追いつかれた
1pだけでうすぽ
タロー達を乗せた馬車は山あいの道をトコトコと行く。
馬車内のタロー達三人は寝こけてる。
のどかだ。
平和そのもの。
(きたな)
だが、気配が一変。
周辺の獣、動物、小鳥や昆虫ですら慌てて逃げ出し、静かだった林がいきなりパニック状態に。
「おやおや? どーしたんだな?」
馬車の手綱を握るヤソウがつぶやく。
無論、彼女もその異常事態を理解しているが気付かない鈍感なヒトとして演技していた。
そして馬車の目の前に空から急降下して降り立つ物体。
『ドン』意外に軽い着地音。魔力の使い方が上手い証拠。
落下してきたのは赤い鎧騎士だ。
当然、ヤソウは知っている。
「ふああああ!! なな!? なんあな!? あんた、なんなあな!?」
大げさに驚くヤソウ。手綱を絞って馬車を停めた。
「あぶないな! なんな?」
「……」
「あんたな? まさかな! 魔物なー!? なんでこんなとこになー!」
青ざめる演技するヤソウ。
「魔道具! どこな? どこやったけな?」
あわわ、と慌てながら武器を探すフリのヤソウ。
「ない、ないー! いやーな! 神様助けてなー!」
「違う」
赤い鎧騎士、喋った。
「へ? あんた、人間なんな?」
「そうだ」
「はああーなぁ。焦ったわな」
「……」
(どうやら時間稼ぎできそうやな)
問答無用で蹴散らされるパターンは回避できた模様。
後は口車で回すつもりのヤソウ。
「で? なんね? あんた、私らになんか用なんね?」
「ふぁはははあはあああ」
(は? なんか不自然だったかな? いや、ブラフだな)
笑い出した赤い鎧騎士。
どう考えても怪訝なヤソウ。だって失敗した感触はなかった。
「用か――うん。貴様「私ら」とか言ったな?」
「そやな。だって馬車やでな。ヒトを運ぶモンやな」
「私は中の者に用があるだけだ。貴様に用はない」
「はあぁあな?」
「どうした? 貴様は乗り合いの馬車主で客のことなど、どうでもよかろう? 馬車が空だと言われればどうにもできなかったかもしれんがな? ふふっふふふ」
「いえ、これは乗り合い馬車ではありません。乗っているのは我が主達です。狼藉は許せませんがな?」
「主、達! か。複数いるということか。私の持っている情報どおりだな」
「あなたは? いったい?」
「まだ説明が必要か? ここまで付き合ってやったというのに?」
「!!」
「中を確認させてもらう。もちろん、これは不当な違法行為だよ? 間違っていたのならいくらでも司法刑罰を受けてもいいさ? んん?」
(ヤバイ。コイツ、体力だけの暴力バカじゃない。『付き合ってやった』の台詞は完全にブラフ、こちらに鎌掛けてきた。それは間違いない。こんなヤツ相手に口車では……)
「ですか。まあな、あなたみたいな大物騎士様。私がどーこーできませんしな。殺されるよか主様達を裏切って生きてくほうが賢いですはな。どーぞどうぞな?」
「では、遠慮なく」
馬車の扉に赤い鎧騎士が手を掛ける。
それを見計らってヤソウ、馬車馬の尻に激痛のする棘針を飛ばし刺さらせた。
『ヒヒヒヒーーーーンン!!』
馬は尻の激痛に驚き、激走を始めた。
「あーれー! 赤い鎧騎士様ーっ! 馬が! 馬が! どうかお助けをー!!」
「……」
ヤソウの悲鳴。
ワザとらしいのだが、赤い鎧騎士も付き合わなくてはならない感じ。
当人も余裕があるのでナメプというか、やっぱ空気を読んで付き合わないといけない感じ。
「茶番だな。時間も余裕あるし、まあ付き合ってやるさ。こーゆー洒落や皮肉は嫌いではない」
ヤレヤレといった感じで暴走する馬車を追う赤い鎧騎士だった。




