


 妖精のナイフを新体操のリボン競技のように振り回すトロイ。伸びた刃の所々が虹色に輝き始める。


「この世界の希望だと? そんなの異世界から来た私には関係ない。こんな世界のことなどどうでもいい」

「そうか、なら――(ナイフが先端まで虹色化してきた。そろそろイケるか? いや、もう相手も警戒し始めている。今ヤルしかない!)ならば、死んでもらう!!」


 振りかぶったトロイの腕が鎧騎士に向かって突き出された。しなっていたナイフはその動きに反応して敵に向かって一直線にまっすぐ伸びっていった。それは一瞬の出来事で普通の者ならナニが起こったか理解した瞬間、刃の先端に額を貫かれ死んでしまうはずだった。

 だが相手も只者ではない。すでに分厚い鋼鉄の盾を構えていた。


(そんな盾ごときに! ボクの妖精のナイフはっ!)


 伸びきった妖精のナイフは、そんな盾など存在しなかったのように易々と貫通し、赤い鎧騎士の兜に付いた鉄仮面をも貫いたのだった。


「なぁっ!!」驚愕の鎧騎士。だが……


 トロイの動きが止まる。妖精のナイフが縮み、元の丈に戻った。先端には少し血が付いていた。


(浅かった)


 額には傷をつけたかもしれないが、ただそれだけだった。


(ビビらずにもう一歩踏み込んでいたら――焦らずにもう一振りナイフを研ぎ澄ませれば――)


 ほんの数センチのことで明暗が分かれた。

 

(相手にこっちのネタがバレた。もはや妖精のナイフといえど通用しない。これまでだ)


 赤い鎧騎士は全身に真っ赤な魔力をまとい、妖精のナイフを警戒している。先ほどまでとはケタ違いに防御力が上がっている。


「ただのナイフとは思っていなかったが、まさかこの盾を易々と貫通するとはな。こんなところで伝説級の武器に巡り合おうとは思わなかった。世界がとか女神がどうとかいうヤツの因果か? まぁいい、これ以上邪魔をするなら貴様から殺すぞ?」

「く……」

「そこでジッとしてるがいい」


 赤い鎧騎士は全身の魔力を放出、魔撃として一気にトロイにぶつけた。

 車にはね飛ばされたかのように宙に舞うトロイ。

 地面に叩きつけられ、HPは完全にゼロ。命こそ無事だが身動きが出来なくなった。


「トロイさん!」

「トロイ!」

「二人ともにげろ……」


 タローとチィルールに言葉を残し、トロイは気を失う。


 この場に残っているのは戦闘能力404エラーのタローとチィルールだけ。

 彼らに勝算などあるはずもなく……

 迫り来る赤い死神の前で怯えるしかないのであった。


(誰か助けてくれ)あてのないタローの願いは誰かに届くのだろうか?


 その時、一陣の風が吹いた。


「!?」


 でもその風、ちょっと寂しそうだった!







 一方、その頃のルルーチィ。


「萌え・萌え・にゃんにゃん・萌えニャンニャン! おいしーくなぁーれぇ」


 メイド姿の彼女が魔法の呪文を唱えながらお客様のオムライスにケチャップをかけている最中だった。

 

(なんで私がこんなことをぉおお!)


 路銀が尽きて仕方なくバイトするしかなかった。でも短期で高収入となるとやはりこういう仕事しかなかったのだ。


(早くチィーちゃんに追いついてピンチを救ってあげないといけないのにぃ)


 そう、今まさにチィルールは絶対絶命のピンチだったのでした。でもルルーチィがそれを知るはずもなく。


「萌え・萌え・にゃんにゃん!(コンっくそがーっ!)」



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