表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/35

22 人妻デスカ?2

 フラフラしたまま、親友である源雅浩の元へ向かう。

 王宮に戻る気にはなれなかった。


「人妻になっていたのか!」

 ポンッとヒザを打ち、イッヒッヒと親友であるはずの源雅浩は笑う。

 この男は顔も立ち居振るまいも温和で雅なのに、笑い声だけはなぜか下品だ。

 酒を出してきて、七輪で鮎まで炙りはじめる。本格的に飲むつもりらしい。


「笑い事じゃない。いつの間に、初音は・・・。この間会ったときも一言もそんなことはいってなかったぞ。むしろ、俺を・・・、いや、だから泣いてしまったのだろうか・・・」

 弥勒は平常心に戻れないでいた。


「ふうん? 悩め悩め。今まで女に苦労せず、散々泣かせてきたんだろう? たまには良い薬だ」

 薄情にも雅浩は面白がっている。そんな雅浩を弥勒は睨んだ。


「冗談じゃない。一番肝心な所で、こんな・・・。しかし、誰の妻になったんだ? あんなサル娘、娶っても困るだけだろうに」


「そのサル娘を娶ろうとしていたのは、どこのどいつだ? イッヒッヒ、笑いが止まらん」


 雅浩は弥勒と鮎をさかなにひとしきり笑い、飲んだ後ふと真顔になった。


「でも確かに妙だな。そんな高貴なところに嫁入りしたなら、結婚の噂くらいたってもよかろうに。最近誰それが結婚したという話は聞かぬがな。」

 雅浩はグビリ、と酒を流し込む。


「そうだろう? この世で最も気高く高貴な者に身をささげている、といったんだ。この世で最も高貴って、俺のことだろう? ハッ、親父か? 初音が親父の側室に? イヤ、ないな。そんな話、聞いてないし、有り得ない」


「お前は気高く無いだろーが。高貴ってのも怪しいもんだ。気高く高貴、気高く高貴か・・・ん? まてよ?・・・それって、神の花嫁のことじゃないのか? もしかすると」

 雅浩は宙を睨み、あごに手をやる。


「神の花嫁?」

 弥勒は体を乗り出した。


「神領区の娘は、神通力を持った娘が多い。そういった娘の中で、特に力の強い娘は巫女になるんだよ。巫女は神の花嫁とも言われ、その身を神にささげる、といわれている」


「あ・・・・」


 いつも神領区の山をウロウロしていた初音。

 どことなく、人離れした初音。

 薬草を集めていた初音。


「巫女は、薬草を集めたりするのか?」

 弥勒の問いに雅浩はうなずいた。


「ああ。病人を癒すのも巫女の仕事の内だ。秘伝の調合の薬を作っているときいたことがある」


「確かに、巫女かもしれん。でも、もしそうなら・・・。初音にはもうその資格は無い」


「無いって、まさかお前、その娘をやっちまったのか?」


「口付けだけだが。・・・そうか。やっちまえば、完全にこっちのものか」

 弥勒の表情が明るくなるのを、雅浩は眉をしかめてみていた。


「お前、そんな罰当たりな事、頼むからここでは言わないでくれ」

 王宮に帰ってからそういう物騒な事はいってくれ、と親友のはずの男はいうのだった。


 弥勒は思い出した。

 怖い天狗。

 間違いなく八つ裂きにされるわ、俺。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