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月の光を纏う者  作者: 猫崎 歩
第四部
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第45話 傷付け合う者達

 かつて、ベクタの諜報員として暗躍していたゲイルは、戦場で戦った事が無かった。

 人を殺す為の作戦に携わった事は幾度もあったが、直接手を下す事は無かった。いつも安全な場所から事の流れを把握し、人を操る事がゲイルの仕事であった。

 つまり、ゲイルは自らの命を危険に晒した戦いをした事が無く、こうしてオルレイを迎え撃つ為、銃を手に木立に隠れている間も震えが止まる事は無かった。

(落ち着け。木立から姿を現しざまに一発、狙いは、コンマ5秒で付けられる。簡単な事だ)

 訓練での射撃の腕には自信がある。しかし、頭は冷静でいられたが、体の震えは言う事を聞いてくれなかった。

 ざさっ、ざさっ。

 草木を掻き分ける音が近づく。ゲイルは懐の手鏡を木立から覗かせ、相手の姿を確かめた。

 周りを警戒する様子も見せず、オルレイがやって来た。手には連射式のハンドガンが握られている。

 オルレイが、かつての同僚であるという事に覚悟を鈍らせるが、だからと言ってゲイルには手加減をするだけの力量的な余裕は無い。オルレイを殺さなくては自分が殺され、レナはエベネゼルの、いや、ベクタの手に落ちる。

 呼吸を息を静め、高鳴る心拍と同調させるように、タイミングを計る。

 素早く半歩を踏み出し、隠れていた木立から身を乗り出すゲイル。タイミングは完璧で、二人を遮る樹木もなく、オルレイはゲイルの存在に気付いていない。

 ぱむっ

 軽い破裂音と共に発射された銃弾は、狙い違わずオルレイの側頭部に飛び込み、頭蓋の中で跳ね回った。オルレイは横に突き飛ばされるような形で倒れた。

「・・・・・」

 狙い通りとはいえ、あまりの呆気なさに罪悪感しか感じられなかった。

 諜報員だった頃の自分にとって人を殺すという事は、書類にサインや指示を書く事によって行われた。そうやって何人もの人間の殺害を指示してきたというのに、大した罪の意識を感じた事は無かった。

 だから、こうして直接手を下した時だけ罪悪感を感じる身勝手な自分に嫌悪を抱く。

 書類にサインをする事も、銃の引き金を引く事も、同じ罪だというのに。

 しかし、今はそんな事を考えている時では無かった。すぐにレナと別れた場所へ戻ろうと、後を振り向いたゲイルの背中に

 オルレイの放った銃弾が打ち込まれた。


 気を失っていたらしい。

 うつ伏せで倒れたゲイルの横に、オルレイが立っていた。

 頭から血を流しながら。

 死んでいない事を示すように、オルレイが平然と言葉を発する。

「あの魔族との契約でな。少しくらいでは死なない体にしてもらったのさ」

 確かにゲイルの銃弾は、オルレイの頭部を打ち抜いていた。しかし、今は血の跡しか残っておらず、どういう訳か傷口は完全に塞がっていた。

「痛かったぞ」

 そう言うと、オルレイは倒れ伏すゲイルの足を打ち抜いた。

「ぎッ・・・あぁっ!!!」

 脳髄まで突き抜けた痛みに思わず声を漏らすゲイル。やや遅れて足だけではなく腹部も撃たれている事に気付く。最初に背中から撃たれた時の傷だった。

「女はどこだ?」

「は・・・軽々しく、秘密を喋るワケないだろ・・・

 俺達は何の仕事をしてると思ってんだ?」

 ゲイルは、自嘲気味の、弱々しい笑みで答える。

「だろうな」

 そう答えると分かっていたように、オルレイの反応は淡々としたものだった。

 ゲイルから情報を聞き出す事を早々に諦め、オルレイは銃口をゲイルの額に向ける。


 ゴシャッ

 鈍い音と共に、オルレイの体が揺れて、崩れ落ちた。

 その後にあった姿を見て、ゲイルは目を疑った。オルレイの背後には、太い木の枝を手にしたレナが立っていた。それでオルレイの後頭部を殴りつけたのだ。

「ゲイルさんっ!!」

 木の枝を放り投げるとレナはゲイルの傷口を押さえつけ、そのまま治療呪文の詠唱を始めた。

「ばかやろっ・・隠れてろって言っただろう!」

「でも、銃声と一緒にゲイルさんの声が聞こえたから・・・」

 崩れ落ちていたオルレイが、起き上がろうと身をよじった。

「早く、逃げろ、こいつも普通じゃねぇ、ザードの所へ戻れ!!」

「でも・・・・!!」

 ゲイルは自分の血で染まったレナの両手を掴み、振りほどく。その後で、苦悶と怒りの表情を張り付けたオルレイがゆっくりと立ち上がった。

「この、女っ!!」

 驚いて後を振り向くレナ。オルレイの手がレナの髪を掴んだ。

「いや、ぁあっ!!」

 ゲイルは地面に落ちた銃を拾い上げ、レナに掴みかかるオルレイの足を至近距離から撃ち抜く。連射された銃弾は彼の膝を砕き、再び背中から地面に倒れる。

「この野郎ォ!!」

 ゲイルは仰向けに倒れたオルレイに馬乗りになると、叫びながら急所という急所に銃弾を打ち込み始めた。弾丸が打ち込まれる度、オルレイの体はビクンと跳ね、ゲイルの顔に返り血が吹き付ける。

