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最初の方は【脱兎】を使って攻撃もしていたが、相手は傷がすぐに回復するしスピードに慣れてきたのか反撃を受けるようになった。
だからひたすら逃げ続けている。
【脱兎】を使えば逃げる速度はこちらの方が早く、魔人は絶対に追い付けない。
しかし、遠距離攻撃を行ってきて紙一重の逃走劇を繰り広げている。
「いい加減死んでくれないかしら?ハエみたいで鬱陶しい」
「ひどい言われようだな。まだまだ遊んでくれよ」
「お断りね。もうあなたと遊ぶのは飽きてきたわ」
何分経ったのか自分でも分からなくなってきた頃、蜘蛛に合図が入る。
罠が出来上がったようだ。
方向転換をして罠へと誘導する。
遠距離攻撃で壊されないよう、近距離でも攻撃が届くギリギリを避けながら。
「今だ!」
高く飛び上がり魔人の背後に回り思いっきりその背中を押す。
すると勢いのまま、アラフニが作った透明な蜘蛛の巣にひっかかり絡まる。
「強度はそれほどないのであまり長くは保てません!」
「充分です!」
隠れていたレティスさんが、石属性を付与されて強度と切れ味の増したレイピアで魔人の首を斬り落とす。
「お見事!」
魔人は再生する様子はなく、ただ一言呟いた。
「まお、う……さま……」
瞬間、【情報】が【情勢】に進化して次に何が起こるか見えてしまった。
「【脱兎】!!!!!!」
魔人は身に宿す生命エネルギーを暴走させて、大爆発を引き起こした。
皆を守るため、無茶をして全員を抱えて【脱兎】で避難を試みた。
しかし--
「あ、ぐっ、あああああ!!!!!!」
タッチの差で間に合わず、俺の脚は爆発に巻き込まれボロボロになった。
鉛のように重く自分の意思ではびくとも動かない。
焼けるような熱さと痛みが押し寄せてくる。
「結!」「ユウ様!」
錠とレティスさんが、こちらに駆け寄ってくる。
仲間を無傷で助けられたことは不幸中の幸いだったな。
「私に任せてください!」
エアルさんが瓶を持ってこちらに近付く。
「私は魔術で治癒術を習得していますし、スキルでも【治癒】を習得しています。それとこの回復薬があれば完治できるはずです!」
瓶に入っている回復薬をかければ、焼け焦げて肉が削げた脚はみるみる普通の脚に戻っていく。
それでも痛みや動かすことが出来なかった脚が、魔術とスキルの【治癒】をかけてもらった途端に嘘のように治った。
「これでもう大丈夫だと思います」
「ありがとうエアルさん、あの大怪我が無かったかのようだよ」
「良かった、良かった……俺のせいで結が歩けなくなるかと……」
「私からも感謝を述べさせてくださいエアルさん、ユウ様を助けてくださりありがとうございます」
「いえ、私も助けてもらったので、恩人を助けられることができて良かったです」