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プロローグ.空に落ちる


 視界が滲んだ。

 夕陽のせいか、それともどこか心が震えているせいか。


 左手に添えたのは、思いを詰め込んだ原稿。

 右手には、夢を信じて手に入れた万年筆が握られている。


 茜色に染まる夕陽を背に、僕は静かに机を立った。



 何かを終わらせるために。






_______________________________________________



 風が強かった。

 まるで誰かが、上空から引っ張っているように、コートの裾が空を仰いでめくれる。


 夕焼けが街を朱に染めていた。

ネオンの灯りが、その輪郭をゆっくりとかき消していく。


 夢が壊れたとき、僕はもう、自分が何者かもわからなくなった。

 信じていた言葉も、信じていた人も、何もかも、どこかで擦り切れてしまっていた。


 「飛べたらいいのにな」


 屋上の柵を越えたとき、ふと口からそんな言葉が漏れた。

 空を飛べたら、全部置いていける気がした。


 何かが終わる音も、聞こえなかった。

 ただ、風がひゅうと鳴って、重力が静かに僕を迎えに来ただけだった。


 目を閉じると、空が広がった。


 羽のようなものが背に触れた気がした。


 そして僕は、ただ、どこか遠くへ溶けていった。

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