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あれからマッピングを頼りにしらみつぶしで探したものの、あったと思ったらモドキ魔物ばかりで依頼人の言っていた花は見つからずにいた。
気がつけば日は落ちて真っ暗になっていた。
簡易拠点を作って交代で見張りをしつつ、夜を越すことになった。
夕食はレティスさんが解体したライオンを焼いて食べた。
「こんなに見つからないなんてな」
「まさかとは思うけどあの魔物が頭に咲かせてる花で合ってるとか……?採取に失敗して帰らぬ人になっちゃいましたとか」
「あの魔物は花を燃やすか潰すかしないと死にません。切り落としただけじゃ永遠に追いかけてきますから違うかと思いますが……結局素材にするため潰しますしね……どうなんでしょう?」
「明日もう少し探して無ければ、依頼人に相談してみるか。今日はもう遅い、寝よう」
「そうだな」「そうですね」
「最初の見張りは俺がするから、ふたりは先に寝ててくれ」
「はいよ、じゃ先におやすみ」
「おやすみなさいませ」
それぞれ寝袋に入り寝始める。
そして俺は夜の静寂に取り残された。
「赤板の名にふさわしい難易度だったな……」
ため息をつきながら【情報】を常時発動する。
暗くて見えなくても視界に入っていれば何がいるかは分かるから、レティスさんの結界に比べれば性能は落ちるものの索敵に使える。
「ん……?あれは……?」
【情報】を使って周りをキョロキョロ見渡していると、ひとつの人影が近付いてくるのが見えた。
「誰だ!?」
ナイフを構え、牽制と仲間への警鐘を込めて大きな声で叫ぶ。
レティスさんは起き上がってきたが、錠は深い眠りについているのか寝たままだ。
レティスさんが代わりに起こそうとしている。
「あの、すみません、敵意はありません、皆さんにお話をしに来ました」
暗がりから現れたのは、依頼人に面影がある少女だった。
依頼人はショートヘアーだったが、目の前にいる少女はロングヘアーな違いだけでとてもよく似ている。
「私はエアル・フィオーレ、依頼の本来の目的を伝えに来ました」
「本来の目的……?分かりました、聞かせてください」
エアルと名乗った少女は不穏な言葉を放った。
錠も起きてきて、エアルさんを落ち着ける場所に座らせて話を聞く体勢になる。
「単刀直入に言います、この依頼は受けた冒険者の命を刈り取る為のものです。今すぐ逃げてください」
その場が凍りつく。
理解をするよりも先に困惑が押し寄せてきて、誰も何も言えずにいた。
「どういうことか、もう少し詳しく教えてくれませんか?」
絞り出した言葉は声が震えていた。