嘗め女(なめおんな)とアツアツおでん
「そういえば、誤解は解けましたか?」
「ん? なんのだ?」
ということで・・・。
今日も元気に、生徒会長室でお昼のお弁当タイムです。
本日のメニューは、“チキン南蛮弁当”。
食材は、脂身の少ないさっぱりヘルシーな、ムネ肉を使用。
本当はモモ肉の方が、柔らかくて美味しいんだけどね?
でも、
「隆の話では、スーパーではもも肉よりムネムネ肉の方が安い! と聞いているぞ? よって、ムネ肉を使うように!」
と、資金出資者の生徒会長様からのご命令により、あえてのムネ肉なのでございます。
カリッカリに油で揚げた香ばしい香りのするムネ肉を、唐辛子でちょっとピリッ辛で甘酸っぱい南蛮酢にくぐらせて、脂っこさを抑えております。
仕上げに、卵とマヨネーズという高カロリーで一見こってりしていそうなのに、お酢ときゅうりのピクルスのみじん切りで、さっぱり風な味わいとなったタルタルソースを絡ませ、食べやすい味に仕上げました。
このタルタルソース、クセになる味だから、チキン南蛮の下に引いてあるサニーレタスに絡めて食べても、とっても美味しいの!
ちなみに玉ねぎは、レンジで1分ほどチン! すると、辛味が飛んで美味しくなるよ。
香ばしい歯ごたえのお肉と、さっぱり味のタレの組み合わせが、もうヨダレものなんだよね~。
お弁当を作りながらも、今日のお昼、密かに待ち遠しかったもの!
ご飯はおにぎりを希望だったので、俵型で海苔を巻いただけの、シンプルな“塩むすび”で。
その他には、鰹節と醤油のコラボしたお味がたまらなく大好きな生徒会長のために、ピーマンと竹輪とともに炒めた、“ピーマンとちくわのおかか炒め”。
甘酸っぱくてさっぱりしたお味の、“さつまいものレモン煮”。
ごま油の匂いが食欲をそそる、千切りにした人参とエノキで作った、“エノキと人参のゴマ炒め”。
そして・・・。
何を参考にしているのか、(はっきりいって、ちまちました作業はめんどくさくて苦手なんだけど・・・)リクエストのあったチェック柄模様の、デザートのりんご。
それらをこれまたいつものごとく、何やらごちゃごちゃとB級グルメレポーターのようなことを言いながらも、次々と平らげていく生徒会長様。
どうやら生徒会長様は、ご飯を食べながら味の評価を口走るのがクセなのではないか?と、思い始めた今日この頃。
そんな生徒会長様に、私は前回から密かに気になっている質問を、投げかけてみたのですが・・・。
・・・アレ?
会長、特に気にしてない?
いくら小学生といえども、あんなに綺麗な婚約者様に私たち、誤解されたままなんですけど?
といいますか、私、命まで狙われて、とばっちり食っているんですけど?!
前回。
容姿端麗・成績優秀・実家はお金持ちであらせられる、どっかの少女漫画のヒーローのような肩書きを持つ生徒会長様に、なんと! 婚約者なるものがいらっしゃることが発覚!
小学4年生で、年の差は7歳あるんだけど今の時代、そのくらいの年の差はどうってことないよね?
シルクのように白くて、きめ細やかで綺麗なお肌。
艶やかで滑らかな、黒く長い髪。
まるでビー玉のように、大きくて澄んだ綺麗な瞳。
将来は絶世の美女間違いナシ的な、あんなに綺麗な女の子を、まさか忘れるわけ・・・ナイデスヨネ?
と、不安になるほどに、目の前の生徒会長様は、不審そうに首をかしげていらっしゃる。
いかにも、“心当たりは特にない!”といわんばかりのそのすっとぼけたお顔、まさか記憶から抹消していらっしゃるの?