 その凄惨な光景をレナは声も出せずに見つめていたが、震える足に鞭打ち立ち上がる。

「ゲイルさん!!もうやめて!!」

 レナはゲイルの背中から、その手に握られていた銃を押さえつける。



「もう、この人は・・・・」

 レナの泣き声で我に返り、パニックで過呼吸に陥りかけていたゲイルは、自分が跨っている死体に目を落とす。

 流石に、ここまでやれば。

 そう思うと、ゲイルの銃を持から腕の力が抜けた。同時にレナの手も、ゲイルの身体から離れる。


 ビクンとオルレイの体が痙攣し、真っ赤に染まった手がレナの腕を掴んだ。

「!!!」

 驚き以上に、恐怖が勝った。レナは竦みあがり、動く事が出来ない。

 ゲイルは反射的にオルレイの口へ銃口を押し込んだ。

 ばじゃあっ!!

 一際大きな血潮が木々に飛び散った。

 しかし、上顎から上を失ったオルレイは動き続けていた。見れば、飛び散った血や肉片がミミズのようにのたうち、次々とオルレイの体に寄り集まり、傷口を埋めてゆく。生理的な嫌悪を感じ、レナは目をそむける

「本気で・・・化け物になっちまったか・・・」

 散らばる頭蓋骨を肉のミミズ達が頭部へ運び、筋肉が絡み合うように再生してゆく。皮の剥がれたオルレイの表情が笑って見えたのは、気のせいではなかったであろう。

「レナちゃん、早く逃げて。何とか時間稼ぐから・・・」

 木に身を預けながら起き上がるゲイル。レナの治療の術で、痛みだけは一時的に消えていた。

「でも・・・ゲイルさんは・・・!」

「大丈夫、きっと、ザードが助けに来てくれるから。

 悪いけど、俺じゃレナちゃんを守れそうにないから、一人で行って欲しい」

「でも、その怪我じゃ、・・・嫌です、私一人だけでにげるなんて!」

 頑として譲らないレナに、ゲイルは嬉しそうに笑いかける。

「俺はね、レナちゃん。

 別に目的も無くブラブラ旅してるワケじゃないんだ」

 唐突に、ゲイルがそんな事を話し始めた。

「俺は戦争で、家族も恋人も、何もかもを亡くしてるんだ。遠の昔に生きる意味も、目的も無くなっちゃってな。だからもう、生きてる意味ねーなー、って思ってる」

 ゲイルが話している間にも、頭を半分ほどまで再生させたオルレイが立ち上がろうとしていた。しかし、まだ身体の自由が利かないのかその仕草はままならない。

「惰性で生きてるんだ。俺は。だから早く終わらねぇかなっていつも思いながら、ザードと危ない橋ばかり渡ってるんだけど・・・

 まぁ、ココなら悪くないかなって・・・」

「悪くないって・・・何が・・・?」

 ゲイルの言っている意味が分からない、分りたくないと思いながらも、彼女はその言葉の意味を問いかける。

「俺の旅は・・・そうだな、スカした言い方をすれば死に場所探しなんだ。

 だから、レナちゃんを助ける為なら・・・この死に場所はそんなに悪くないんだ」

 レナに向けたゲイルの笑みは、その場にあまりにも場違いなほど、優しい笑みだった。 

それは自分を犠牲に守る者へ向けた最後の笑顔。

「・・・ッ!」

 レナは息が詰まった感覚に襲われながら数歩あとずさり、後を振り向き全力で走り出した。もう、自分が何をするべきか分からなかったが、ゲイルの思いをふいには出来なかった。あんな顔をされては、彼の"邪魔"なんて出来る筈が無かった。

 走りながら、レナは声を殺して泣いた。


 カチン。

 ゲイルは、再びオルレイの頭蓋を吹き飛ばそうと引き金を引いたが、銃は軽く揺れただけで弾丸は出なかった。

 憮然とした表情で銃を投げ捨て、ゲイルはポケットに仕舞った小さなナイフを取り出した。

「カッコつけちまったなぁ。悪いけど最低限俺と相打ちにはなってもらうぜ」

 歩み寄る血まみれの死体に、ゲイルは苦笑混じりにそう言った。



 ザードの耳には何も聞こえず、全身には何の感覚も無く、五感の殆どを失ったかのような虚ろな感覚だった。

( なんだ、これは・・・ )

