10.バトル決着 オサーンの涙
<高速コーナー>
今までになかったタイプのコーナーであり、ラストコーナーでもある。
『フハハ――残念だったな、小僧!』
『……』
勝ち誇る馬車馬。
『緩やかな高速カーブ。ボディの差を味わうしかないぜ?』
『……』
馬は答えを返せない。
馬車馬の言う通りなのだ。
テクニックの効かない高速コーナー。
馬体のポテンシャルそのもので勝負するしかない。
身体のデカイ馬車馬が断然有利だ。
『抜くぜ? ゆっくりとな――くくっ』
馬車馬の余裕な皮肉。
だが、まさにその通り。
どっしり構えた馬車馬のボディは、まさに弾丸列車。
重い自重はコーナリングにハンデだが、逆にそれを自在に振り回せる『パワー』がある!
安定とパワーこそが高速コーナーの極めだった。
『怖ぇーなぁ、まったく』
馬、強がる。
が!
馬は……
なんも対策が思い浮かばない。
(こればっかはなぁ)
ウエイト(重量)の軽い馬はコーナーで有利。
だがそれは、曲線のきつい中低速カーブに限ってだ。
逆に高速コーナーではウエイトの軽さが仇となる。
重量とグリップ力のある荷馬車馬は接地力があり、軽量な馬より圧倒的に踏ん張りが効く。
余った踏ん張り分の力を旋回と加速にまわせる。
逆に軽量馬はコーナリング中に『ふあふあ』と浮うきあがるような感じになってしまう。
加速どころではない。旋回するだけで手一杯だ。
『最後の勝負だ! 小僧』
『ちっ(あきらめたくはねェ!)』
ラストコーナーに進入する二馬。
今はまだ馬のほうが一馬身リード。
すこしでも軽量の有利さを生かすため、コーナーの内側を駆ける。
だが――
『ゆっくりだ――抜くといったろ?』
荷馬車馬、外側から追いつき馬と並ぶ。緊迫した勝負中にありえないゆったりとした存在感。それは迫力だ。
そして言葉どおりに、ゆっくりと馬体を前へと進めるのだ。
『くっ!』
意地になった馬、荷馬車馬に合わせて加速するが?
『オイオイ、無茶すんな。コース外へ吹っ飛ぶぜ?』
荷馬車馬の言うとおりだった。
加速にまわした蹄の摩擦力分、旋回力が失われ外側に膨らんでしまう。
加速はやはりできなかった。
じりじりと追い抜かれ、差が開いていく。
馬体のポテンシャルの違いをまざまざと見せ付けられている。
『くそ!(身体が小さいからって、こんな仕打ち――いやだ!)』
折れそうになった心を馬は必死に繋ぎとめた。
そして、再び加速する。
『アオイな小僧。痛い目、見てきな』
馬の無謀な加速。
そして突然、訪れた限界。
グリップ力を失ったテールの蹄がスリップ。
馬体がコース外へ――
『アバヨ……』
『ま、まだだーっ!』
スリップしてコース外へ吹っ飛びそうになった自身のテールを、馬はソレにぶち当てた。
『ドンッダンム!』激しい激突音。
「オサーン!!」タローの絶叫。
滑った馬の身体と、ハタめいていたオッサンが撃突した。
衝撃でオッサンの片手、手綱から外れた。
左腕一本で手綱の握り締めるオッサン。
喰いしばった歯を剥き出しにして踏ん張ってるオッサン。
でも、その瞳に溢れる涙。
オッサン、泣いてた……
大粒の涙が空を切って、キラキラと輝きながら彼方後方へと消えていってた。
『後は、まっすぐ加速するだけだ!』
衝突によるモーメントにより、完全に体勢を整えなおした馬。
馬体はすでにコーナー出口へと向いている。
『まさかオッサンで軌道を変えるとはな。俺自身にぶつかったわけじゃないし、ギリギリ、レギュレーション違反ではないか……負けたよ小僧。お前が勝ちだ』
荷馬車馬は自分を追い越してコーナーを過ぎていった馬のお尻姿にそう語った。
ゴールを抜け、今チェッカーフラッグは振られた。(感じ)
タロー達が跨る馬の勝利で決着がついたのだった。
コングラチェーション!!




