進退の決断
レデーットさんのお店で朝食をご馳走になったタロー一行。
満腹満足したあとで、トロイに一人ずつ紹介された。
「まず、こちらが今回のメイン、になるのかな? オクエン国の姫君、チィルール殿下」
「旨い飯、感謝する」
満足げなチィルール。
「そしてタロー・ヤマダ、彼は漂着者だ。殿下のパートーナーかな?」
「チィルールの相棒です。保護者です。へんな感じじゃありません」
不服そうなチィルール。
「あと、残ったのがリリィーン。彼女は……どうでもいい」
「ぬあ!?」
納得げなチィルール。
「なるほど。オクエン国の姫君が今回の主役でありすんか? でも?」
とレデーットさん、タローに注目。
「タローを性的な目で見るの禁止!」
チィルールがタローの前に立ちはだかった。
「こいつは女の尻が大好きなんだぞ! 気をつけろ!」
「あ、お前! 初対面のヒトに向かってなんてことを!」
「事実であろう!? んん? ニャガギャあー!」にゃがやがって――
「それは、だから、はああ……」
確かにそうである。子供のチィルールとリリィーンのお尻をポンポンしまくったのは事実だ。
だが、大人の女性にまでそんなことする気はないのだが、まぁセクハラしたことは仕方ない。
「ほっほほ。さようでやすか。わっちも気をつけねば」
「あああ……」
なんかそんなことになってしまった。
「して、なぜにオクエンの姫君が? こんなセンエン国の果てに?」
「くくく、実は迷子だそうだ」
「迷子?」
トロイの返答に困惑のレデーット。
視線をチィルールに向けるが、確かに頬を赤らめて恥ずかしそうな感じ。
「迷子になってタローと出会い、一緒に敵国のマンエン国で暮らしていたんだ」
「は、あ?」
「本人達は迷子だから気付かなかったらしい。んで、マンエン国から暗殺者が送られてきたんだけど、なんとか撃退。そんで今現在逃亡中っと。オクエン国への帰路を急いでいる。ちなみにその暗殺者に情報売ったのボクなんだけどね。くくく」
「……あいかわらず、メチャクチャしてやんすなぁ」
「早くオクエン国に行かなきゃなんだけど。しばらくココに滞在するのもアリだと思って、正直迷ってる」
「なんして?」
「追っ手の追撃を知りたい。来るならココは待ち伏せに絶好だ。来ないならそれで安心して旅路を進める」
「なるほど。今現在、追っ手は海路で来るしかない。いつ来るか分からない陸路での迎撃はしんどいことにやね」
「この地に船便なんて一週間に一本くらいだろ? 次の便で確認したら一週間は安全だ。その時間があれば余裕でオクエンに向かえる。船便のスケジュール次第なんだけど」
「次の予定なら二日後ですえ」
「そんなに早く」
「違いますえ、アンタがたの船が予定よりだいぶ遅れただけでやんす」
嵐や魔物の襲撃で遅れたのは事実だった。
「逃げ切るには時間がない。追いつかれて不意打ちくらうのは必死。迎撃するならこの地しかない」
迷うトロイ。
「だが、ツワモノ揃いの追っ手を、このメンバーで撃退できるのかも微妙」
へっぽこ揃いのパーティ。
アンチャチャチャクラスの暗殺者が来たらトロイもどうしようもない。
(どうする? ここが死活の分かれ目だ)
迷うトロイだが?
「あのー、オレ、買い物したいんですけどぉ」
タローが発言。
「なにを?(状況を打破できるないかを?)」
唐突な質問への返答だったが――
「いえ、服とか、パンツとかもうそろそろ限界なんですわ」
「パンツ?」
「オレの服ボロボロだけど、みんなはなんで普通に服とか汚れてないの?」
「あぁ、それは魔法の力だ。服の繊維に汚れを弾く魔法繊維が使われている。女は魔力があるから勝手に汚れは落ちていく。匂いも付かない」
「そんなのズルイ」
「でも、男物でも女がちょっと魔力与えればそれでいはずだが?」
「あ」
「そうか、タローの着物は異世界のか」
納得のトロイ。
だが納得したのはトロイだけでなかった。
「それでか。臭いから散々魔力注いだのにまったく綺麗にならない。なぜか? と思っておった」
「どうりで、臭いと。異世界の男は腐った匂いがするのだと思ってました」
「お、お前ら――」
チィルールとリリィーンの台詞にタローの顔、真っ赤。
「はは、分かった。午後は買い物をしよう」
「すみません」
「なに? 買い物? お菓子か!?」
「チィー様、違いますよ。タローのパンツです」
「……パンツか」
残念顔のチィルール。
「いや殿下、別にお菓子も買っていいですよ」
「な、本当か?」
「はい、ただし三百オクエンまでですよ?」
「やったー! ヤッター!」
「私も、私も!」
「ええ、どうぞ」
「やったー!!」
大はしゃぎのチィルールとリリィーン。
(なし崩しに決断させられましたね)ため息まじりのトロイ。
「後二日あります。迎撃準備の時間は充分あります。地元民のレデーットさんにも援助をお願いして万全の体制を……」
タローがトロイの傍で囁いた。
(くくく、君ってヤツは……いいだろう。ここで全てを決めよう。今後のことも含めて君を見せてもらうぞ。くくく……)
決心はついた。
迷いはない。
「わかった。やると決めた以上、ボクの全力を出させてもらおう」
「お願いします」
「くくく、君は少しボクを見くびっているからね」
「な?」
「いいさ、分かってる。そう演じてもきたしね?」
「……」
「だから今回はボクの本気を見せてあげるよ。そのうえでボクと今後どう付き合いたいか考えて欲しい。たぶん君とは永い付き合いになりそうだから。それは敵になるか親友になるかは今、分からないけど」
『くくく』といつも以上にシニカルに笑うトロイ。
未知の残虐性を感じる。
生唾が溢れるタロー。でも、気付かれない様平静を装って飲み込まずに済ませた。
「くくくっ」
実は次の展開、まったく創造してません。どーしよう。




