十三夜
件の動物病院に行くと、獣医が笑顔で迎えてくれた。
「気になるから直接見てみたいという話がありますよ」
既に2匹飼ってるうちの常連さんですが、どうです?と訊かれ、咄嗟に返事に詰まった。
「連絡とかはどうすればいいんでしょう?」
「直接連絡を取り合うのも手ですが、これもご縁なのでうちの待合室で対面するのはどうでしょうか?」
「では、その方法で。仕事がある日は夜にならないと時間が空かないので……」
「うちのご近所さんですし、ご主人も仕事をしている方なので、夜でもいいと思いますよ。今日くらいの時間で、都合の悪い日はありますか?」
「あ、特には……」
「では、明日はうちが定休日なので、明後日当たりに相手方に連絡しますね」
「お願いします」
うちに朔が来て10日とちょっと。
早いのか遅いのか。
満月に近い弓張り月は、きりりと弦を絞りじき弓が放たれる緊張感を持っている。それは朔を手放すまであと僅かだと、暗喩しているようだ。
それは予定通りの出来事。
獣医に寄った分、帰りが遅れているので、早く家に帰り、朔に餌をあげなくては。
自転車を漕ぐ足に力を込め、家路を急いだ。