「え? 前回このお部屋にお見えになった、生徒会長の婚約・・・」
「ハア? 婚約・・・・・・。ああ! もしかしてあの、幼女悪魔の事を言っているのか?」
「よ、幼女悪魔・・・」
突然、眉間に思いっきり深いシワを刻み、眉を寄せてさも迷惑そうなお顔をなさっております。
まあ、ある意味珍味を食べさせられそうになったことを、今だ根に持っていらっしゃるようですが・・・。
「まさか、あのガキの戯言を、間に受けているわけじゃないだろうな?」
「と、いいますと?」
「婚約だのなんだの・・・。あれは、向こうの両親が勝手に決めたことだ! しかも、自分の血族の力が弱まったからと、まさかオレ様にあんなチンケな小娘を差し出すとは・・・。馬鹿にしていると、思わないか?」
「へ?」
「そう思うだろう?!」
いつのまにか、私のすぐ目の前に、会長のお顔があるんですけど!
相変わらず、お肌がスベスベなめらかで、とってもお綺麗ですね。
瞳なんて、腹黒いしの性格とは裏腹に、まるで光り輝いているようです。
男なのに、なんでそんなにまつ毛が、バッサバサしているの?!
な、整いすぎたその端正な顔立ちが今、互の息がかかるほどに、すぐ目の前に現れたのでございます。
「え? ちょ、会長! ちか・・・あわわわ・・・!!」
突然のことに驚き、思わず椅子がグラリ・・・と後ろによろめいた。
このまま行けば、頭が床にゴッツンこ・・・そう覚悟した時である。
「?」
「お前は何をしているんだ? そのまま倒れたら、たんこぶどころの騒ぎじゃないぞ!」
気が付けば、呆れ顔した会長様が、倒れかけた椅子を私ごと、しっかりと支えてくれておりました。
それから私の体重を意識しないかのごとく、軽々と椅子を元の位置へと戻されております。
見た目は、あんなに細いのに・・・。
その馬鹿力で、もしかして妖しどもを次々と、配下に納めていらっしゃるのでしょうか?
「あ、ありがとうございます・・・」
「しっかりしろ! 打ち所が悪かったりしたら、どうするんだ!」
「ハイ! 以後気をつけます!」
「よろしい!」
そう言うと、心なしか安堵した顔の生徒会長様は、さっきまでご自分が座っていたはずの椅子を私の前に持ってきたかと思うと、ドスン・・・と乱暴に目の前で腰を下ろされました。
「あの・・・お弁当は・・・」
「? もう食べたぞ? 相変わらず、大変美味だった! いい投資をしたと思っている」
という、たぶんきっとなお褒めのお言葉を賜りました。
「で? なぜ、この位置にお座りに?」
なぜ、このタイミングで私の目の前で、腕組みして座っていらっしゃるのでしょうか?
しかも、何やらとても真剣なお顔をなさっておいでですが・・・。
その真っ直ぐにこちらに向ける視線が痛くて、思わず俯いてしまったじゃないの!
心なしか、顔が熱いんですけど・・・。
それにしても・・・。
さすがは、イケメン!
そのお顔で、今まで一体何人の女どもを、落としてきたのですか?
「お前が、誤解をしているようなのでな?」
「はい? 誤解・・・ですか?」
「ああ。まず、オレには、婚約者なぞおらん! というか、自分の結婚相手くらい、自分で決める! 他人に口出しされるいわれはない!」
「はあ・・・」
「で? 次はお前だが・・・。まさかお前には、将来を誓ったもしくは好きな男がいるのか?」
「ブッ!!」
って・・・。
なんで突然、私の話?
「え? そんなのいるわかないじゃないですか? 私なんて初恋もまだなのに・・・」
「な? そうなのか!」
って、なんでそんなに嬉しそう?
目をキラキラさせながらのそのリアクション、まったくもって意味不明です!
両手握り締めてガッツポーズとか、あなた様は一体、何をお考えなのでしょうか?
