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外伝2 ある夏の日の休暇

運営より先に通達のありました『ダイジェスト禁止』により、近くこの話の本文を削除することとなりました。

今後は、アルファポリス様のサイトで更新を続けていく予定です。


本話他の外伝は一応残していく予定です。

ご了承ください。


ある晴れた暑い日のこと。


場所は……大陸南部にある、とある海岸。


そこは、生態系その他の関係から、魔物などもほとんどおらず……安全な水場だった。


さすがに、絶対に安全とまでは言えない。この大陸では、縄張り等の関係から程度はあるとはいえ……町や村から外に出れば、どこにでも、多少なり魔物が生息している。


だがこの海岸では、余程沖にいったりしなければ、危険な魔物が出ることはまずない。


近くに、『水の都』と呼ばれている観光地があることもあって、ここに来るものは多い。

それこそ、一般市民から冒険者まで、様々な人が訪れる。

来て、泳ぐ人もいれば、釣りなどを楽しむ人もいる。


今、海岸に来ている冒険者の一団も……その類だった。

男ばかり8人のチーム。装備をつけてはいるが、殺伐とした雰囲気や緊張した空気はないところを見るに、単純にオフの日に休暇を楽しみに来ただけのようだ。


ただ、その楽しみ方は、水泳や釣りではなく……


「おい、あの辺なんかよさそうじゃねーか?」


「おー、確かに……へへっ、すげえな、上玉だぜ?」


「4人もいるな……1人につき2人、ってとこか?」


「どれにすっか迷うな、おい」


そんなことを話す彼らの視線の先にいたのは……彼らとは対照的に、女ばかり4人のチーム。

彼らにとっては……少し乱暴な言い方をすれば、『獲物』である。この海水浴場(仮)に、そもそもナンパから『その後』の目的で来たわけであるからして。


見た目はそこそこいいメンバーはそろっている彼らにとっては、割といつものことだ。


夜の街で適当に誘ってひっかけることもあれば、その手の職業のお姉さんと連れ添い宿に入ることもある。

今回のように、休日を利用してナンパをする……というようなこともある。


今日も、一昨日に大口の仕事が終わり、昨日一日休んで疲労が抜けた彼らは……今度は精神の方に潤いを与えようと、こうして人が集まる場所を巡っていた、というわけだった。

そして、昼前の今……この海水浴場で、今日のターゲットを見つけたのである。


ビーチでゆっくりしている様子なのは、4人の美女。


水着と思しき、露出多めの服装で、浜辺にシートのようなものを敷いて横になり……日光浴をしている、焦茶色の長い髪の美女が1人。


その隣で……しかしこちらはパラソルを広げ、その下の日陰でのんびりしている、藤色の長髪と、濃い藍色のショートヘアの美女。


そして、少し離れた場所で、海釣りをしている金髪翠眼の1人……の4人である。


どれもタイプは違うが、相当な美女であることに気をよくした男たちは、早速彼女たちに近づいて声をかける。無難なところから、徐々に……といった感じで。


しかし、女性たちの対応はそっけなく……首を縦に振ることはない。


「ごめんなさいね? 私たち、今日はオフだから……ゆっくりする、って決めているの」


「そういうことー。ナンパなら他当たっとくれ、ボウヤたち」


そう、藤色の髪とこげ茶色の髪の2人に、やんわりと断られる。

その際、男たちのうちの数名は、こげ茶色の髪の1人に言われた『ボウヤたち』という単語に、違和感を覚えていたのだが……大半は気にしていなかった。


そのまま、言われたとおりに立ち去る……なんてことは当然なく、引き続き誘いを続ける。


別に、無理強いしたり、官憲の世話になるようなことまでするつもりはなかったが……簡単にあきらめるつもりもなかった。そのくらいに、最近は遊んでおらず欲求もたまっていたし……目の前にいる4人は、そこらの娼館などでは到底お目にかかれないくらいの美女ぞろいだった。


これは意地でも口説き落としてやろう、そして軽く食事でもして、その後は……と男たちが嫌なやる気を出す中、そのうちの1人が、先程から応対しているのが、パラソルの下の3人のうち2人だけであることに気づく。


残る1人……暑いからだろうか、目を閉じてだら~っと寝転んでいる美女。

いや、小柄であるため、『美少女』といってもいいかもしれない。


男はそんな1人に目をつけ、ぽんぽん、と肩を叩いて声をかけようとして、


「ねえお嬢ちゃん、暑いの? 大丈夫? もしよかったらさ、俺が看びょ……」



「あ?」



刹那、男たち全員を……喉元を鋭い剣で一刺しにされたかのような、すさまじい殺気が襲った。


軟派な雰囲気でも、冒険者だということなのだろう。

その異常なまでの威圧感に、男たちは即座に反応し……とっさにその場から大きく後ずさった。


そして、周囲を見回し……その殺気の正体が何なのか、必死で探っている。

……今しがた、小柄な女性の1人に声をかけた1人の男以外は。


その男は、気づいていた。今の殺気が、この少女が発したものだと。

そして、至近距離で叩きつけられた、あまりにも鮮烈な死のイメージに……腰を抜かしていた。


それに気づいた男の仲間が、声をかけようとした……その時。


「お、おい、どうし……」



「――うっっニャァァアああぁぁぁあ!!!」


「――でぇぇえええぇえええぇえい!!」


――ばしゃああぁぁぁああああん!!



