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月の光を纏う者  作者: 猫崎 歩
第二部
20/79

第19話 戦場の顔

 深夜の船内に響いた突然の轟音。

  大勢の乗船客が甲板へ様子を見に来ており、船に突き刺さった巨大な鎖と、レイチェルの放った明りに照らされる軍艦を見て騒然としていた。

  ドシュゥ

  軍艦の船主が白い煙を噴き出した。

  ヒュルヒュルと空気を裂く音が近づいて来たと思ったら、エアニス達の頭上を低い唸り声を上げて巨大な鎖が横切って行った。チャイムが身を竦ませる。

  ずがじゃあああっっっ!!

  鎖は轟音を上げてエアニス達から離れた場所に落ちた。鎖の先端には巨大な鉤爪が繋がっており、それが甲板を抉り船体のフレームを掴む。鎖の先は、1隻の戦艦の砲座に繋がっていた。相手の船の動きを止めるアンカー・フックだ。

  それに驚いた乗客達は一斉にパニックに陥り、甲板は一気に騒がしくなった。船員達が乗客に船内に戻るようにと声を張り上げているが、誰も聞いてはいない。


「さて、どうするかは、お前に任せた方がいいかな?」

  エアニスは周りの騒ぎを全く気にする素振りも見せず、トキに言う。

  丸投げですか? と、トキはわざとらしく肩をすくめた。トキは眼鏡に中指を当て、

「じきに彼等はこの船に直接乗り込んで来ますね。レイチェルさんの身柄と"石"が目的なら、いきなり船を撃沈したりするつもりはないでしょうし。

  となると・・・」

  トキは明りに照らされた戦艦を見る。どうやら中型の戦艦3隻でこの船を囲んでいるようだ。

「あのタイプの船なら乗員は20名程。どれだけ兵隊を乗せているかは分かりませんが、1隻に乗り移って船を乗っ取る事は容易かと思います」

「簡単に言うねぇ。

  でも、乗っ取ったたとしても、残りの3隻から逃げ切れるか?」

「他の船は乗っ取った船の砲で沈めましょう。逃げるよりは簡単でしょう」


  ドガァアアアン!!