「っていうか、興味ないんですよねえ・・・。結婚だの、恋だの・・・」
そんな会長の行動に内心イラっときてしまい、つい本音がポロリとこぼれ出す。
「は?」
「だって・・・。所詮人間は、“見た目が全て!”なんですよ? 私みたいに特に何の変哲もない、地味でなんの取り柄もない普通な女、まずまともな男がつくとは思えません! 最悪、だめんずなんかに捕まって一生を棒に振るくらいなら、一生独身で慎ましやかな人生を送る方が、ずっと幸せだと思うんですよねぇ・・・」
そう言い切ると、流石に少し切なくなってきて、窓の外へと目を向ける。
・・・今日も青空広がる、いいお天気ですね?
「お前、まだ10代なのになんでもう、そんなに人生を悲観しているんだ?」
そういう会長様は、なぜそんなに困ったチャンな顔を、なさっておられるのでしょうか?
私、会長に心配されるようなこと、何か言いましたっけ?
「私の母は、たまたまとっても奇特な父をゲットできたラッキーな女性なのですが、伯母はとても辛い思いをしていて・・・」
そう。
私の母の姉である伯母、律子おばさんは最近49歳になった、マンション住まいの独身女である。
といっても、とある商社に勤めるバリバリのキャリアウーマン、収入ははっきり言ってかなりいい。
見た目は私と同じように、平凡でなんの変哲もない伯母には、男性とのご縁というものが、小さい頃からさっぱりなかった。
あるといえば、おせっかいな親戚やご近所のおばさんが持ってくる、バツのついた男や最悪子持ち、退職間近の嫁が貰えないジジイ予備軍、もしくは嫁という名の介護職員を欲する親付きの頼りない男たち。
そんな男にしか縁のないことに、人生の絶望を感じた伯母は、
「きっと私の唯一の出会いは、昔飼っていた柴犬のタローだけで、人間の男性とは縁が全くないのよ!」
と開き直り、結婚という華やかな世界に希望を持つことなく、一人黙々と生活費を稼いで人生を終える道を選択してしまわれた。
そんな叔母を見て・・・自分の将来を見ているような気がした私は、目覚めたのだ!
今の世の中、昔と違って男に頼らなくても生きていける時代。
私も伯母を見習って、強くたくましく生きていこう! と!
「いや。お前がその伯母さんと同じ道をたどるかどうかなんて、分からないだろう?」
「相手を選び放題、選り取りみどりな会長にはご理解不可能かもしれませんが、私、自分の身はわきまえていますので!」
なんせ私、今のところそういったご縁とやらは、一切ございませんので!
「選び放題・・・なわけでも、ないんだがなあ・・・」
って、なんで会長、そんなに困ったような顔なさるんですか?
まるで雨の日に、ダンボールに入れられた捨て犬が必死で、“拾って! お願い!”って訴えかけているようなそんな可愛い顔、はっきり言って反則なんですけど?!
「本当に、男女の縁というものは、永遠の謎なんだよなあ・・・」
なんて今度は、何やら人生の哲学めいたこと、口にし始めましたけど・・・。
大丈夫ですかぁぁぁ~?
私、何か変なこと言いましたっけ?
と、今までの言動を必死に、頭の中で思い返していると、
「ほら。今まさに、その摩訶不思議・奇々怪々な男女の仲について、行き詰った奴が一人・・・」
突然、会長はよくわからないことをおっしゃったかと思うと、手に持っていた何かを生徒会室の隅にある、小さな給湯室へと投げつけられました。
「そ、そこには・・・」
そう。
給湯室には、生徒会長から直々にお達しのあった“あるもの”の入った鍋が、コンロの上に蓋をして置いてあるのだ。
会長が投げつけたソレは、まさに今給湯室に入っていこうとする影に向かって、一直線に伸びていく。
「ギャ!」
そして、ちょっとお下品な声とともに、その影は大きな音を立てて尻餅をついてその場に倒れたのであります。
「餌を撒けば、必ず来ると思っていたんだ・・・」
その場で床に横たわっているソレに対し、会長は何やら不敵なる笑みを浮かべていらっしゃる・・・って、その笑顔、まさに悪の化身サタン様に匹敵するがごとく、とても怖いです!