沖の方で……大きさ数mはありそうな、サメのようなクジラのような巨大な魚が、宙を舞った。

そして、それを追うように……2人の女性が水面から飛び出してきていた。


1人は、猫耳に猫のしっぽが特徴的な、スレンダーな猫系獣人の女性。


もう1人は、色黒の肌に、頭の横から出ている角が特徴的な、グラマラスな牛系獣人の女性。


どちらも、その濡れて美しい体を、露出の大きい水着と思しき布に包んでいるが……男たちは、それに見惚れるようなことはなかった。

そんな余裕はない。今何が起こったのか、把握するので頭の要領はいっぱいだ。


飛び出してきた美女2人。その姿勢はまるで……今まさに彼女たちが突き上げている拳で、その巨魚を叩いて弾き飛ばしたかのようである。


まさか……という思いが男たちの頭をよぎったが、それだけでは終わらなかった。


「う・る・せぇ――!!」


今の今まで寝転んでいた藍色の髪の女性が、飛び起きるやいなや、右手をひっかくようにぶぉん、と上から下に振り下ろしたかと思うと……直後、余波で男たち全員が吹き飛ばされるような衝撃波がはなたれ……砂浜をえぐりながら、今飛び出した2人と1匹の方へ向かっていく。


そのさらに直後、となりで見ていた藤色の髪の女性が、はあ、とため息をついたかと思うと……ふいに、右手の人差し指の先を海の方に向ける。

その瞬間、そこから目もくらむような光とともに、一条のレーザーが飛び出し、先に放たれた衝撃波を追い越して海面に着弾。大きな水しぶきを上げた。

それが壁になり、衝撃波の威力が大きくそがれた。


……と思えば、さらにその次の瞬間、今度はその水煙ごと、衝撃波が消し飛ばされ……その向こう側からは、拳を振りぬいた姿勢の獣人美女2人が見えた。


その結果として、打ち砕かれた水柱の破片とも呼ぶべき水しぶきが浜辺に降り注ぐも……寝ころんだままのこげ茶色の髪の毛の女性が腕を一振りすると、暴風が巻き起こってそれを吹き飛ばす。


そして、今の数秒の間に……これを予測していたのかはわからないが、釣りをしていた金髪の女性が、その釣り竿と糸を投げ縄のように巧みに使って、上空に吹き飛んでいた巨魚を回収していた。どうやら、竿部分から糸や針にいたるまで、普通の釣り竿ではないらしい。


「いきなり何すんのニャ、クローナ!! 殺す気か!!」


「いや、別に直撃しても死にはせんかったじゃろうが……獲物が逃げるじゃろうが! 何のつもりじゃ一体!?」


「うるっせーっつんだよ! こちとらこのクソ暑い中照り付ける太陽の下に連れてこられてうんざりしてんのに、やれ『今暇?』だのやれ『看病してあげようか?』だの、ニャーだのでーだの、俺に安息のひと時を与えない気かてめーら!」


「だからって八つ当たりすんじゃねーニャ! あと前半意味わかんないニャ!」


「おいおいクローナ、文句言うなよ……ココ来たのは、海行くか山行くかって話になって、尋常にじゃんけんで決めた結果なんだから……つか君、デイウォーカーなんだから日光平気だろ」


「アイリーンの言うとおりよ。それに、嫌なら来ないでアジトで休んでてもいい、って、リリンリーダーも言ってたじゃない」


「あっはっは、それ言っちゃだめだぜテレサ。こら、こー見えてクローナってば寂しがり屋なんだから、一人でお留守番とか仲間はずれでおいてかれたみたいで寂しく「死ね」て泣いちゃうおっと危なっ!?」


先程の衝撃波に倍する威力の、空気を圧縮して作り出された砲弾が、寝転んでいた茶髪の女性を襲い……その瞬間、一瞬で構築された障壁が空気の砲弾をはじき、空の彼方に飛ばした。


「はぁ……もう、どうして私たちの休日ってこう、穏やかな感じで過ぎていくってことがないのかしらね…………あら?」


ため息をついた藤色の髪の女性は……そこに至ってようやく、先程まで自分たちをナンパしていた男たちが、1人もいなくなくなっていることに気づいたのだった。





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