3
次に目を開けると、出店が並ぶ活気ある異国情緒溢れる町並みがあった。
そして、遠くからでも存在感がある堅牢な大きな建物が目的の大図書館だ。
「本当にやってきたんだな、イニティウムに……!!」
感動でじっくり周りを見渡しながら歩きたいところだが、そんなことをしたら一発で慣れてない旅行客と判断されて面倒事に遭いやすくなるから我慢しつつ大図書館へ向かった。
初期装備として持っていた鞄を漁ると大図書館利用パスポートが見つかり、検問も難なくパスして目的地に到達することができた。
「すげえ……ここが世界一の蔵書を誇る大図書館か」
見渡す限りのたくさんの書物。
一階だけでも迷いそうなくらい広々としている上に天空にも地下にも続いていて、一生かけてもここの本を読みきることはできないだろうな。
そんなことを思いながら案内板に目を通す。
勇者に標準装備される技能のひとつに【翻訳】があり、どんな文字も言葉も日本語に変換されて理解できる。
さらに、自身が文字を書いたり言葉を話すときは言語を指定できるチートスキルがある。
そのおかげで難なく位置を把握することができた。
「とりあえず、図鑑コーナーでどんどんこの世界の知識を蓄えていく……か?」
辿り着いて見た本棚は真ん中のほうの1列がごっそりなくなっていた。
「論文作成かなんかで使ってるんだろうか」
大図書館は貸し出しは行っていないので、いつかは戻ってくるだろうと気にせずあるものから手をつけはじめた。
動物図鑑を持てるだけ持って読書スペースに移動する。
大図書館の目立つところに設置されている大きな時計をちらりと見る、真っ昼間だからか人はそんなにいなかった。
しかし、一際目を引く存在がいた。
遠くからでも分かる輝く金色の髪に長い耳、エルフだ。
共和国は他の国と比べて一番人種差別がなく、どんな人でも歓迎なスタイルを取っているからいてもおかしくはない。
しかし、エルフはエルフでないとどこにあるか分からない孤島に住んでいて、排他的な種族だ。
だから、めったに見ることはないはずなんだが……良いもの見れたな。
服装的に男性だろうか……ご尊顔を拝みたいところだけれども、目立たないようにすみっこの方に陣取って図鑑を読み始める。
読み始めると、改めて異世界であることを実感する。
元の世界にいた動物に姿形や習性が似ている動物はいても全く同じ生き物はいなかった。
とにかく【知識】に覚えたことを登録しまくる、そうすればいつでも情報が引き出せるようになるから。
「しかし、異世界独特のワードが飛び交うのはその度に検索するのも面倒だな……そうだ!」
立場が近しい動物はこっちの名前でも【知識】に登録しよう。
例えば、森に住んでいる草食系の動物で最近はペットとしての需要が高いが昔は食料として重宝されていた白い生き物。
共和国語ではリズヌッドと呼ぶらしいが、生態はまんまうさぎだからうさぎとして登録する。
そうすれば、【翻訳】で聞こえたり発したりする言葉がうさぎでも問題なくなるしな。
「よーし、やるぞ……!!」