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「話せば長くなりますが、依頼人である私の姉は魔人なのです……」
「魔人!?明らかに普通の人間に見えましたが……」
魔人とは、女神の加護を受けられず瘴気が蔓延している外界に住むことで魔物化した人間だ。
「姉は一度死んでいます。それを父が蘇生させたのです」
「蘇生!?そんなスキルも魔術も回復薬も発見された事例はありません!!それが本当なら世界が揺らぐ大事件ですよ!?」
そう叫ぶレティスさんは青い顔をしていた。
ファンタジー世界なのだからありそうなものだが、言われてみれば蘇生が行われた描写は今までに一回も無かったなと思う。
「そうですね、父が行った蘇生も完璧ではありませんでした。結果、魔人になってしまったのです」
「それは理解しましたが、それと依頼にどんな関係が……?」
「おそらく皆さん見たでしょうが、ウツボカズラが充分な栄養を取ると消化のために眠りにつきます。そして花の色が青くなります。その青い花を回復薬に使うと高い回復効果がみられたのです」
「それでもまだ蘇生には至らない、ですよね?」
「はい。ある日父と母が花の採取に出掛けたとき、誤って母がウツボカズラに食べられてしまいましたが、父は運良く逃げられました。父は悲しみに暮れましたが、母を食べたウツボカズラの花の色がいつもと違う紫色になっていることに気が付いたのです。それを持って帰り、回復薬にして死んだ被験体に使ってみると蘇生ができたのです」
「つまり、人間の命が蘇生薬に必要な素材だったと……」
なんとなく話が読めてきた。
依頼を受けた人間をウツボカズラのエサにして、蘇生薬を生産する環境を整えたのか。
「この蘇生薬には欠点があり、一定期間蘇生薬を摂取できないとまた死んでしまうのです」
「それで冒険者をエサにしようとした訳だ」
「その通りです……。私はずっとこの計画には反対でした。しかし家では監視されていて話せるタイミングがなく、夜になって採取に出掛けたときが家族の目を盗むチャンスでした。しかし、冒険者が帰ってくることはありませんでした……」
エアルさんはぽろぽろと涙をこぼし始める。
「今日、ようやく助けることができそうで良かったです……!」
レティスさんがハンカチを差し出し、涙を拭おうとする。
しかしひっかかるところがある。
「なぜ我々が生きてここにいることが分かったんですか?」
「それはこのこのおかげです」
エアルさんの右袖から小さな白い蜘蛛が出てきて、エアルさんの手のひらに乗る。
すると俺やレティスさんに錠の袖からも小さな白い蜘蛛が出てくる。
「このこは私の使役している魔物のアラフニちゃんです。仲間をこっそり依頼を受けに来た冒険者さんにつけて反応を追っていました」
冒険者が帰らぬ人になったのが分かったのは仲間蜘蛛が冒険者と一緒に消えたからで、今回はみんな生きていたから蜘蛛を伝ってきたと。
「なんでエアルがここにいるのかしら?」