願い ―Whose this wish?―
「止めてください!!」
「そうだ、こんな事は許されない!!」
「ダメですよ~、そんな事したら!!」
「は?何言ってるんだよお前ら。それくらい大丈夫だろ」
「ダメなものはダメっ!!」
「下手したら極刑に処されるぞ」
「大袈裟だな……バレなきゃ良いんだろ」
「えーー!!いけませんよ部長!!そんな僕らの為とはいえ……」
「この俺がする事に意義が有るんだよ。決まってるだろ」
ガラガラガラッ
「じゃあ、行ってくるぜ。今日の夜9時にココ集合な」
「え、ちょっと待っ」
ピシャン
「行っちゃいましたね、部長」
「いやいや、止めるなら今でしょ凪くん!!」
「そうですよ後輩君。何でそこで諦めるんだか」
「いや、俺が止めようとしても無駄ですよ。先輩こそ止められたのでは?」
「まあ、そうなんだけどね……」
「先輩にも思うところがあるのよ」
「はあ……」
ガラガラガラッ
「失礼します。天文部部長の鏡です。伊勢崎先生に用があって参りました」
スタスタ
「ああ、鏡君か。何の用で来たんだい?」
「『屋上』の件です」
「ふむ、そうか。校長先生に許可は?」
「どうやらとてもお忙しいようですね」
「そうか、まあ屋上はトラブルの元と思い込んでいるみたいだしね。あの頑固な校長先生の説得は無理があるな」
「そこで先生、おり言ってご相談が」
「ああーーー!!」
「え?」
「か、鍵が無い!?」
「……」
「くそ、胸ポケットにあったはずなんだかな、落としてしまったのかな。しかしひょっとしたら尻ポケットかも?……いややはり無い」
ガサガサ
「あー、なんてこった。まさか屋上の鍵を、こんなタイミングで無くしてしまうなんて!!最悪だなあ」
スッ
「ということで、鍵探しよろしく」
「……先生、先生が今渡したこれはタダのキーホルダーであって、先ほどたまたま話題に上がってた『屋上』の鍵ではないですよね」
「ん?何か言ったかな?そうそう周囲には常に警戒心を持てよ。これ鉄則な」
「……なんの鉄則ですか?」
「無論、鍵探しのだよ」
「色々言いたいところですが、ありがたいので控えておきます」
「鍵探し、頑張ってこいよ」
ガラガラガラッ
ピシャッ
……
…………
テクテクテク
「(それにしても、夜の学校はこんなにも静かなのか。知らなかったな)」
「凪君か、何を黄昏ているんだい?」
「うわっ、部長!?」
「何をそんなに驚いているんだ。約束の時間だろ?俺以外の誰が来ると思っているんだ」
「え……」
「多分、あの2人は……伊坂と渡辺さんは……まあ、女子だし度胸も無いだろうから、きっと来ないだろう。君も薄々分かっていただろう?」
「ええ、まあ。渡辺さんは昔から真面目でしたしね……伊坂先輩は知りませんが、渡辺さんはそうかもしれないなとは、思ってました」
「お前が来たのは何でだ?」
「来るしかないじゃないですか、男として。ロマン溢れる光景が見れるわけですし。一年前の落とし物ですよ?」
「そうだな……、お前なら分かるだろうと思っていたよ。機材は持ってきたな?……よし、ついてこいよ」
ザッザッザッ
ガチャリ
キイッ
「部長は何ですか?何処かの怪盗の三代目ですか?侵入の手際良すぎませんか?」
「まあ、この日のために何日も前からリハしてたからな」
テクテクテク
「よし、後はこの階段を上がればすぐだな」
ガサッ
「……今、何か音が聞こえませんでしたか?」
「……うむ、俺にも聞こえたような気が」
テクテクテク
「だ、誰か来ますよ!」
「お、おかしいな。今日は警備員のおっさんもいない日の筈なんだが」
「え……じゃあ、誰なんですかあれは!」
「そんなの知らんぞ俺は!」
「や、やばいですよこれは!ひとまずここから逃げましょう!」
「「誰から逃げるって~~?」」
「「ぎゃぁ~~~~~~!」」