 唯一残された五感、視覚に映るのは、必死の形相で大鎌を振り上げ、ザードに飛びかかる魔族の姿。その映像には色が無く、スローモーションのようにゆっくりに見えた。

 ザードの右手は、振り下ろされた大鎌を素手で掴んだ。手の平が深く裂けたが、ザードは痛みを感じない。驚いた表情を浮かべる魔族はザードに大鎌を引かれ、姿勢を崩す。引き寄せられた魔族の腕が、"オブスキュア"によって斬り飛ばされた。

 魔族が上げる絶叫は、ザードの耳には届かない。

( 夢か、これは? )

 魔族がザードの目の前から飛び退いた。

( こいつは・・・魔族のデミルだ・・・。確か、まだ倒して無かったよな・・・ )

 ザードは飛び退くデミルへ追いすがるように追撃をかける。

( 何でこいつとやり合ってるんだっけ・・・? )

 逃げ切れないと悟ったデミルは身をひるがえし、ザードを迎かえ撃つ。

( 確か、護衛の仕事を引き受けて、それで・・・ )

 不意に脳裏で、ザードが唯一信頼を置き一緒に旅をしている男と、ザードが心を揺さぶられた優しすぎる少女の顔がフラッシュバックした。

「!!」

 ザードの世界に色が戻る。



「おぁああああああああ!!!」

「!!?」

 狂ったような叫び声に視線を上げると、片腕を失ったデミルが、残った腕で大鎌を担ぎ、飛びかかって来た。それはザードにとって夢の続きを見ているような感覚だった。

 痺れるような感覚を感じ、手のひらに視線を落とすと、大鎌を掴んだ時の傷が口を開けていた。

 違う、夢じゃない!

 思うよりも早く、体が動いていた。

 デミルの大鎌を受け止めるつもりで、ザードは"オブスキュア"を振るった。その時、ザードの左手に異様な違和感が生まれた。

 ザードの手に宿る違和感は加速的に膨大な力へと膨らみ、"オブスキュア"を介してデミルの刃とぶつかった。その力は巨大で肉厚な大鎌を砕き、デミルの右肩から脇腹までを深く切り裂いた。

 再び上がるデミルの叫びは、既に人間の声では無く、金属が擦れ合う様なキィキィとした雑音となってザードの耳を打った。

 異様な力の正体はすぐに分った。"オブスキュア"に、見覚えのある色をした石が収まっている。ザードに気を失う直前の記憶が戻った。

 "ヘヴンガレッド"で、"オブスキュア"の力を増幅させているのだ。ザードがそれに気付いた途端、剣に宿った膨大な力が暴れ出した。

「ぐっ!?」

 剣を握る左手から、"何か"がザードの中へ這入り込んで来た。その"何か"は、ザードの頭の中へ滑り込み、言葉という手段を使わず彼の脳へ何者かの意思を送り込む。

 それは、この世における、あらゆる種の破壊衝動。力を持つ者が得られる快感。

 それを、ザードの頭の中に幾度も刻み付けた。

「ぁあああっ!」

 再び意識が闇に落ちかけ、ザードは血まみれの右手で自分の額を掴んだ。誰かに頭の中をグチャグチャに掻き回されているようだった。自分以外の意思がザードの中に入り込もうとしている。

 動きを鈍らせたザードに、デミルが襲い掛かる。

 片腕を無くし、体を深く切り裂かれ、血の代わりに黒い霧を噴き出しながら、怒り狂ったように叫ぶ。

「致命傷の筈だ!、

 はらわたを抉った筈だ!!

 人間の分際で、

 どうして生きていられる!!?」

 頭を抱えうずくまるザードは、デミルの人外の力を宿した拳によって地面に叩きつけられた。低い地響きと共に砂煙が舞い上がる。頭が破裂しても不思議ではない、高い建物から頭から飛び降りたかのような衝撃だった。

「ぁあぐ・・・」

 デミルは弱々しく呻くザードの首を掴むと、その体を吊るし上げ、首を握り潰すかのような力で締め付けた。

 それは、あまりにも軽率な行動だった。

 ぞんっ

 デミルの右脇腹を"オブスキュア"が貫いた。吊るし上げられたザードが、もとい、ザードに宿った"オブスキュア"の意志が、そうさせた。突き立てた刃を左に振り抜き、デミルの体は上下に両断される。驚愕の表情が張り付いたデミルの上半身は、ごろり、と地面を転がった。


