大学一年生⑤
私は大学内でも人気がない場所で彼らを待っていた。都門がうまく説得できたら、彼を連れてくるらしい。
スマホをいじっていると、都門から連絡がくる。
説得できたっぽい。そろそろ着くと言っていた。
私は立ち上がり、彼らを待った。
数分経つと、彼らがやってくる。
華子――有座さんは、私を見た後、すぐに目を逸らした。
「連れてきた。」
「ありがとう、都門。」
都門と有座さんはこそこそと話すと、都門は彼の背をトン、と押し、私の目の前に有座さんがやってくる。
彼はどこか緊張しているようだった。
私が口を開こうとすると、
「ごめん。」
と言ってきた。華子の声だった。
「何も言わずにどっか言ってごめん。」
理由はわかってる。だから、
「いいよ、別に。」
と返した。華子はハッと私の方を向き、泣きそうな顔をしながらへら、と笑った。
「私、怖かったの。最初会った時、雰囲気が似てるって言われて、バレるんじゃないかって、勝手に離れていったことを責められるんじゃないかって。でも、一緒に関わってくうちに、別のこと思うようになった。このまま関わったら、また、私が出てくるって。ずっと抑えていたでしゃばりが出るって。」
「それは――。」
「大丈夫って言うでしょ?知ってる。」
「でも、華子はいやなんでしょ?」
私がそう言うと、華子は驚いたように私を見た。
「ずっと守って、幸せな気持ちにさせるのが正解だと思ってた。でも、貴女はそれじゃいやだってこと、最近気づいたのよ。」
「心……。」
あぁ、泣きそう。泣き虫なところは変わらないんだね。私も、華子も。
「私、似てるって思っても華子とは違うって思ってた。でも、そうよね。貴女も成長してるんだもの。なら、私も向き合わなきゃ。」
「……うん、うん。」
「ごめんね、華子。」
私たちは二人で泣きあった。その頭を、都門が撫でてくれた。
お互い泣き止んだ頃、私は、とある提案をした。
「華子……いや、有座さん。」
「別に、原太でもいいよ。」
「原太さん?」
「うん。それでいい。」
彼はそう言って笑った。その笑い方、なんだか似てる。
「……もしよかったら、今からでも友達にならない?」
私がそう言うと、彼はふ、と笑った。
「……もう、前みたいな関係に戻れないかもしれないのに?」
「それでもいい。私は、貴方と友達になりたいから。」
「……なら、いいよ。」
彼はそう言ってにっこりと笑う。私も釣られて笑った。
「あとね……。」
「うん。」
「もし、よかったらなんだけど。」
「うん。」
「もう一度、もう一度だけ、華子に会いたいの。」
そう言うと、彼は目を見開いた。
「なんで?」
「別れを言えてないでしょう?それに、転校した先であったことを話してほしいの。ほら、あの子話したがりだから。」
彼はうんうんと唸った後、いいよ。と言ってくれた。
「本当?」
「プライベートでいい?」
「勿論。」
私たちは二人で笑った。まるで秘密ごとを共有してるようだ。
笑い合っていると、都門が話しかけてきた。
「言いたいことは言えたか?」
「大まかね。でも、また話すの。」
「いいね。」
「……ありがとうございます。和田さん。」
「いえいえ。」
彼の声は、すでに原太さんの声になっていた。それでもいいと思った。
それが、あの子の選んだ先だから。
「そろそろ帰るか。」
「そうね。」
私たちは立ち上がり、お互い正反対の方向を歩き出す。
「原太さん、また明日!」
「うん。また明日。」
手を振って、帰路の方を向いた。
なんだか清々しい気分だ。
しばらく、彼らの方を向いていた。
また話せるのか、昔の私が見たらなんと言うだろう。
人生なんてそんなもんだ。
決意したものは案外叶えられないものだ。
それでいい。その方がきっといい方向に向くから。
「……心。」
私、そう言えば言い忘れていたことがある。
「別に人を制限しなくてもいい。助けたい人を助けてよ。心なら出来る。この世の中に疑問を持つ心なら、きっと。」
この言葉は誰にも聞こえないけど、きっと大丈夫。また、どこかで話すから。だから、待っててね。




