嵐の前の静けさ
アルト王子に抱かれたまま眠る春。アルト王子が、ある決心をすると、ダリアンたちが驚きを隠せずにいた。第1章、最終話。
王城から、眩い閃光が夜空を裂くように、聖女の力が解き放たれた。その光の柱を、馬上から見上げるダリアン。彼の後ろには四騎士の二人が後ろで、感じたことない魔力に、外套を押さえながら光景を見つめていた。
「一体、何が起きているんだ?」
ダリアンが、呟くと二人の騎士も状況が分からず、馬上で、驚くばかりだ。
「分からないいわ。ただ、とてつもない魔力─」
「ダリアン様!アルト王子殿下の御身と、聖女様の 否が最優先です!」4騎士の一人が堰を切る。
「急ぐぞ!」
ダリアンが、手綱を強く引き、馬を走らせようとし た、その時だった。闇の奥から、一騎の馬がゆっくりと近づい てくる。蹄の音は静かに、その魔力をダリアンは知っていた。
月明かりに照らされて現れたのは─アルト王子だった。その腕には、見慣れないをアルト王子が女性が抱いていた。
「アルト!無事か!」
ダリアンは馬から飛び降り駆け寄る。鎧が鳴り、 砂が跳ねる。アルト王子は静かに領いた。
「怪我はない。春も、無事だ」
その声音は静かで、ダリアンはアルト王子の雰囲気がいつもと違うことを感じ取り押し黙った。
「アルト王子殿下、まさか!聖女の力が…覚醒… 」
後ろで控えていた騎士たちが、馬から降りると即座に跪き、頭を垂れた。夜の静寂に、鎧の触れ合う音が小さく響く。
「今、春を休ませたい。城へ帰ろう」
ダリアンたちが立ち上がると、アルト王子は馬をゆっくりと城へ向ける。城門が重く開き、月光に照らされた石畳をアルト王子が、馬の手網を持ち前へと先に進んだ。城に着くと、アルト王子が春を抱き抱えながら馬から降り春を抱き直した。長く伸びた髪が彼の腕を流れ、かすかな光を残す。ダリアンが、アルト王子の後を追い、声をかけた。
「アルト?」
アルト王子は、そのまま足を止めず、寝室へと歩き、ダリアンに答える。
「俺は春を、王子妃にする」
その言葉は、迷いがない決心に、ダリアンの目が見開かれた。
「アルト、本気か?」
「ああ。彼女からはまだ返事は聞いていないが.....必ず王子妃殿下に」
アルトは一瞬だけ、腕の中で眠る春を見下ろした。
「俺はもう、春を手放したくないんだ」
城の廊下は静まり返り、アルト王子とダリアンの足音だけが響く。廊下の燭台の炎が揺れ、二人の影を壁に長く映し出し、寝室の扉が開かれ 柔らな灯りが差し込む。アルト王子が、寝室の中へ入ると扉は完全に閉まる音が響いた。ダリアンが深いため息を漏らしながら、月明かりが照らす窓の外を見つめていた。
…王族の婚姻は、国を揺るがす。ましてや、聖女。身分もない、後ろを支える貴族、何も無い彼女をアルトは本当に、王子妃にするのか──
まだ、今回の主犯格すら把握できていない中で、アルトそれを公にすれば──彼女を巡って、何が起きるか誰にも分からないぞ。
「アルト、嵐が来るぞ」
ダリアンは、情報収取のため寝室の扉を見つめると、執務室に向かうのだった。その頃、寝室では、アルト王子は、静かに寝台の傍で腰を下ろしてい た。春は穏やかな寝息を立てて眠っている。長くなった白銀の髪色が、枕に広がり、まるで光の糸のように 輝き、アルト王子はそっと、春の髪に触れ、頬に触れる。魔力を使った、氷のように冷えた手を春が無意識に、アルト王子の手に擦り寄り甘えるような姿に、アルト王子の喉が小さく鳴った。
─春の全てを奪ってしまいたい。身も、心も、未来も。
「春…」
アルト王子の低い声が寝台に響くとその手を引き、自我を保った。春の返事を、まだ聞いていないからだ。
彼女の意思を、尊重したい。 権力や、命令で奪うのではなく、春に選んでもらいたいから。 アルトはゆっくりと、立ち上がった。 魔力を使いすぎた手は、氷のように冷たく早くしなければと、薬湯で魔力を押さえなければと、アルト王子は浴室へと向かった。
静かな夜を刻むように、それはまるで、嵐の前触れのように─第1章ー完
嫌ーまさかのまさかで、第1章完結しました。皆様には、物足りない、もう少し先を見てみたいと思われる最終回ですが…その後の、春の視点(番外編)、エピローグと2話分を投稿しようと執筆中なので、ブクマ登録、高評価ポイント、リアクション評価スタンプ、よろしくお願いいたします!




