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それは哀しい終わり
この世は舞台、人はみな役者
——シェイクスピア『お気に召すまま』より——
少女はどこかの屋上で風を受けていた。少女は何気無く空を見上げる。その空には月が浮かんでおり、寂しく夜闇に光を灯していた。少女の黒く長い髪を冷たい風が揺らす。
「綺麗……」
少女の口から零れた声には、すぐにでも崩れていきそうな儚さがあった。少女は視線を地上に移す。夜の街は燦然と輝いていて、痛い程眩しかった。少女は柵に手をかける。
「……さよなら」
そう呟いた少女は真下にある暗闇に飲み込まれていった。悲鳴が辺りにこだまする。周辺が騒がしくなり、警察や救急車が駆け付ける。数秒後、救急車がけたたましいサイレンを鳴らして走り去り、その数分後には警察によって騒ぎは沈静化した。そして、野次馬がとっくに解散した場所に一人の青年が姿を現す。青年はしばらくそこに佇み、やがて一言を残してその場を去った。
「ごめんな」
その言葉は街の騒音の中に霧散し、誰に伝わるでも無く消えてしまった。