  鼓膜が痛む程の爆音を上げて船尾が爆発し、船が激しく揺さぶられた。一瞬遅れて熱い熱風がエアニス達に届く。

  砲撃の音は無かった。爆発したのは魚雷か、移動式の機雷だろう。船底に穴があいてしまっただろうが、船体がアンカーフックで捕らえられている以上沈没する事は無い筈だ。

「舵とスクリューが潰された様ですし、向こうの船を奪うしか道は無いと思いますよ?」

「そうだなぁ。陸まで泳いで行くのは大変そうだしなぁ」

  耳の穴を揉みながら二人は話を進める。

「ちょっと待ってよ、他の乗客はどうするのよ!?」

  チャイムが声を上げた。エアニスとトキの口振りは、自分達が逃げる方法しか考えていないように聞こえたのだ。

「・・・流石にこの船の乗客全員までは・・・」

  トキは言葉を選びながらチャイムに言葉を掛けると、

「心配すんな。この船の乗客くらいなら、なんとかあの戦艦1隻に乗せられるだろう」

  トキの言葉を遮りエアニスがチャイムの意思を汲んだ。トキは驚きエアニスを見て、そして笑いながら、やれやれと大袈裟に首を振った。


  甲板を埋めるざわめきに、悲鳴と銃声が混じった。

「!!」

 振り 向くと、逆弦の甲板で黒い潜水服をとマスクを身につけた異様な風体の男達が乗客達に銃を乱射していた。

「野郎っ!」

  だんっっ

  エアニスが弾丸のように飛び出す。驚異的な跳躍力で群集の頭上を飛び越え、船の外壁を蹴り、騒ぎの真っ只中へ一瞬で飛び込む。

  チャイム達からエアニスの姿が人込みに紛れて見えなくなってすぐに。

  その場所から血飛沫が上がった。


  エアニスが斬り倒したのは3人の銃を持った男達。敵艦隊からゴムボートでこの船まで近づき、甲板まで登ってきたのだ。

  3人の刺客達と共に、銃で撃たれた数人の乗客達も倒れ伏している。チャイムは慌てて倒れた一人の女性を抱き起こすも、既に息は無かった。

「俺達がやらなきゃ、こいつらは無関係な人間も次々と殺すぞ」

  エアニスが血で濡れた剣を下げて、チャイムに言った。

「お前もまだ言うのか

  こんなクズどもを、傷つけるなって」

  そう言いながらも、今から何人この手に掛けないといけないかと思うと、エアニスの心に罪悪感が生まれる。

  唇を噛み、自分で口にした言葉に葛藤する。

  昔はこんな気持ちになる事なかったのに。 

  レナと出逢うまでは、人を殺す事など、紙を丸めて捨てる事と同じ様な事だったのに。

( 誰も傷つけないで )

  エアニスの脳裏にあの時の言葉が鮮明に蘇る。

「レナとの約束は忘れない。

  でも・・・だからといって、こんな奴らに好き勝手させる訳にはいかない」

  それは、エアニスが自分に言い聞かせているようにも聞こえた。

  チャイムは、撃たれた女性から流れ出る真っ赤な血を見つめる。

  大切な約束を守る事が出来ず、殺し続けなければならないエアニスに掛ける言葉が、見つからない。



「やれやれ、人手不足もいいとこですね」

  トキがコートの裾をひるがえし、周りを見回す。

「他の乗客の面倒も見るのでしたら・・・

  エアニスは、ここに残ってお二人と乗客を守ってください。

  船の制圧は、僕の方でやってみます」

  トキの言葉にチャイムとレイチェルは耳を疑った。

「トキさん、まさか一人で船に乗り込むつもりですか!!?」

「えぇ、そのまさか、です。

  心配しないでください。僕はエアニスのように強くはありませんが、しぶとさなら負けない自信がありますからね」

  そう言ってにこりと笑みを浮かべる。作り物じみた、いつもの笑みを。

  そのトキの後ろ。少し離れた場所に、潜水服を着た男が2人、銃を構えこちらを向いていた。

「トキさん、後ろっ!!」

  レイチェルの言葉も終わらないうちにレイチェルはトキにコートで包み込まれた。

  どどんっ

「!!」

  トキの体に銃弾が撃ち込まれた衝撃が、レイチェルにも伝わってきた。しかし、トキはそれに全く構わず、振り向き様に自分を撃った男達に、1発ずつ銃弾を打ち込む。頭を撃ち抜かれた男達は仰け反り、そのまま海へ落ちていってしまった。

「トキ、さ・・・」

「大丈夫ですよ」

  レイチェルの震える声を遮りトキが笑った。トキがレイチェルに背中を見せると、そこには潰れた銃弾が2つ食込んでいた。が、トキが怪我をしている様子は無い。

「このコートは特別製なんです」

「・・・っ!」

  何処かで。トキは、レイチェルが何処かで聞いた事のある台詞を言った。

  トキは彼女の動揺に気付いたが、今はそれを気にしている暇は無さそうだ。コートに食い込み潰れた銃弾を引き抜いて床に捨てる。

「さてと。悠長にしている暇は無さそうですね」

  そうしているうちに、甲板には潜水服を着た刺客達が次々と現れた。海を泳いで船底に取り付き、ワイヤーフックとモーター仕掛けのリールを使い、あっという間に甲板まで登って来るのだ。