「って、伊坂先輩と渡辺さん?」
「ふ、二人ともどうしてここにいるんだい?」
「そんなの、決まっているじゃない。ね、渡辺さん」
「そうですよ!そりゃ先生には怒られたくありませんが、あれが見られるというんですからね!」
「え……」
「俺は二人がそういうものに興味ないのかと……」
「「あるに決まっているじゃない!」」
「「ひえっ」」
「そもそも、初めから何かを決めつけて行動するのはよくないわよ」
「そうですよ!もっときちんとしてくださいよ。ここまで来るのもしんどかったし……」
「そ、そうですか」
「……まあ、これでよかったのかな。もう時間もないし」
「そうですね。行きましょう!屋上に!」
「ちょっと待って、道具は用意してるの?」
「それぐらい、してますよ。部長に頼まれて持ってきたんですよ」
「さすがは凪君だな~と、俺は思ったね。お金持ちは持つ機材が違う」
「や、やめてくださいよ部長!」
「ま、ともかく行くぞ!」
ガチャリ
ギイッ……
「うわ~~、屋上だぁ!」
「渡辺さん、はしゃぎ過ぎよ」
「まあ、テンションは上がりますよね!」
「そんなことよりは機材の準備だろう。凪君、出してくれ」
「はい」
「あ、私も手伝います!」
「おーい、伊坂も手伝ってくれー」
「はいはい、分かりましたよ部長」
ガチャガチャ
カチリ
「よし、シャッタースイッチも大丈夫だな」
「時間はあと、5分ほどですかね」
「すごい、あれが見れるんだ……」
「あれは確か、一年前の影響だったわよね?」
「そうだ。あれを見るためにはどうしても学校の屋上が必要だった」
「位置的には、この町内において唯一の観測可能な地点ですからね」
「あとはあそこに見えるビルも観測可能だが、そこはもうイベント用に占領されているからな」
「人ごみの中では観測しずらいですよね~」
「だから俺が無理やり頼み込んで、屋上のカギを奪取したということだ。屋上にはこだわりあるしな」
「あとは待つだけですね」
「そうだな、凪君」
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥ……
「あ、あれだ!!」
「え?」
「ん?」
「あ!」
「(……なんて綺麗な流星雨なのだろう。無数の光が、次から次へ滑らかな曲線を描いて、落ちてくる。一つ一つのきらめきが実は小さな塵の一粒一粒だなんて、誰が想像できるだろうか。あれらに人々は願いを込めて、希望を託そうとするんだ……)」
「なんて綺麗なんだ」
「綺麗ですね、部長」
「うわ~、家を抜け出した甲斐があったな~!」
「そうだな。凪君はもう写真を撮っているのか」
「勿論!ちゃんと撮ってますよ」
カシャカシャッ
「日本からは決して見れない、あの彗星が見れずにどれだけ悔しい思いをしたことか……あの時、丁度一年前もここからだと見えるかもしれないと、一年生ながら頑張ったものだよ」
「その時僕らはいませんでしたけど、確か失敗したんですよね?」
「ああ、そこからここまでが本当に遠かったし、長かった。そもそも、流星雨が一年後に降るかどうか、当時は分からなかったがな。リベンジは誓っていたよ」
「良かったな部長、流星雨が見れて」
「ああ」
「……」
「……」
「……」
「……」
……………………。
「(来年、またこうして星が見られますように……)」
その願いは、誰のもの。
因みにこのような現象は起こる可能性こそありますが、今までに起こった事例は少なくとも日本ではありません(作者調べ)。完全フィクションです。
語り手を最小限に抑えた為、読みにくい文章にはなっていると思いますが、良ければ感想などお書きください。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました(^ ^)/!




