25 神の花嫁3
長老会の面々が揃い、難しい顔をしていた。
神官榊の申し出により、初音の今後を話し合うことになったのだ。
長老会は神殿の人事の全てを握っている。
神領区の領主を長く務める貴族、もと神官長やもと姫巫女といった錚々(そうそう)たるメンバーだ。現在の王宮の要職に就く者も少なくない。源雅浩も準メンバーではあるが、正式なメンバーではない。
「王子である弥勒殿と、姫巫女である初音が想いを寄せ合うなど、どうもげせぬな」
「弥勒殿には華やかな女人が沢山いると思ったが。初音は竜神と心を通わせ、天狗や河童の心を読み、妖怪の類を操る事すらできるが、おなごとしては・・・なあ?」
「弥勒殿は神殿や、神官、巫女を疎んじ、軽んじていると聞いている。初音は天変地異の先読みはできるが、人の世の理には疎かろう。初音は利用されているだけではないのか?」
「源雅浩の話では、弥勒殿は真剣に初音を想っているらしいよ。どちらにしても、初音が妃となるのは無理じゃない? 弥勒殿には妃の候補がすでにいる」
「あら、姫巫女が他の候補に劣るとでもいうの? 王子にはもったいないくらいだわ。でも、姫巫女が大手を振って王子に嫁ぐというのもねぇ。表向きは巫女は生涯、神の花嫁なのだし?」
「まだはやいが、初音を引退させ榊と結婚させればよい。次の巫女の夢乃も問題児だが、実力はある。初音が影でサポートすれば問題ないだろう。人の妻となったところで、力が無くなるわけではないのだしな」
「そういえば、竜神様がいたく初音を気に入っていたような気がしたが・・・。大丈夫だったかな。神官長はそろそろ榊に交代させた方がいいだろう。」
「そうだ。神官長も交代するのがよかろう」
「ですが、神殿と王宮の対立は深くなっています。もし、初音と王子の結婚が上手くいけば、この対立が収まる可能性もあるのでは?」
「だが、逆に初音の力さえあれば、神殿自体の存在はいらないともいえる。神領区をつぶすことすら、考えられる。弥勒殿は恐ろしい男だ。初音は両刃の剣。弥勒殿の気持ちが読めぬ限り、初音を渡すことはできぬ」
「そうだ。弥勒殿に神殿をひっかきまわされては困る。初音には姫巫女を引退させ、榊と結婚させよう」
長老会の面々は頷きあうと、解散した。