27 ただの花嫁2
雅浩が帰ったあと、弥勒は考え込んでいた。
初音が姫巫女。
その初音が姫巫女の座をおり、誰かと結婚する。
俺のせいなのだろうか。
俺のせいで、俺を好きになっちまったせいで、巫女の座をおろされ、無理やり誰かと結婚させられる。うなだれ、涙ぐみ、本当は俺を好きなのに見知らぬ男に嫁がされる初音・・・。
そこまで妄想して弥勒は首を横に振った。
いや、ないな。
そもそもあのサル娘に人間並みの恋愛感情があるのかどうかも疑わしい。
べっ甲のくしを送った男に魚の干物を返すような娘だ。
河童とつるみ、泥だらけになっているような娘だ。
嫌な男に嫁がされるくらいなら、天狗に八つ裂きにさせるかもしれない。
それくらい、やりかねない。
真剣にサル娘の居場所を尋ねているのに、佐保山のふもとにいけば会えるだの、貢物は旨いものがよかろうだの、いけしゃあしゃあと答えていた娘だ。
・・・腹が立ってきた。
美女3人の候補を蹴ってまで、求婚するような相手か?
否。あいつはサルだ。
おっかない天狗に八つ裂きにされるかもしれない危機をおかしてまで、求婚するような相手か?
否。あいつはただのサルだ。
しかも、サルの分際で、俺のこの想いをきいたうえで、あきらめろ、と断ったのだ。
その上、誰かと結婚だと?
サルのくせに、俺を断っておきながら、誰かと結婚?
許せるわけがない。
さっさとさらってやる。
そして、もう二度と神殿には戻れぬよう、別の男にも嫁げぬようにしてくれる・・・。
ふははは、そうすれば俺の嫁になるしか道は無くなり・・・おや?
俺は何をいってるんだ?
さっきから何やら矛盾しているような・・・?
ええい、初音め。
もうどうでもいい。
あのサル、絶対に捕獲してやる。