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戦争の狂気  作者: 流太郎
2/2

後編

悪夢から目が覚めた


悪魔の手から逃れられたのはまさに奇跡と言っていいだろう


悪魔の幻影は一生男にまとわりつくだろう

幻影は決して消える事はない。


供に戦い

供に生き抜いた

者達の大半は

幻影によって殺された

人間の尊厳など

全く無い


人として扱われる事は決してない。


男はまさに

悪魔の所業と呼べる

行為の中核にいた


戦争の末期


1945年6月


男は日本軍の捕虜となった


そして地獄と呼べる

日々が始まった


男を待ち受けていた

現実は想像を絶する

ものだった


現実を受け止める事ができずに精神が破壊される者も大勢いた


男は想像を絶する地獄の中で必死に耐えた


愛する者との誓い約束を守るために


だが悪魔の所業によって人々は次々に減っていく


希に戻ってくる

者もいたが

それは幸運とは無縁のものだった


地獄が長引くだけ

ただそれだけだった


男は不運にも数回に渡る奇跡の生還を果たす

男は自らを呪った


『死』がこの地獄から抜け出す為の

唯一の救いであった


だがその救いの手は

指し伸ばされる事は

無かった



そして戦争が終結し

男は悪魔の所業から

解き放たれた


だが悪魔はその命が

尽きるまで付け狙う


たった数ヵ月間の

出来事なのだが


人間がヒトであると

言う事を忘れさせる

には十分すぎるほどの時間であった


男は帰りの飛行機の

中で眠りについた



男は客室乗務員に起こされて目が覚めた


『カエザフ・ルコニフさまでございますね?飛行機が着陸いたしましたよ』


『あぁ、すまない

ありがとう』


男は愛する人に一目

会えてもう思い残す

事は無かった


昔の思いでの地


思いでの場所で


男は生涯の幕を閉じた

『これで悪夢から

解放される…』


静寂な夜の闇の中で


銃声の音がこだました


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