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17 尻子玉作戦3

 五月五日、正午。小さな泉のほとりにて。

 ケツ戦の火ぶたは切って落とされた。


「初音! 久しぶりだな」


 前方に両手を広げ、接近してくる敵を初音は発見した。

 泉のすぐ近く、絶好のロケーションに敵はいる。

 満面の笑みのミロクに狙いを定める。


 十分に相撲の稽古、腹筋体操はやった。

 押し出し、寄り切り! 泉にドボン!

 河童の親分がミロクの尻子玉を引っこ抜いて(ちょっとエッチな作戦)、勝利!

 イメージトレーニング、完了。

 ミロクは油断している。

 イケる。


 初音はだだだだーっと走ってミロクに突撃した。

 この時点ですでに相撲とは程遠い。


「ミロク、覚悟ぉっ!」


 ぐわしっ。

 ミロクに易々と抱きとめるられる。

 むむ、失敗?


「初音、いきなり助走つきで抱きつくなんて嬉しいことしてくれるな。そんなに俺に会いたかったのか?」


 子供をあやすように、高く抱き上げられる。


 うそーん。河童の親分、予想外であります。


 初音はジタバタする。

 宙に浮いた体では、力が入らない。


「エッチな作戦とやらを早くみせてもらいたいものだな」


「!!」


 河童の親分、何故か尻子玉作戦の情報が漏洩ろうえいしているようであります。 


 初音は焦った。


 そっと地面に下ろされ、なぜか期待に満ちた目で見つめられる。


「続きはどうした? 初音」


 えっと、続きって、尻子玉を盗れ、ってことかな?

 親分、相撲のとり方は教えてくれたけど、尻子玉の抜き方はもったいぶって教えてくれなかった。あまり教わりたくもなかったけれど。

 


「・・・手伝ってやろうか? その作戦」


 ええ? 

 尻子玉、くれるってことだろうか? 

 っていうか、私は欲しくない。

 欲しがってるのは河童の親分で・・・。

 できれば、触りたくないっていうか・・・。

 尻子玉って、実物みたことないけど、お尻にくっついているんだよね?

 なんか生温かそうだよね?

 お~え~。


「・・・」


 それは、確かに、生温かかった。

 初めてのチュウ。

 唇に。


 な、なんで??

 初音はミロクに抱きしめられ、キスされていた。

 優しく髪を撫でられる。


「お前、首まで赤いぞ。可愛すぎる。エッチな作戦が聞いて呆れる」


 尻子玉作戦が・・・。

 何故・・・・。

 あう・・・。

 それより。

 これってもう巫女として完全にアウト?


 もう一度、優しく、さっきよりも深く口づけられる。


「んんー??」


 ミロク・・・?

 どう考えてもマズイ気がする。

 姫巫女として。

 力が無くなった。

 だって、その証拠に体の力が・・・全然入らない。

 きっと、もう河童とおしゃべりできない。

 きっと、もう竜神とも天狗ともおしゃべりできない。


 初音はぼろぼろ泣き出した。


「え? え? 初音、お前から抱きついてきたんだろう? ゴメン、そんなにイヤだったのか? エッチな作戦でがんばるってきいたから、俺は・・・」


 ミロクがオロオロして初音の顔を覗き込む。


「初音? ゴメン、初音・・・」


 初音は子供のようにワーワー泣きだした。





 突然突風が吹き荒れた。


「初音を泣かせたのは貴様か」


 荒々しい声が天から木霊した。


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