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迎撃!


 夜間、早朝間際。

 ただただ暗い。


(予定通りなら、そろそろ来るはずだが?)


 トロイは海上にいた。

 黒い網で全体を覆い、カモフラージュした中型漁船、その中に。

 海上で隠密行動中。


「来た、目標です」同船したナナハさん。ターゲット確認。


「予定通りか」


 目標の大型貨物船。

 予定通りにセンエン国に侵入。

 これを逃せば次は一週間後の便になる。追っ手が乗り込んでいるとしたら、この船でしかない。

 

(まさか、獲物側から先制攻撃されるとは思っていないだろう。くくく)


 迎撃なら予測されているかもしれないが、追われる方からの攻撃など予測していないと踏んだ。


(入港前の海上で迎撃だ)


 それがトロイの作戦。

 レデーットさんと協議の上、貸してもらった精鋭部隊。

 ナナハさん率いる第一小隊を含め、三個小隊、この小隊郡で先制攻撃の作戦。


(このメンバーならヒト族など容易く組み敷ける)


 エルフのレデーットさんに借りた小隊。実は全員、妖精族のエルフ、もしくはハーフのハーファ。皆、超人的な魔力持ちである。

 そして、最大の能力、


『エー・エス・エーセス、聞こえるか?』


 トロイの耳先が震える。


『イーサ!』


『イーサ! トロイ』

 

 トロイの耳にその他のエルフ達から送られてくる耳の振るえが伝わって、その内容を理解した。

 それはエルフ達独自の伝達方法だ。他の種族に聞くことはできないし、反応することもできなかった。

 この手段を用いてトロイは様々な情報を獲得し、情報屋として成り立っていた。


『目標確認した。以後、各部隊は部隊長の下に行動、成功を祈る!』


『イーサ!』全員の返事。


 そして、その後、小隊長達と個別連絡。


『ナナハ、第一小隊は目標甲板で待機。周囲の監視とイレギュラーに対応』

『イーサ』


『ハッパ、第二小隊は予定通り、オネンネしてる船員を……』

『イーサ』

『任せるが、くれぐれも刺激しないように』

『……イーサ』


 トロイ、ナナハのことは知っているがハッパのことは知らなかった。

 若いエルフのハーファで無口なキャラで扱いに困るタイプだった。


『トロイ隊長、ハッパはやれる子です』ナナハが口(耳)を挟む。


『そうか、分かった。任せたぞハッパ』

『イーサ……』


 感情のない返事でイマイチ不安なトロイだったが、ナナハのお墨付きなのだ。間違いはないはずだった。


『よし、やるぞ! ロッカ、船を!』


「イーサ、隊長」

「お前ーっ!」


 普通に口で返事したロッカに不満げなトロイ。


「別に、この、ちっちゃな船の中で耳通信する必要なくね?」


 あっけらかんなロッカ。見た目、金色ショートボブの似合うあどけない普通の少女。だが、エルフだ。年齢不詳。実際、かなりエグい?


「空気を読め! それと! 耳通信とか、ゆーなっ!」

「あーぃ。じゃあ、なんて?」

「スピチャル? イヤー・エルフミラクル? 電波?」

「電波ーああああっwww!」

「ち! 違う! 間違えた! なんだ、あれだ? なんだっけ?」

「ああ、『なんだっけ電波』でいいんですね?」

「ちがーう! ぬぬぬ! まったく、貴様はいつも!」

「トロイさんこそ、うん十年たっても相変わらずのご様子で……」


 ロッカとトロイ、百年越しの因縁あり。


「まあ、いい! 船を貨物船につけろ! その後待機だ」

「えー?」

「はああああ? 『えー?』ってなんだ? ボク達を貨物船に乗り移させた後、待機してなくて、どーする!? どこ行く気だ?」

「まだ見ぬ、人類未踏の大陸を目指すのさ?」

「この漁船でか? 食料もナシでか? お前の目指してるのって極楽浄土なんじゃないか!」


『うあああ、相変わらずこのヒト冗談が通じないんですけどぉ? みんな、どー思うーぅ!?』


 ロッカ、いきなり露骨な耳通信。


『きゃは、ははあはは!』

『はは、いーと思いマース!』

『私もー(笑)』

『トロイ様、かわいいーぃ!』

『ねーっ』

『はぁぁ、愛しています、トロイ様』

『……いいよねーっ、トロイ様って?』

『うン』

『禿同……?』

『……』


「えー。誰だ? 今、さりげなく告白したヤツ?」


『……』


 ロッカの問いかけに答える者はなし。


 だって、この場には女しかいなかったし……


「……」


 沈黙。


「やめろ! お前ら! カワイそうだろ! 女ってほんと残酷!」

「じゃあ、今回の作戦が上手くいったら、今晩トロイさんが受け入れてくれるってことで。内緒で夜這いな!?」

「へんな死亡フラグ立てるなよ? シャレで済まないよ? それはイロイロとだよ!?」


 もうカンベンしてあげて? イロイロな感じで。


「あ! あの!」


 一人の少女、場の空気を無視して声をあげた。


『?』


 突然の発声に困惑の一同。

 見れば、名も知らぬ、あどけない少女の姿。

 恥ずかしくて、ほっぺ真っ赤か。

 みんなの視線を浴びて、なんかモジモジしてる。


「お船、いっちゃった」

「え?」

「だから、お船! アッチ! 通り過ぎて、行っちゃった! のっ!!」


『!!』


 目標の貨物船、いつの間にか通りすぎてる。

 その後、みんな大慌てだったです。



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