表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/303

最低の戦い

ヒューッ!


 ここは現場。

 最初の戦いがあった場所。


「……ん? 痛っ? 体、全身が打ち身?」


 タローの意識が回復。全身の打撲感。いや実際に全身打撲のひどい様相。


「なんだっけ? あ、ああ! みんなは?」

 

 記憶も回復。馬車に乗って移動していたはずだが、いきなりウズ潮のような嵐に突入? 竜巻に巻き上げられたような感触は残っている。


「なにが、どーした!?」


 あたりの状況。

 木っ端微塵に吹き飛んでる馬車。

 散りじりに弾き飛ばされてるチィルールとリリィーン。

 意識はないが大怪我などの様子はない。


(敵襲だったのか?)


 としか思えないのだが、敵の姿が見当たらない。


(帰った?)


 のん気な感想。寝てるあいだに友達帰ったじゃあるまいし。

 現れるに決まっている。

 案の定、彼の近くに宙から舞い降りてきた。軽く膝をしならせスタンと華麗に着地した赤い鎧騎士。少し前かがみからギュインと関節をしならせ直立。鎧の全身所々に付いている通風口から内部に溜まった熱い空気がシュシューと吹き出してきた。先ほどまであの煉獄の炎の中にいたのだから無理もない。中の者は魔力で平気だが、鎧自体はまだ熱をおび周囲との空間に陽炎をたたせている。


(なんか赤いモビルスーツ、キター!)


 タローちょっとトキメク。それは男の子の発想。だが、冷静に考えてみればソレは殺人機械だ。そしてその照準がコチラに向けられている訳である。


(ヤバイ……見られてる)


 なんかタローをじっと見てる、赤い鎧騎士。仮面越しなのでおそらくだが、でも見てる。


「ハーイ? こんにちわー ネジの調子はどうだい?」


「……私の標的はチィルール殿下のみ。邪魔するなら貴様も殺す」


(うあー、シャレが通じなさそう)


 フレンドリーなタローの声掛けに、冷静で残忍な返答。お茶濁しで別の方向に向かわせかたったが、これはシリアスに進むしかないようだ。


「チィルールを殺せば戦争になるぞ?」

「元より閣下はその意向だ。殿下のお命をもって宣戦布告となされる」

「大儀がない!」

「殿下は我々の領土に無断で侵入してきた。敵対的挑発行為だ」

「それはアイツの意図したことではない」

「本人の意思などこの場合関係がない。ソレを我が国がどう受け取ったかだ」

(ダメだ。全部分かってるうえで人の命を道具として利用しようとしている)


 汚い人間の暴力だ。暴力をふるう前提であとから免罪符を探してくる。時としてでっち上げの免罪符ですらにも勝手に威光を持たせて、自分達の暴力を正当化してしまう。小賢しく卑怯な行為だ。


(コレを卑怯だと悪口を喚けば、ソレはそれ自体が言葉の暴力である。話が暴力で決着することを認めてしまうことになる。力で敵う相手ではない。駆け引きの交渉を続けなければならない)


 この状況で冷静に判断。タローは自身ですら不思議に思えるほどクレバーになっていた。 

 

「なら、チィルールはここで死んだことにする。そして名を変えさせて一生人目に付かないように暮らさせる。それでいいはずだ」

「なにを言っている?」

「わからないのか、これは交渉……」

「そんなことは分かっている。私が言いたいのは――なぜ? 貴様とそんな交渉に応じなければならない? どこに約束が守られる保証がある? と、いうことなんだよ? わかったかい? 坊や!」

「そ、それは」


 確かにそうだった。社会的立場もないタローに信用価値はない。約束を破ってもペナルティは存在しない。そんなヤツとの交渉に意味はない。


(確かにだ。オレはこの世界の主役だからみたいな勘違いしてヘンなことを)


 相手からしてみれば初対面の他人。しかも肩書きもない未成年の子供でしかないのだ。世界の一大事、歴史を左右する交渉などする相手ではなかった。


「ここまでのようだな。これ以上邪魔をするなら貴様から殺す」

「っ……」

「……」

「え?」

「……なんか、まぁ、楽しかったよ。幼稚だが退屈しのぎていどにはディベートできた」

「?(なんだ、今の間は?)」


 赤い鎧騎士は会話が途切れてからも、しばらくタローに視線を向けていた。

 でも理由は誰にもわからない。


「さて、坊や。これからの惨劇は見たくないだろう? とっとと逃げ去るがいい」


(逃げる? けどこのままチィルールを見殺しにすることはできない。ならどうする)


