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学者と獣の奇妙な同居生活  作者: 音屋のアッシマー
1/1

哀れな学者と奇妙な出会い

割と使い古された感じの恋愛物?です。

少しシリアス、微グロ注意です。


処女作故に誤字や読みづらい点が多々あると思いますが読んで感想をいただければ幸いです。

「ここは…どこだ?」

目を開けるとそこは見たことのない天井、意識は朦朧としていて思考が上手く働かない

(おれは… よるたに かなと…… そう夜谷奏音)

(俺は何をしてたんだっけ……?)

自分が見たこともない部屋の中で目覚めた夜谷は困惑する

(そうだ、確か 自殺しようとしたんだっけ?

自分の研究結果を奪われて、それだけならともかくクソみたいな責任を押し付けられて、

学者であることを誇りに思ってはいたんだけどなぁ…)

(まぁ二十三のペーペーが出しゃばってたら厄介事回ってくるか…)

夜谷がいままで何をしていたのかまだ覚醒していない頭を使い、思い出していると

(でも俺が死に場所に選んだのは山奥で到底普通の人が入り込むような所じゃ…)

そう考えを張り巡らせようとしたが摂取した毒によりうまく頭が回らない、

そして体もうまく動かせないことに気付いた。


夜谷がそんなことをしていると体を動かす音を察知したのか隣の部屋らしき方向から人の気配がし、

「ガチャリ」とドアが開く音がした、夜谷が驚いて音の鳴る方に振り向くと、

そこには銀髪で青い目をした綺麗な女性が食事の乗ったトレイを持って立っていた。

その女性は夜谷が起きているのを確認したあと、嬉しそうに

「良かった、意識が戻ったんですね!」

と語りかけてきた、

「君がこれを?」

と、うまく動かせない口で夜谷がたどたどしく尋ねる

「そうですけど、あなたは森の中で倒れてたんですよ! 何であんなところにいたんですか! ここは危ないんですよ?」

「知ってるよ、俺は……死にたかったんだよ」

怒ったような諌めるような口調で喋る女性に夜谷はさらりとそう答えた、


しかし夜谷には意識が途切れる前までにあった絶望感はもうなくなっており、

その返答はただそれが過ぎ去った事実であるだけでさほど重要でないように呟くのだった

しかし女性にはそうは聞こえなかったようで女性は不安そうに

「死にたいなんて弱音を吐いてはダメですよ… あなたは人間なんですから」

と言ったあと懇願でもするように

「人間は強くなくちゃいけないんです、いや強くいてください…」

と付け加えた。


そのような言い方に違和感を覚えつつも夜谷は彼女に一言呟いた

「俺は弱い人間だからね… でもまだ疲れてるんだ、もうすこし寝かせてくれないかい?」

そうすると彼女は心配そうな顔をしながら

「まだ毒が抜けてないんですかね? お食事はここに置いておきますので食べれるようになったら食べてくださいね」

「私は隣の部屋にいるので何かありましたらお呼び下さい」

といってトレイを近くのテーブルに置き、部屋を後にした。

(結局、彼女のこと…聞きそびれちゃったなぁ……)

そう思いながらゆっくりと夜谷は目を閉じ夢の世界へと落ちていった。




あれからどれぐらい寝ていたのだろうか、顔に日光の明るさが当たって夜谷は目を覚ました。

さすがに腹が減り食欲が沸いてきたのでテーブルへと手を伸ばし、

そこにあったパンを取ってむくりと起き上がった。

パンをかじりながら辺りを見渡すとこの部屋はいま自分がいるベッドとテーブルそしてタンスとクローゼットくらいしか家具がなく、

壁を見てもドア以外には先ほど顔に射した陽の光の入ってくる窓くらいしか特筆するものは見つけられなかった。

(かなり寝たと思ったけどパンが硬くなってない...彼女が変えてくれたのか?)

(それに起きていた時は窓にはカーテンがかかっていたはずだけどそれも開けてくれたのか)

などと考えながらパンを二つほど平らげ、ごちそうさまと小さく一礼したあと夜谷は立ち上がってみた。

どうやら彼女の介抱のおかげか少し違和感はあるものの不自由はなく体を動かすことができるようには回復しているようだ。


特に部屋を漁る理由もその行為について興味もなかった夜谷は介抱と食事の礼を彼女にしようと声を出そうと思ったが考えてみればお呼びくださいと言われたものの、

彼女の名前を聞きそびれてしまった、いきなり『おい!』などと呼ぶには助けてもらった身としては余りにも無作法すぎるので夜谷はドアをノックして隣の部屋に入った。

隣の部屋に入るとノックの音でこちらに気づいたのか彼女がこちらの方を振り向いた、彼女は朝食でも作っていたのだろうか包丁を片手に持ってキッチンのような場所で立っていた

「何かありましたらわたしが部屋に行きましたのに!」

焦っているような感じで彼女はそう言う


「すまないね…呼ぼうとは思ったんだけど君の名前を聞くのを忘れていてね、朝食でも作って……」

申し訳なさそうに夜谷は答えたが話している途中であるものに気づいた、いや気付いてしまった。

彼女が立っている至って普通の調理場、しかしそこにそぐわないようなものがそこにあった。



《それ》は夜谷に馴染みがあったわけではないが人間として本能的に察してしまった。

切り取られた肌色の物体、先端は五つに枝分かれしていて、もう片方からは微かに赤い液体が滴っている《それ》は自分の体についているものと同じ人間の《腕》であると…

夜谷は驚愕し困惑した、なぜそんなものがここにある? あまつさえ調理場にだ、しかも彼女はそれを調理しているではないか! 文献で人を喰う部族の話は読んだことがあったしかし彼女がそうなのか? いやそんなことはないはずだ! 俺が見間違えた? いやそんなはずもないあれは間違いなく人の腕だ!