  エアニスは溜息をつく。

「俺はその作戦に文句は無いが・・・お前本当に一人で船乗っ取れるのか?」

「任せてください。武器も揃っていますし、船の中のような狭い場所での戦いは、僕の専門分野です」

「・・・まあ、そうだったな」

  エアニスは苦笑しながら頷く。チャイムとレイチェルには、意味の分からない話だった。

「頼んだぞ。俺達は船内の入り口で篭城する」

「良い策とは言えませんが、まぁたった3人で乗客を守るならそれしか無いでしょうね」

  そう言うと、トキは船体に突き刺さる巨大な鎖の上に登った。1コマが子供の背丈ほどもある鎖だ。やや曲芸じみているが、その上を歩く事は不可能ではない。

「僕はこれを伝って、あの戦艦を抑えに行きます。用意が出来ましたら、照明弾で合図するので、乗客を避難させる準備をしてください」

「あぁ、分かった。あまりはしゃぐなよ?」

「あははは。エアニスこそ」

  そう言葉を交わし、エアニスは船室の入り口に向けて走り出す。

「・・・トキさん、気をつけて」

  エアニスの背を追って走り出すレイチェルは、振り向いてトキに声を掛ける。トキはいつものように にへら、と笑って見せた。


「さて・・・と。

  面倒な役回りを引き受けてしまいましたね」

  エアニス達の姿が見えなくなると、トキはコートの内側にしまっていたフードを被り、腰と首元のベルトを締めて、全身をコートで包んだ。

「さすがに、コレが無いと危ないですか」

  コートの胸元から取り出した物を見つめる。

  それは、白く飾り気の無い仮面。

「・・・この格好は、レイチェルさんに見せられませんね」

  眼鏡を外し、自嘲気味の笑みを仮面で隠したトキは、巨大な鎖の上を駆け出す。

  その姿は、レイチェルの村を襲った黒ずくめ達と、同じ姿だった。



 船に侵入した潜水服の男達は、周りの乗客に向けて銃弾を放とうとする。しかし、引き金を引くよりも早くエアニスのライフルに腹を撃ち抜かれ、あるいはレイチェルによる風の魔導で吹き飛ばされ、海へと落とされる。

  しかし、敵と守るべき者の数が多すぎる。エアニス達の手の届かない場所で、幾つもの悲鳴と銃声が上がっていた。

  甲板に居た乗客達は船室の中へ逃げ込もうと、数少ない扉へ殺到する。エアニス達は乗客を守りながら、彼らを船の中へと誘導する。

  逃げ惑う乗客達のしんがりについて入り口まで辿り着くと、そこには小さな拳銃を持った警備兵が怯えた表情で立っていた。

「き、君達も! 早く船内に避難・・・」

  警備兵の震えた声を無視し、エアニスは肩に掛けていたカバンから小型の機関銃と大量の手榴弾を取り出した。ギョッと目を剥く警備兵。チャイム達はもはや驚かない。

「お前邪魔だ、船の中に引っ込んでろ。連中は俺が食い止めてやるから」

  ガシャコンと機関銃に弾を詰めると、身を隠していた壁から半身を乗り出し、近づいてきた敵に向けて引き金を引く。頼りない小さな銃身とは裏腹に、それは凶悪な鉄の暴風雨を巻き起こし刺客達を次々と撃ち倒す。その迫力に、逃げ腰になっていた警備兵は腰を抜かす。

「わ、わかった・・・我々は、船内に避難した乗客たちの護衛に回る・・・!」

  それだけ言うと、警備兵は逃げるように船の奥へ降りていった。

「ほ、ほんとにあんな、銃を持った集団をあたし達だけで相手にするの・・・」

  これほどまでの危機的状況に初めて遭遇するチャイムは、恐怖を紛らわすかのように口を動かす。しかし、手足と声の震えは止まらない。

「お前らは手をだすな。俺一人で十分だ」

「ちょ・・・!」

  さも当然の様にエアニスが言い放った。

  チャイムはいくらエアニスが強いといっても、流石にそれは無茶だと思った。たった一人で何十人という銃を持った刺客を相手にするのだ。

「無茶よっ、アンタもトキも、何考えてるのよ!!