「・・・余計な・・・」

 デミルの腕から開放され、地面に這いつくばったザードが呻くように言う。

「余計な事をするなぁっ!!!」

 ガヒィインッ、と、ザードは"オブスキュア"の刀身を地面に叩き付けた。

「これはっ、俺の、体だっ!! どんな時でも、オマエに貸してやるつもりは無いッ!!」

 ザードは混乱した頭で、そう叫んだ。意識を取り戻してから、理解の範疇を超えた事ばかりが起きている。しかし、左手からザードの中に滑り込んできた"何か"の正体は、分かったような気がした。

 それは、"ヘヴンガレッド"の力で意志を持った自分の愛剣。それが、ザードの体を支配しようとしている。恐らく、彼が気を失っていた間にデミルと戦っていたのは、ザードの体を支配した"オブスキュア"だったのだ。ザードには、それが分った。

 "オブスキュア"の支配を否定した途端、頭に入り込んでいた異質の存在が消え失せた。左手の"オブスキュア"には、膨大な力が安定して宿っている。

 体の自由を取り戻したザードがデミルの姿を探すと、うつ伏せに倒れていた上半身だけのデミルが、ふわり、と宙に浮かび上がる所だった。全身の輪郭を幻のように霞ませ、激しく息をしていた。魔族としての力を激しく消耗し、"こちら側"の世界で人間の姿を保つ事が困難になっているのだ。

「許さんぞ、・・・ザード=ウオルサム・・・」

 憎悪のこもった言葉を投げかけるデミルに、

「あぁ・・・?」

 ザードは、益々光を増した獰猛な視線を向ける。デミルは悔しそうに唸ると、突然身をひるがえす。

「今度会った時は、必ず殺す!!!」

 そう宣言すると、上半身だけの体は森の中へと飛び去った。

「逃がす、かッ!!」

 オブスキュアを腰だめに構え、魔力を込める。魔導を扱えないザードの唯一の遠距離攻撃。魔法剣"オブスキュア"を振るう事によって生まれる、すべてを引き裂く一陣の紅い突風。

 いつものように目分量の魔力をオブスキュアに叩き込み、剣を振るった。

 しかしその力は、"ヘヴンガレッド"によってザードの想像をはるかに上回る力に増幅され、開放された。

 ザードの前方数十メートルの空間が、真横に両断されていた。全て同時に、森の中の木々は大人の頭ほどの高さで切断され、一斉に同じ方向へ倒れ込む。一瞬にしてザードの目の前から森が消えた。残るのは、切り株と呼ぶには長過ぎる、人の背丈ほどの無数の幹。

 ザードの斬撃は森の木々だけでなく、逃走するデミルの背を捉えていた。木々と共に両断され、デミルの体は黒く染まり、灰になって四散した。ザードの瞳がそれを見届けた途端、デミルだったモノは、倒れた木々の下敷きになり、風に舞って消えた。


「う・・・」

 左手に握られた"オブスキュア"を見て、ザードは絶句する。

 とんでもない力を手にしてしまった。

 自分でやった事とはいえ、ザードはそのでたらめな力に戦慄を覚える。そして、その力を制御出来ている自分に驚き、思わず口元が笑みに歪む。

 はっ、と気付き、ザードは慌てて自分の怪我の確認をする。大量の血で汚れていたが、何処も怪我をしていなかった。デミルに殴り飛ばされた時は、地面に叩きつけられ、全身がバラバラになったかのような衝撃を受けた。デミルの大鎌を素手で止めた時、確かに右の手のひらは大きく裂けた。

 気を失う前の事を思い出す。ザードはデミルに脇腹を斬り裂かれていた。自分でも死を覚悟した致命傷だった筈だ。しかし、服が破れ血で汚れてはいたが、脇腹に傷口は無かった。

「まさか、これもコイツのお陰か・・・?」

 ザードは、今も次々と体に増幅した魔力を送り込んでくる"オブスキュア"を、その柄に収まる"ヘヴンガレッド"を見つめた。"ヘヴンガレッド"は、ザードの体の魔力循環に取り込まれており、意識せずとも、消耗した魔力や体力、肉体の回復を急速に促していた。

「なんて力だ・・・無茶苦茶だ・・・」

 暫くの間、ザードは自分と同化した異質な力の感覚を確かめる。

 それは、とてつもなく強大な力だった。


「・・・

 この力があれば・・・」

 一言だけ、感情の無い呟きを漏らす。

 力に魅せられ、取り込まれそうになる。

 しかし。

「!!

 そうだ、レナに、ゲイルは・・・!?」

 先に逃がした二人の仲間の事を思い出す。

 目を覚ましてから混乱していたとはいえ、ザードは大切な二人の仲間の事を忘れていた。

「クソッ!」

 傷が跡形も無く消え失せた右の手のひらで自分の頬を叩いた。

 ザードは切り開かれた森の中を駆け出す。

 晴れ渡っていた空はいつの間にか灰色の重い雲に覆われ、今にも落ちて来そうだった。

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