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「さて、そろそろ落ち着きましたか?」
「オッケー、認めよう現実だと」
神と名乗る女性と色々問答をした。
本当にただの物語ではなく本当に起こっていることなのか?という問いは、本当だと。
神の手に負えない程世界が歪むと、歪みには歪みをぶつけて治そうと異世界に頼ることは神様の中では良くあることらしい。
地球ではない世界からも呼び出せるなら、なぜ選ばれるのは日本人ばかりなのか?という問いは、適正が高いからだと。
異世界転生やら異世界転移といった文化が根付いているのはここだけで、なおかつその世界固有の能力やらなにやら制約を持たないプレーンな人間だから世界に馴染ませやすいらしい。
なぜ物語として存在しているのか?という問いは、ゆくゆくは俺のように読者を転移させて問題解決を早めるためだと。
そんなことを話してある程度納得した。
「それじゃあスキル習得の話といきましょうか」
「話が早くて助かります」
異世界モノで良くあるお馴染みの強くてニューゲームができるシステムがこれにもある。
この世界で覚えられる【技能】全てからコスト10ポイント分だけ覚えられるが、10ポイント超えて覚えることもできる。
しかし、欲張って全部の技能を覚えた奴がスタート地点がいきなり魔王戦で、スキルの使い方が分からず即蹂躙されたことがあった。
初期コストを超えて覚えることはその分スタート時のリスクも大きくなるのだ。
「じゃあ、【脱兎】をください」
【脱兎】は脚力が上昇し、あらゆる場面から逃げきれる確率が上がる技能だ。
「えっ!?それだけで良いんですか!?1ポイントしか使ってないじゃないですか!?」
「その代わりスタート時の状況に要求を出したいと思ってまして」
「なるほどそういうことでしたら、聞きましょう」
技能ポイントオーバーでペナルティがあるなら、逆に技能ポイント余らせて特別措置を取ってもらうことができるんじゃないかと試してみたが案外すんなり通って良かった。
「フリーデン共和国に1ヶ月ほど生活できる共和国の貨幣とフリーデン共和国のミェールスにある大図書館を利用できるパスポート、そしてスタート地点は大図書館でお願いします」
「分かりました、それくらいなら余剰技能ポイント分に収まる要求です。そうしましょう」
「ありがとうございます」
俺は生き残りたい!
死んでも元の時間・場所に戻って白昼夢を見ていたかのように処理されるらしい。
しかし、せっかく楽しく読んでいた世界に行けるならとにかく生きて世界を満喫したい!魔王討伐なんて重責やってられるか!
今も生き延びているたった2人の勇者はどちらも運良く現地人の庇護を受けることに成功したからなのだが、その代わりに自由に身動きが取れないポジションについてしまった。
そんなのはごめんだからな。
知識!それこそが異世界に独り取り残されても生き延びる秘訣!
0ポイントで標準装備される技能のひとつに【知識】というものがある。
それは名前通り、覚えた情報をいつでも引き出せるという能力だ。
これを最終段階まで育てると【全智】という何でも分かるチートスキルになる。
これを目指せば死ぬ確率は圧倒的に下がる!
だからスタートダッシュはとにかく知識を蓄えてから旅に出る、これが最適解になる。
「それでは、準備はいいですか?」
「はい、お願いします!」
「あなたの行く末に光あらんことを……」
女神が仰々しく両手を大きく広げると、自分の身体は光に包まれた。
そして、あまりの眩しさに目を閉じた。