何故? 何のために? どうして?


夜谷がパニックになり考えを張り巡らせていると彼女が重々しく口を開いた

「分かってしまいますよね…そうです、これは人間だったもので…」

「どうして!? なんでここにそれがある! 君は何を!?」

驚きのあまり夜谷は食い気味にまくし立てる。

「あなたには信じられないかもしれませんが、私は人ではないんです…」

静かにそして申し訳なさそうに彼女は夜谷へそう伝えた。

「人間じゃ… ない?」


彼女の告白にまたも驚いた夜谷だったがその言葉の真意がつかめず、落ち着きを取り戻して尋ねた。

「そう、わたしは人の形をした化物、人狼と呼ばれる人ならざる獣なんです…」

今にも泣き出してしまいそうな声で、悲しみを背負った目で彼女は打ち明けた。


しかしそれに対する夜谷の返答は予想外ものだった、先程まで冷静さを失い取り乱していた男とは思えないとても落ち着いた声で夜谷は

「…わかった少し考えさせて」

とだけいって黙ってしまった

夜谷にしてみれば一瞬で、彼女にしてみれば一日と同じくらい長い時が経った後


夜谷が口を開き、

「なにか証拠はあるのかい?」

と彼女に聞いた

「では… すこし目を瞑っていてくれませんか?」

「……わかった」

夜谷は言われた通りに目を瞑った

そうすると彼女の方からなにか軽いものを落とすような音が何回かした。

「もう開けていいですよ」

彼女の声を聞き夜谷が目を開けると


そこには彼女の姿はなかった


驚いて目線をそらすと夜谷の視界には

先程まで彼女が着ていた衣服が散乱し、そのちょうど中心の位置に

美しい銀色の毛皮を纏い、澄んでいるが優しい青い目をした犬のような獣

狼が佇んでいた。


「これが…君の本当の姿なのかい?」

夜谷が質問をすると狼、いや彼女は

「いいえ、わたしは人狼です、狼の姿も人の姿も所詮は変身したに過ぎません」

「これが人狼本来の姿」

そういうと彼女の姿はみるみるうちに大きくなりやがて人の形をした狼の姿へと変わった

「これが人狼……」

そう呟くと夜谷はまた黙って考え込んでしまった


「驚きましたか? 怖気付けましたか? あなたを助けたのは人の形をして人を食らう化物です」

「死にに来たとおっしゃっていましたが一度は助かったその命、今なら無下にいたしませんのでここから立ち去りなさい」

そう彼女は夜谷に諭すが夜谷は自分の世界で考えることに没頭しているようでまるで話を聞いていない


「聞いているのですか!? ここから出て行けと言っているのですよ!? 」

彼女は声を大きくし怒鳴るように夜谷に言った


しかしそれはまるで幼子が泣きそうなのを我慢して精一杯の意地でしゃべっているように聞こえた


「聞こえてはいるけど、俺は当分ここから出る気はなくなったよ」

やっと夜谷が口を開いた

「なんでですか! わたしは人を殺す化物なんですよ!?」

「そんな消え入るように言われても説得力に欠けるよ」

少し笑いながら夜谷は続ける


「だって俺を殺す気なら介抱なんてそもそもしないだろうし、殺す機会はもうたくさんあったろ?」

「俺が寝てる間も俺のために準備してくれる化物がどこにいるんだい?」

夜谷は笑顔になっているが少し意地悪そうに

「そこの人の腕だって死んでから随分時間が経っている、あらかた俺と同じ自殺者か遭難者ってとこでしょ?」

「それにきみが人一人をすぐ食べきっちゃうようにも見えないし、少なくとも俺はしばらくの間は食べられずに済むってことだ」

「そうだろう?」


その問いかけに対し彼女は涙目になりながら

「どうして出て行ってくれないの? わたしは化物なのに…」

そう答えるが夜谷は笑って言った

「なんでってそりゃきみに興味がわいたからさ! それに助けてもらったお礼もしてないしね?」

「命の恩人に命を捧げるなんてできて当たり前だろ?」

その答えに彼女は安心したのか人型の狼の姿から人へと変わっていき、そのまま泣き崩れた。

夜谷は彼女を抱きしめ囁く

「それはここにいていいってことだよね?しばらく厄介になるよ、優しい自称化物さん?」

「だめだ、やっぱ名前がわからないと」

「俺は夜谷奏音きみは?」

「ネル、ネル・ラート」

「奏音…逃げないでくれて……ありがとう」

「こっちこそ助けてくれてありがとう、ネル」

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想や改善点など報告していただけると諸手を上げて喜びます!

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