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「ここがボルヤンかぁ……!」
ミェールスよりは規模の小さい街だが、活気は負けてない。
ボルヤンの土地柄、豊かな資源に出てくる魔物は弱いと冒険初心者に人気な街である。
冒険者として頑張るならボルヤンと言われ、はじまりの街とも言われている。
「新しい勇者様が現れる正確な時間とかは分かるんですか?」
「いや、分からないからとりあえず装備の見直しや依頼を受けたりしようかと」
「分かりました、【情報】を使えば掘り出し物も見つかりそうですね」
「そうだな、品定めは任せてくれ」
まずは武器屋に行く。
はじまりの街は鍛冶士たちにとってもスタートに良く、ここで下積みをしてある程度技量をつけたら別の街に行くようになっている。
そんな初心者の鍛冶士が作った物でも中には達人レベルで強い性能のものが混ざっていたりするのがガチャみたいで楽しみだったりする。
中に入ると壁には銘がある武器がズラリと飾られ、真ん中には見習いが作った武器が種類ごとに雑多に置かれている。
銘なしの小型剣が置かれているコーナーに移動して【情報】を発動する。
漁ってみるも初心者……銘なしが作ったもの相当に性能は良くも悪くもない普通のものばかり。
「ん?お?これは……!」
下の方に埋もれていた一本の短剣が銘なしの中でも頭ひとつ抜けて性能が良い、これは買いだな。
「良いものが見つかりましたか?」
「ああ、これはお値段以上だ」
「それは良かったです。あの、私の方も見繕ってくれませんか?」
「そうだな……弓はエルフ産なだけあって最上級に状態がいいから、レイピアの方を見てみるか」
レイピアの銘なしコーナーに行って良いものがないか漁ってみる。
「うーん、今より状態が良いものは無さそうだな……」
「そうですか……残念です」
短剣を買って店を出る。
これで少しは戦闘に参加できる……といいな。
「あの、ユウ様、時間がまだあるのでしたら寄りたい場所があるのですが……」
「まだ大丈夫そうだし行きたいところがあるなら行こう」
「ありがとうございます!」
そういって辿り着いたのは、服屋だった。
レティスさんはとても楽しそうに服を物色して、試着をし始めた。
「ユウ様、見てください!これとかどうですか!?」
「いつも冒険着だから、雰囲気が変わるな……うん、似合ってるよ」
ファッションショーをしているレティスさんがとても楽しそうで、こっちまでにこやかな気持ちになる。
一通り楽しんだようで、普段の冒険着で出てきた。
「楽しかったー!ありがとうございます、付き合ってくださって」
「それは全然構わないけど、何か買わなくて良かったのか?」
「はい、冒険者にとって普通の服は邪魔になってしまいますから……」
冒険者は旅をするために荷物を軽くしないといけない場面が多々ある。
そのため、防具や冒険着には汚れない魔法がかけられている。
なので劣化するまでは一着を着続けて大丈夫なようになっている。
「……旅が落ち着いたら、サースモア王国に行ってお洒落着をレンタルして街観光を楽しもうか?」
「いいんですか!?約束ですからね!!」
そんな話をしていたら【物語】が更新された音がして、慌ててページを開く。