ナイナイ!
承です。
短いですが楽しんでいただければ。
買い物の成果。
タローは白ブリーフと着物を手に入れた。忍者装束っぽいダークブルーなヤツ。その上にダボダボのフード付きカバーオール。アツいでしょうからと、店員に袖と裾を捲し上げられた。だからワンピース姿みたいにカバーオール姿になった。ついでにリュックサック。古い制服はこの中へ。
(冒険者っぽいかな? でもお洒落っぽくはないな)
それと、チィルールはぷにゅキュアパンツとお菓子を手に入れた。
ついでに、リリィーンは内緒のパンツとお菓子を手に入れた。
「なかなかよい買い物であった」
「ま、そうかもな」
「この街の駄菓子屋、種類少なかったけど安かったです」
三者、それなりに満足の様子。
「おかえりんさい」
居酒屋『とこゆめ』に帰った一行を店主のレデーットさんが向かえてくれた。
「よい買い物だったえ?」
「はい、必要な物は全部」
「おおう、お菓子いっぱい買えた。コレはオミヤゲにやろう」
チィルール、レデーットさんにうまい棒みたいなお菓子をプレゼント。
「ありがとやんすね」
「気にするな。まだまだいっぱいあるからな」
紙袋いっぱいの駄菓子を抱きしめてご満悦のチィルール。
「でも、夕飯もありますえ。ほどほどにですえ?」
「う、わかった」
「ささ、どちらさんも、お部屋でいっぷくなさりい?」
「うむ」
「お茶を用意しますえ」
「かたじけない」
充てられた部屋に入る一行。
広めの和室。梁がむき出し。趣もよい。上等の部屋。
「それでは私はこれで……」
案内してくれたナナハさんは持ち場に戻っていった。
「いい部屋だな。お前らにはもったいない」
タローの皮肉のつぶやき。
でも、チィルールもリリィーンも聞いてない。
各々の戦利品を床の畳に散らかしている。
「魔法のボール――ふふふ」
チィルールがにやけた顔で袋から取り出したラメが混ざった半透明の球体。
「チィルール? 待て!!」
嫌な予感がしたタローが制止。だが間に合わず。
チィルール、その球体を適当に投げつけた。
『バコ! ぼこ! ベコ!!』
部屋の中を凄まじい勢いで飛び跳ねるその球体。
「べがャハ!」
第一の犠牲者リリィーン。脳天に直撃をくらい、購入したばかりのピンク色フリフリ付きレースパンツに顔を埋めた状態で気絶。
そしてなお部屋中を縦横無尽に飛び回る球体。
「ぬん! ぬオっ! くっ、やられはせん!」
球体のオールレンジ攻撃を直感で避けるタロー。なにかに目覚めそう。
「きゃはははは!」
大喜びのチィルール。自分がしでかしたことを分かってない。
やがて、勢いが収まる球体。床にトタトタと転がる。
「よし、もう一回」
ソレを拾おうとしたチィルールより先にタローが奪取。
「?」
「これは、ナイナイだーっ!!」
球体を部屋の窓から思い切り外に向かって投げ捨てたタロー。
どっか行った球体。
「きゃあああ!? なぜか? なぜかぁ?」
「部屋の中でスーパーボール禁止! やぶった子はナイナイだ! 法律で決まってます!」
「な、なぜかぁ……?」
うなだれ四つん這いのチィルール。
守らねばならない約束がある。
それを犯したものはそれおうの対価を……
集団の秩序とは時に残酷なもの。
だが、そのおかげで沢山のことが救われる。
そして、実はそのことを実感することは誰もできない。
だって発生しなかった出来事を実感することができるヤツなんているか?
いたとしても、ほんの一握りの存在しかいない。
だから、やったヤツは批判される。
そして反論することは理論上不可能。存在しなかったことは説明ができない。
だから、そんな立場なんて、もう誰もやりたがらない……
犠牲者はリリィーンだけで済んだ。
その他の犠牲者や、部屋に飾られた高級そうな調度品はタローのおかげで守られたのだった。
たとえチィルールに嫌われたとしてもタローは沢山の財産を守ったのだった。
勇者だー
人それぞれの解釈ありかな? あるあるのギャグですけど。