 『戦う』というコマンドも選択肢には存在してはいたが、『戦う』(絶対死亡)ってカッコ付いてるし。


「忠告はしたぞ。坊や、あとは自己責任だ」


 赤い鎧騎士、倒れていた少女に近づくと、槍で少女の胸元の服を引っ掛け、宙に掲げた。


 でもソレ! チィルールじゃなくてリリィーンだー


「リリ、あっ、チィルール!!」


 タローが声を張り上げた。


「邪魔をするなと言った」


 赤い鎧騎士から魔撃攻撃。それは小指一本分の威力だったが、直撃のタローは地面にうずくまった。


「頼む。チィルールを助けてやってくれ」

「聞けぬ」

(よっしゃー! いけ! 達者で死ねリリィーン)


 これで全ては丸く収まる。……のはずだった。

 でも、この状況でリリィーンが目を覚ましやがった。


「ハポア!?」


 自分の状況がいまいち飲み込めないリリィーン。


(目覚めたら、そこは絶体絶命シーン。なぜだー?)


 でも、自分が今絶体絶命なのは理解できた。


「チィルール、すまない。力にはなれなかった。後からオレも逝く。だから、さみしくはないさ(いや、嘘だけど、リリィーン把握しろよ? この状況でお前が死んだら全て収まるんだから)」

「ハプー? はぷ! ハプ?(タロー、お前ーぇぇ、私を身代わりにしやがったなー)」


 恐怖と混乱と罠にはめられたことへの焦燥と怒り、リリィーンの感情が混乱。

 抗議の意思を含んだ唇は先端を尖らせてパクパクと開閉を繰り返す。

 だが混乱した心理状況と恐怖のせいで抗議訂正の言葉は発声できなかった。


「さようなら。チィルール。(死ねリリィーン、姫の身代わりになったお前の死に様は伝説となり歴史に名を残すことになるだろう。後年、今日という日はリリィーン記念日として祭日になるに違いない。往生しろな?)」

「はぷ! はぷ! はぷー!」


 よろけながらも立ち上がるタロー。

 そして直立不動の姿勢で最敬礼。

 主君の死に添う配下のカガミのような様相。


「はぷー! はぷはぷー!」


『次回予告』(ナレーターの声)


 原型を留めぬほどの惨殺死体。

 リリィーンは死んだ。

 次回第113話、


『さらばリリィーン! 裂かれた腹から腸が飛び出し破裂した大腸からウンコ舞い散る』の巻


 乞うご期待!


 ジャジャ、ジャジャジャン・ヒューッ!(バックコーラス!)


 なんかリリィーンが死ぬこと前提で話が進んでいくのであった。


「パウー! パプー! はっぷ!! はっぷ!」


 槍で宙に浮かばされたリリィーン、モゾモゾと身悶え無様に抵抗。


(そんな無残な次回になんていかせるかー!!)


 だが舞台は整っているのだ。ということは、死ぬのは今!? 今でしょ? 昔の偉い人がそう言ってた気がします。


「一瞬だ。苦しみさせはしない。HPもろとも魂まで一気に破壊してやる」


 赤い鎧騎士の台詞。

 槍の先端に魔力の赤い光。

 まだなにもしてないはずなのに、輝きだけでリリィーンのノド元を焦がし始める威力。


(ナンマンダブぅ、ナンマンダブぅ、成仏しろよリリィーン)とタロー。


(いやー! 処女のまま死にたくなーいー! 男ーっ! おチンチーン!!)とリリィーン。


 哀れ。だが、リリィーンは聖女のまま伝説となーれぇー……


「ヤメロー!!」第三者の絶叫が響く。


 この後に及んで今更、第三者の介入。普通なら野暮なことコトうえない。だが?


「リリィーンを離せ!!」チィルールの咆哮。


 さすがにその第三者が、張本人そのものだと文句は言えない。

 剣を抜き、中段に構えて赤い鎧騎士に対峙するチィルール。


「なんだソッチか、チィルール殿下は相当のウツケと聞いていたのでコッチかと思った」

「……」

「……」

「……」


 不思議な沈黙がこの場に訪れた。


『次回予告』(ナレーターの声)


 ……

 ……

 次回第113話、


『作者、考え中』の巻

 

 乞うご期待!


 ジャジャ、ジャジャジャン・ヒューッ!(バックコーラス!)


 ひゅーっ!

 

最低の戦い、続きますよ? ぽ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