よく見れば、会長が投げつけたその白いものは、人型をした紙切れが何十にも連なっている、紐のようなものでありました。
それが、古めかしい着物を着た髪の長い女性をぐるぐる巻きにして、捕らえているのです。
彼女は、何やらシクシクと泣き始めたかと思うと、
「お許し下さい・・・お許し下さい・・・」
何やら必死になって、謝っていらっしゃる?
「あ、あの~そちらの方は、一体・・・」
ハテ?
初めてお目にかかるお方・・・でも、知らないうちにこの部屋に入ってきたということは・・・、この古めかしい格好からして・・・。
「ああ。今回苦情のあった、小池先生のもとに送った“嘗め女”だ」
「え? 嘗め・・・よりも、なぜ小池先生?」
小池先生とは、微生物から大型動物まで生き物をこよなく愛する、超マニアックな生物学教師である。
ボサボサの髪に無精ひげ、肩には常にフケが落ち、アイロンのかかっていないヨレヨレの白衣に便所スリッパという、いかにも研究バカだと言わんばかりの容姿だが、確かまだ30歳を超えていない若い男性なのだ。
まあ若いといっても、女性陣に人気はさっぱりなんだけど。
しかし、教育にはとても熱心な先生だ。
とてもわかりやすい授業で、どんな小さな質問に対しても、懇切丁寧に教えてくださる、いい先生なはずなんだけど。
その小池先生のもとに、なぜ会長子飼いの妖怪様が?!
「主に、女生徒や女教師どもたちからの、依頼なんだ。“小池先生のあの匂い、何とかしてください!”とな」
「ああ~~!」
確かに!
小池先生に近づくと、酸っぱいような生ゴミのような、あと運動部男子の部室のような、変な匂いがするのである。
話に聞くと、研究バカで身の回りのことは一切気にしなく、風呂にもなかなか入らないのだとか。
しかも、部屋も汚く荒れ放題であるらしい。
「なので、“妖怪3大お掃除部隊”なるものを派遣したのだが・・・」
「え? そんな妖怪、いるんですか?」
「ああ。部屋中の汚れを見つけては舐め回す“あかなめ”と、天井の汚れを舐め回す“天井嘗め”、そしてこいつが人の体中を舐め回す“嘗め女”だ」
「え・・・。部屋に天井そして人・・・ですか・・・」
想像しただけで、全身にサブイボ発生しましたけど?
「まあ、そんなに顔を引きつらせるもの仕方あるまい。オレだってこいつらに舐め回されたくないから、家の掃除はいつも念入りにしてもらうように頼んである」
「はあ・・・」
「で、今回この“嘗め女”は、よりにもよってタブーを犯しやがった!」
眉間により一層深いしわを寄せ、苦悶の表情をしてみせる生徒会長様。
「タブー?」
「ああ! 人間との“恋愛”だ!」
「えーーーーーーーーー!!」
それってもしかして・・・。
「じゃ、じゃあ最近、小池先生が休んでいたのは、体調不良ではなく・・・」
「いや、それもあるんだが・・・」
そう言いながら、床に臥せって泣き崩れている嘗め女を、会長がなだめて落ち着かせている間、私は給湯室にあるものを温め直すことに・・・。
・・・・・・15分後。
「さあ、熱々のしみしみで美味しいですよ。これを食べて、落ち着いてくださいね!」
なんとか落ち着いて、椅子に座っている彼女の前に、私は温め直したソレを差し出した。
「まあ、なんていい匂い・・・」
両手を差し出すと、私の手からそれを受け取る。
お祭りの夜店とかによく出ている、丸顔で鼻が低く、額は広くて頬が丸く豊かに張り出した特徴をもつ、女性の仮面=おかめによく似た顔立ちの女性は、涙でグチャグチャになった顔をニコリとほころばせました。
きっと、落ち着いたんだと思います。
ただ一点、気になるのは・・・。
その蛇のように細長い舌を波打たせながら突き出しているの、クセですか?
