大家さんは性格が悪い
「だからなケンタ、母ちゃんのあの痩せ方はあのばあちゃんに関係していると思うのだよ」
「そんなこと言われてもな。姉ちゃんを呼んでみようか。オカルトファンなのだよ。中二だし」
「もう大人は相手をしてくれないし、お願いしようよ」
「だけど美少女だからな、ショウは問題がないけれどリュウが変な気を起こしても困るし」
「いい加減にしろ、俺は年上に興味はない」
とにかくケンタの姉ちゃんの美咲さんは美少女だった。それはわかるよ。しかしケンタのシスコンは筋金いりだな。
「ここは確かに賃貸だけれど、所有者はいるわけじゃない。連絡はしたの」
「いや、母ちゃんが挨拶に行こうとしたのだけれど、すべて不動産屋に任せてあるということで断られたとか言っていた」
「ますます怪しいじゃないの。不動産屋に乗り込もう」
しょぼい不動産屋だったな。
「借りている物件について聞きたいことがあるのですが。中央町一丁目の」
「あの物件ですか。出たんですか」
この男はバカだな。自分からばらしているでないか。
「とにかくこの子のお母さんの体調が悪いので前に住んでいた人のお話が聞きたいのですよ」
「それはこの家の持ち主だが、家賃は破格に安いではないですか」
「そんなこと関係ありません。だいいちこういうことは説明する義務があるのではないですか。あーあこういうことはどこに訴えればいいのかな」
「やめてくれよ。わかった、大家さんの住所と電話番号を教えるから」
「それじゃだめなのよ。本人が会おうとしないのだから。これから行くからアポイントを取ってください」
「あの奥さんは気難しいのだよ」
「そうですか。じゃあ交番にでも相談に行こうかな」
「わかった、わかりましたよ。今から連絡するから」
美咲さんは美少女だけでなく、頭もいいのだな。ちょっとグッときた。
驚いたことに大家さんは同じ市内に住んでいた。何でわざわざ越す必要があったのか。
「失礼します。少しお話を聞きたいのですが」
「何なのよ、不動産屋から電話があったから待っていたれど、ガキばかりじゃない」
杖を付きながら出てきた大家さんは美人だしスリムだった。しかし最近の大人はまともに挨拶もできないのかよ。
「今住んでいる人に色々問題があるので、住んでいたあなたにお話を聞きたいのですよ」
「何もないわよ。出て行かないでよね。住宅ローンがあるのだから」
「本当のことを話して頂けないと困るのです。 この子のお母さんがとても具合が悪くって。あの白髪のおばあさんとかは見ませんでしたか」
「見ないわよそんなもの。何だかなれなれしい老夫婦はいたけどね。なに、懇意にしてったて。得体のしれない人を家に上げたりするからそんなことになるのよ」
ちょっと言い過ぎなんじゃないか。
「あったことを話して頂ければいいのです。判断はこちらでしますから」
「ガキの相手何てしてられないわよ。帰って」
「この子のお父さんは今出張中ですが、連絡を取ることもできるのですよ。別にすぐ越してもいいし」
「わかったわよ。親に言わないわよね。春に越したのだけれど、何だか雰囲気が悪くてね。私の体調も悪くなったのだけれど。膝が痛くてね、医者にかかっても原因がわからないのよ。高齢者か肥満の人しかありえないと言うのね」
「それはこの子のお母さんと同じです」
「それでパートにも行けなくなって、住宅ローンもきつくてね。主人が大人しい人だったのだけれど急に乱暴になって。最後には包丁を振り回すようになって。それでもうだめだと思って越したのよ」
よくもまあそれだけのことがあって説明もしないで人に貸すよな。
「最悪の性格だったな」
確かに漆原さんのいうとうりだ。
「住宅ローンという言葉を何回聞いたかわからないよ」
「とりあえずお母さんは寝込んでいるわけではないから、しばらく様子をみよう」