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「ところで、エアルさんはこれからどうするんですか?」
「蘇生薬のことは伏せつつ父を連れて出頭しようと思います」
「それが良いと思います。蘇生薬があるとなると色々な火種になると思うので」
そんな会話をしているとエアルさんの家に着く。
「それでは父と話をしてみますね。皆さんには証人になってほしいので、もう少しお付き合いいただけたらと思います」
「それぐらいお安いご用ですよ、じゃあ待ってますね」
エアルさんが来るまで家の外で待機していると--
「あ、あぁぁぁぁ!!!!!!」
叫び声が聞こえてきて慌てて家の中に入る。
そこには、言葉に言い表すのもはばかれるほどにボロボロになった男性の死体があった。
嫌でも【情勢】で彼の状態がわかってしまう。
生きている間にどんな反応をするのかと遊ばれ、息絶えた後も内部構造がどうなっているのか興味でバラバラにされたという悲惨な状態が。
「お父さん!どうして!?なんで!?」
「落ち着いてください……!」
取り乱すエアルさんにレティスさんが駆け寄り、エアルさんをなだめる。
こんな有り様では取り乱すのも仕方ないだろう。
「恐らく犯人は魔王軍でしょうね……。魔人……お姉さんが死ぬ間際、魔王様と呟いていたので」
「そう、ですか……」
【情報】が【情勢】に進化する条件は、5つの国の重要機密を知ること。
小説を読んでいたおかげで、サースモア王国がアルマ帝国にアルマ帝国がサースモア王国に戦争を仕掛けようとしていること、フリーデン共和国は中立を保つ為に王国帝国どちらにもいい顔をしていること、エルフの国は族長の娘が家出中という秘密を知ったいた。
そこに、魔王軍が蘇生薬生成に関与していたという情報が加わることで進化したのだ。
「あの!もし良ければ皆さんの旅に連れて行ってくれませんか!?」
落ち着いてきたエアルさんは突然そんなことを言い始めた。
どうする?と言わんばかりの視線を錠とレティスさんから感じる。
「どうしてそう思ったか、聞いても?」
「はい、この蘇生薬の秘密を知っているのはここにいる私達だけです。なら口止めのために父の仇は私達を狙ってくるかもしれません。私は人を癒す力はあっても人を倒す力はありません。それなら皆さんと一緒に行動した方が私自身も皆さんも安全に旅ができて、いつか父の仇を討つことができるんじゃないかと……!」
「確かに、面倒事は抱えたくないが強制的に抱えさせられたしな……このままエアルさんをほっとくのも危険か。よし、エアルさんのパーティー加入を歓迎します」
「ありがとうございます!」
この決定に他の二人も歓迎のようで、笑顔を向けてくる。
「では改めまして、私はレティス・エヴィンと申します。よろしくお願いいたします」
「自分は錠って言います、よろしくお願いします」
「俺はユウ。仲間になったんだ、堅苦しい敬語はなしでいい。俺もそうするからな」
「分かった、じゃあ私もそうするね。皆よろしく!」
「あ、自分も敬語なしでもいいかな?」
「いいよ!よろしくね!」
あんなことがあった後だというのに、強いこだ。
俺たちを心配させないためか、笑顔で元気に振る舞っている。
「あの、それで、良かったらだけど、お父さんを埋葬するの手伝ってくれないかな……?」
「「「もちろん」」」
その日はエアルさんの父を埋葬した後、エアルさんの家で一晩を過ごした。