って、その長い舌で、あの小池先生の全身を舐めまわし・・・。
「・・・・・・」
気持ち悪くなってきたので、それ以上の想像は中止させてもらいます。
「本当に・・・。味がしっかりと染み込んでいて、とっても美味しいわ。この大根も、そして卵に牛すじも・・・。まあ、餅巾着にがんもどきまで・・・」
そう言いながらも、彼女はフーフーと必死に息を吹きかけて冷ましながら、モノすっごい勢いで次々と口の中へと、放り込んでいかれます。
そう。
今回依頼のあったのは、“おでん”。
昆布とかつお節でだしをとり、そこへ薄口醤油・みりん・砂糖・塩にて味を整えました。
さらに、今回の具材は・・・。
丁寧に面取りをし下茹でをしたあとで、ダシ汁をたっぷりと染みこませた、箸を置いたとたんにスーっと割れてしまうほどに、柔らかな大根。
出し汁をたっぷりと吸い込んだ、ツヤツヤ煮卵。
塩をまぶして水気を出し、練り物と一緒に熱湯を回しかけして臭みを取った、食べごたえ満点のこんにゃく。
2~3口で食べられる大きさに切り、こんにゃく同様に臭み処理を施し、噛み締めたとたんにジュワッとダシが染み出る厚揚げ。
油揚げの中にお餅を入れてかんぴょうで口を縛った、噛んだとたんに中から弾け出るダシの味が何とも言えない、餅巾着。
厚揚げや餅巾着同様、噛み締めたとたんにじんわりと染み出るダシ汁の美味しさがたまらない、がんもどき。
歯ごたえ抜群、入れることによって、魚介&肉の最強出汁を作り出す立役者、牛すじ。
おでんの味がしっかりと確認できる、糸こんにゃく。
牛スジ同様に、いいお出汁を作り出してくれる、ウインナー。
出し汁をたっぷりと吸い込んだ、ホクホクで美味しい、じゃがいも。
これら10種類を土鍋いっぱいに入れて、用意させてもらっていたのだが・・・。
一人分にしては十分すぎるほどの量を、目の前の少しふくよかなその女性は、綺麗さっぱり汁まで飲んで間食されてしまわれるとは!
妖怪の胃袋って、一体どうなっているの?
大好物をたらふく食べ、その膨れ上がったお腹をさすって、幸せそうに微笑んでいる嘗め女。
そんな彼女に向かって、
「で? 小池先生は今、どうしているんだ?」
と、生徒会長が訪ねたとたん、嘗め女はまたもや苦しそうに顔を歪ませ、ポロポロと大粒の涙をこぼし始めたのです。
「泣いている場合ではないぞ? オレは、どうしたのかと聞いているんだ。手遅れになってからでは、遅いんだぞ?」
って、なんでそんな物騒なことを?
すると・・・。
「はい、今は・・・近くの病院・・・で休んで・・・おられます・・・」
「え? 病院? どうして?」
どういうこと?
ということで、話を聞くと・・・。
先生の体を誠心誠意を込めて、一生懸命すみずみまで汚れを舐め取り、きれいにしていく嘗め女。
そんな彼女の献身的な態度に、すっかり心ほだされた女性経験皆無な小池先生。
「君が僕の体をくまなく嘗め回すその感触は、今までに感じたこともないくらいに、気持ちがいいんだ。もう君無しでは、ボクは生きてはいられないくらいだよ! 一生、僕のそばにいて舐め回してくれ!」
すっかり、嘗め女の虜になった小池先生。
そして。
今まで、気味悪がれ疎まれ卑下され、下げずまれた上に誰にも必要とされることのなかった、嘗め女。
プロポーズにも似たその一言で、すっかり舞い上がってしまった。
しかし。
二人は、種族の異なる、人間と妖怪。
生きる時間も異なれば、生活習慣など全てが異なる、本来なら決して交わることのないふたり。
それ以前に、妖怪には人間とは結ばれてはいけないという、厳しい掟があるのだとか。
思い悩んだ結果。
恋愛初心者マークの二人は、愛の逃避行を果たしたのである。
だが・・・。
「嘗め女に嘗められ続けると、その相手は精気までも吸い取られて、だんだん弱体化していくんだよ」
「え・・・」
そう。
毎日連日、愛しの小池先生に求められるがまま、嘗め女が小池先生の体を舐めまくった結果。
小池先生は、見るも無残なまるで干からびたミイラのようになり、動かなくなってしまったのだという。
偶然にも、先生の行動を不審に思った逃亡先の宿泊ホテルの管理人が、様子を見に部屋に入って先生を発見。
すぐさま、救急車で運ばれ、なんとか一命を取り留めたのだという。
「せっかく、私を必要としてくれる殿方に、出会えたというのに・・・」
悲しみに暮れ、ただフラフラとさまよっているところへ、大好物のおでんの匂いを発見!