  死にに行く気!!」

  チャイムがエアニスの服を掴んだ。こう話している間にも、銃弾がエアニス達が隠れた壁を削っていく。そして弾幕は徐々に厚くなっているようだ。敵が集まりだしている。

「んな気ねーよ。大袈裟だな。

  こんな状況、俺もトキも慣れっこなんだよ」

  はっきり言って、お前ら邪魔。そう言って彼は、チャイムの額を小突いた。

「お前らは船内に連中が入り込まないように見張ってろ。この入り口と、自分の身を守る事だけを考えて、余計な事はすんな。何かあったら大声で呼べよ」

  エアニスは床に転がした手榴弾を一つ拾い上げ、ピンを抜き入り口の外へ放り投げた。

  一瞬遅れて響く轟音。火薬の量を減らしてあったのか、爆発は甲板の床板を少し焦がした程度の規模だった。だが、刺客達の攻撃の手を緩めるには十分で、途切れた弾幕をすり抜けエアニスは再び敵の真正面へ飛び出した。

「エアニスっ!!」

「チャイム、危ないっ!」

  エアニスを追おうとしたチャイムをレイチェルが止めた。


「ターゲットの一人だ、撃て!!」

  エアニスの突撃に気づいた一人が声を上げ、刺客達がエアニスに向け一斉射撃を行う。

  するとエアニスは、刺客達へ向かい駆けながらも踊るように身を反らせ、屈みこみ、ステップを踏み跳ねて、彼等との距離を詰める。

「・・・!!?」

  どういう訳か、彼らの銃弾はエアニスに当たる事はなかった。

  銃弾の雨の中、エアニスは目の前の刺客たちに機関銃を向ける。

「あぐっ!」「がっ!!」「ぎぁぁ!!」

  エアニスがでたらめにばら撒いた銃弾が、刺客達の胸に、足に、頭に、面白いように当たる。足に銃弾を受けた刺客の一人が正面に視線を戻すと、目の前には剣を振りかぶったエアニスの姿。あっという間に、剣の間合いにまで踏み込まれていた。

  気付いた時には、並んで銃を構えていた刺客の3人が、エアニスの一太刀で同時に斬り倒されていた。


「信じらんない・・・」

  チャイムとレイチェルは入り口より少し奥に入った場所から、エアニスの戦いを見ていた。

  相変わらず刺客はエアニスに向けて銃を乱射している。しかし、その銃弾は彼らの仲間に当たる事はあっても、エアニスに当たる様子は無かった。

  エアニスは突然後ろへ跳ねたり、体を屈ませたりしながら剣を振るっている。一見意味の無い動きに見えるが、それは刺客の銃撃をかわしているのだ。無意味に見える動きの度に、エアニスの周りの床や壁に次々と穴が穿たれてゆく。

「銃の弾が・・・見えているとでもいうの・・・?」

  エアニスの非常識な強さも、ここまで来ると異常である。ひっょとしたら、何らかの魔導を使っているのかもしれない。そうでないと、この現象の説明が付かない。本当に銃弾が視えてでもいない限りは。

「違う・・・」

  レイチェルが、冷静にエアニスの動きを分析する。

「視えているんじゃなくて、まるで何処に銃弾が飛んでくるのかが分かっているみたい・・・」

  エアニスの視線は常に今から切り倒す刺客へと向けられており、周りの刺客の銃口を気にしている様子は無い。そう。レイチェルの言う通り、あらかじめ何処に銃弾が来るのか、分かっているかのような動きだった。


  エアニスに焼け付くような殺気が次々と突き刺さる。

  しかし、エアニスに向けられた"殺意"は、物理的な現象として彼に届くよりも早く、見切られ、いなされ、かわされる。刺客達はまるで幻か幽霊と戦っているような気分だった。

  船の制圧の為乗り込んだ30人の刺客達はたった1人の男に、たった5分足らずの時間で、その数を半分以下にまで減らされていた。

  まさか銃を持った集団に単身斬り込んでくるとは思っていなかったのだろう。刺客達の武器は銃しかなく、接近戦に持ち込まれると、どうしても同士撃ちをしてしまう。何人もの刺客達がエアニスを狙った仲間の流れ弾に当たり、倒れていた。刺客達はそれを恐れて益々弾幕を薄くしてしまい、自然とエアニスの刺客を斬り倒すペースが上がってゆく。

