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声がする方を振り返ると、依頼人の姿があった。
不気味な笑みを浮かべている。
俺たちは戦闘態勢をとった。
「あ~あ、教えちゃったのね?生け捕りにしようと思っていたのに、これじゃあ殺すしかないわね!」
そう言った瞬間、依頼人の肌は青色になりコウモリのような翼が生えた。
そして空に飛び上がる。
「エアルも同罪ね。あなたには生きてて欲しかったけど、私と同じになりなさい!」
手のひらを前に突きだし、その手から真っ黒なエネルギー弾のようなものが現れる。
「みんな木々の中に隠れて射線を切れ!見晴らしのいい道にいたらただの的だ!」
指示と同時に弾が発射されるが、それぞれ素早く森の中に身を投げて回避する。
錠はエアルさんを庇って右側に飛び込み、俺とレティスさんは左側に避けた。
とっさのことだったとは言え、分断されてしまった。
早く合流しなければ……!
「ユウ様、大丈夫ですか……?」
不安が伝わってしまったのか、心配そうにレティスさんがこちらを伺う。
「大丈夫だ、なんとか切り抜けてみせるから安心してくれ」
強がりではあるが安心させるためにも笑顔を向ける。
つられてレティスさんの表情も柔らかくなる。
空中にいるアドバンテージをなくしたとはいえ、相手がどう出るか謎すぎて困る。
相手は【情報】が通用しない、原作知識も通用しない魔人だ。
対処法方を間違えたら死ぬ。
その事実に恐怖を感じて足がすくむが、必死に森の奥へと進む。
気休め程度にしかならないだろうけど、少しでも距離を稼がないと。
「私から逃げられると思っているのかしら?それは滑稽ね。ここは私の庭同然よ」
声が聞こえた瞬間、レティスさんを抱き寄せて【脱兎】を使用する。
間一髪で攻撃を避けたが、俺たちが元いた場所の地面は抉れていた。
持ってて良かった【脱兎】。
これで解決策が見つかるまで一旦逃げまくろう。
「あら?鬼ごっこ?楽しませてくれるわね」