そして、今に至るのだという。
「力の強いお前の作った料理は、ただでさえ美味しい上に、妖しを呼び寄せる力を持つ、強力な餌だからな!」
「そ・・・ソウナンデスカ?」
だからなんですか?
何故か私までもが、5・6時間目をエスケープして、嘗め女さんと長いお話し合いをすることになったのは・・・。
その結果。
嘗め女さんには、小池先生を諦めてもらい、生徒会長の家に戻ってもらうことに。
「愛する、あの人のためですものね・・・」
そういって、寂しそうに微笑む嘗め女さん。
部屋を去っていく後ろ姿に、思いっきり哀愁が漂っています。
「頑張ってください! またいつかチャンスは巡ってきますよ!」
なんて、初恋もまだの恋愛未経験の私が言ったところで、何もならないと思いますが・・・。
「ありがとう。お互い、強く生きていきましょうね」
彼女は振り返ると、優しい笑顔を私に向けて、そうおっしゃってくださいました。
私たち、お互い独身女性として、いい交友関係が築けそうです!
「仲間がいるって、いいですね!」
「はあ?」
「もしかして私にも、チャンスが来るのかなあ・・・。嘗め女さんみたいに・・・」
私みたいに、異性からは目に留めてももらえない、地味で何もかも平凡な女でも、必要としてくれる男性が、いつの日か現れてくれるのだろうか?
そんな思いを馳せていた、そのときである。
「それは、どういう意味なんだ?」
「え?」
って・・・。
怖! 怖いんですけど?
なんで会長、そんなに唸るような低い重低音で、まるで犯人問い詰める刑事ドラマの検事さんのごとく、睨みつけながら聞いてくるんですか?
相変わらずの意味不明なその態度に、迷惑を被りまくりな私。
そんな私に、
「第一だなあ~・・・」
生徒会長様は突然、ビシリ! と人差し指を私めに向かって突き出すと、
「お前は、オレとだけ縁が出来ていれば、それでいいんだよ!」
と、すっごく真面目なお顔で、言い放ったのでございます。
え?
ナニソレ・・・。
・・・・今日も、意味がわかりません!
こうして私は会長への謎を深めつつ、一日を終えたのでございます。
嘗め女
作中にも記載してあると通り、男性の体を舐め回すのが好きな妖怪・・・というか、変わった性癖の女性のことらしいです。
妖怪になってしまったのは、謎なんですが・・・。
ってこの人、どうやって妖怪の仲間入りをしちゃったんでしょうね?
その舌はまるで猫の舌のようにざらざらとした感触らしく、大概の男性が気味悪がったらしいです。
まあ、マニアックな性癖の男性でないと、受け入れてもらえないですよね? 普通・・・。
よって、本来は無害な妖怪らしいのですが。
いろいろ調べていくと、なんでも体を舐めながら精気を吸い取っていくという、パターンもあり!(妖怪になってからなのかな?)らしいです。
よって、今回のお話の内容に、加えさせてもらいました。
好物は、同じ嘗め系統の“あかなめ”の好物を参考にしました。
・・・・・・美味しいおでんを作って、嘗め女さんの胃袋をわしづかみにしちゃいましょう!