(楽勝だな)

  一人の刺客の胸を斬り払い、エアニスは思う。

  戦争中は、このような状況はよくある事だった。30人という敵の数も、大して多いと感じない。

  雑魚がいくら集まろうと、鯨の喉が食い千切られる事はないのだ。



「ッ!!?」

  突然、雑魚の中からとびきり鋭い殺気が生まれた。

  ジャギィイイインッ!

  エアニスは視界の端で辛うじて捕らえた刃を剣で受け流しながら、殺気から距離を取る。そして、その姿を認めた。

「お前は・・・」

「ハハッ、また会えたな!」

  そこに居たのは赤い髪を海水で濡らした見覚えのある男。

「たしか・・・バルザックとか言ったな。こんな所までご苦労な事だ」

  赤毛の男は、ミルフィストの宿でチャイム達を襲った襲撃者達のリーダ、バルザックだった。街でエアニスと戦い、決着が付かずに逃がしてしまった凄腕の剣士。そして魔導師でもあった。

「どういう事だ、どうしてお前が居る?

  こいつらは、"ルゴワール"の連中じゃないのか?」

「そうだ、我々"エイザム"が"ルゴワール"にお前達の事を報告した。

  だが、お前の様な最高の獲物を他所にくれてやるには惜しかったからな。

  わざわざこうして、"ルゴワール"の雇われ兵士とし会いに来てやったんだよ!!」

  バルザックは一足跳びでエアニスの間合いへと踏み込み、二人は耳障りな金属音を上げて手にした刃を交差させる。バルザックが笑った。

  バヂヂヂッ!

  エアニスとバルザックの間に青白い火花が弾ける。バルザックが短剣を媒介に電撃の魔導を使ったのだ。しかし、エアニスの持つ剣に電撃が伝わる事は無い。単に絶縁処理がしてある、という訳ではない。エアニスの剣は魔導への耐性があるのだ。

「・・・雷撃が伝わらない事といい、ミルフィストで火炎の術を弾き飛ばした事といい、たいした魔法剣だな」

  バルザックは羨望の眼差しでエアニスの左手に握られる、赤黒い長剣を見つめる。

「図に乗るな。人間如きに振えるエモノじゃねーよ!」

  更に踏み込み、バルザックの肩口を狙ってエアニスは剣を振り下ろした。バルザックは両手の2本の短剣でエアニスの斬撃を受け止める。二人の剣の動きが止まった。

「悪ぃが今日はお前と遊んでる暇は無いんだよ」

  エアニスは空いている右手の機関銃をバルザックの腹部に押し付け、零距離から銃弾を撃ち込む。バルザックの背中が震え、血と肉を撒き散らした。

  卑怯だとは思わない。元より、エアニスにバルザックと剣の勝負をするつもりなど無いのだから。

  ざぎんっ

  エアニスの右手が小さく揺れた。手元の機関銃に視線を落とすと、それは銃身の半ばから真っ二つに断ち斬られていた。

「!!?」

  猛烈な胸騒ぎを覚え、エアニスはバルザックから離れようとする。しかし、腹部を蜂の巣にされながらもバルザックは異様な力でエアニスの襟を掴む。

「---っ! しつこい!!」

  エアニスは剣を逆手に持ち替え、バルザックの脇を刺した。剣は両の肺と心臓を貫抜き、肋骨を折って反対側へと抜けた。

  しかし。

  バルザックは動いていた。

  彼は自分の胸を貫いた剣を掴み、エアニスの剣の動きを止める。そして、痛みなど感じていないかのように、平然と笑った。

  バルザックの異常行動に動揺し、エアニスの動きが止まる。その隙を突くようにバルザックは短剣をエアニスの喉元目掛けて突き出した。

  エアニスの肉が裂け、血が噴き出す。

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